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アートディレクタビリティ

より良いArtdirectionを実現するために

最近世の中がHoudini押しなので、忙しい中がんばってセミナーに参加したよ。


Houdiniのセミナー

Bone Digital主催の「Houdini for GAME セミナーin 大阪」に参加するために、11月15日にECCコンピュータ専門学校に行ってきました。
最新のHoudini20のR&Dについて、Side FXシニアリードTAのMai Aoさんからの説明の中で、さかんにProject Dryadの目的や機能として‘Artdirectorbility’を高める、という発言があって、アートディレクタビリティ?聞いたことがない単語だなって、面白かった。

‘Artdirectorbility’ググっても釣りをしている青いイエティを見るだけ。

Blue Yeti

どうもアメリカでもまだ一般化していない造語みたい。講演では、アートディレクタブルとかアートディレクタビリティとかって連呼していたよ。おおよその意味としては次のような雰囲気でしょうか。

従来、3DCGアーチストが複数の手順を行ったり来たりしながらアセットを職人的に制作しており、その成果に対してアートディレクターがリテイクを出して調整をしていた。これは時間がかかる方法だし人手ももちろんかかる。
一方、Houdiniでプロシージャルなパイプラインをいったん構成してしまうと、アセットの調整がすぐにできちゃう。そうすれば、アートディレクター自身が直接やるのか、アーチストがするのかは別にしてビジョンに合致するまで、短期間でイテレーションを回す事ができるようになる。

つまり「Artdirectorbility」って言葉は、アートディレクターの能力とか、その能力を高める事や機能を指して使っているんでいいかな?

ゲームにおけるアートディレクションの歴史

多分、ぼくはゲームにおけるアートディレクションについて、日本で最初に取り組んできたデザイナーのひとりだと思っている。

古い話だけど、25年前にアーケードゲームのインタフェースに関わり始めた頃、ゲームのインタフェースのデザイン実装は、1名で全て作るから、複数人で作成する状況への移行期だった。個々のステップについてはビジュアル仕様の仕様書なんてまだなく、1名ならビジョンの統一が容易だった事が、個々のデザイナーがわりと自由に作っている状況だった。だから統一感という面では足りない点もあった。

グラフィックデザイン出身のぼくは、こういう場面にこそアートディレクションが必要だと思ったよ。だから、初めてチームのデザインリーダーになったGuitarFreaks 8thMIXとdrummania 7thMIXでは、アートディレクションを実行し、その後も実践してきた。結果を見るとその影響は大きかったと思う。

そういう歴史をみずから体験するものとして、現在ゲーム制作が大規模化してかかわるアーチストが増える一方で、アートディレクターがワンオペとかで自信の想像力に忠実なより良いビジュアルを達成するというお話はとってもクールだし大賛成だと思ったよ。

だからぼくは家に帰ってすぐにHoudiniを最新版へ更新して、さつき先生のチュートリアルビデオを見ることにした。

プロシージャルなワークフローのデモ

ただ、日本のゲーム制作は、デベロッパーもパブリッシャーもなかなかプロシージャルなパイプラインの導入やそこで成果を上げることがまだ十分にできていないようだ。コンピューターサイエンスの修士や博士クラスがTAとして企業で十分な投資を受けるようになればもう少し変わるんかな?
過去の成功体験が大きいと、どうしても合理的な新しいスタイルを受け入れがたい組織風土になる。

講演の2つめはスウエーデンのエンバークスタジオから、Houdiniを活用したプロシージャルなアセット制作のワークフロー紹介だった。Houdiniをバックヤードで稼働させ、フロントエンドのblenderに付加したUIでアーチストはローメッシュをイテレーションする。アセット制作は、ハイメッシュ・UV・ベイクまでが全て自動化されアーチストはそこにタッチしない。彼らは数名のTAのみ、Side-FXの協力なしでこのパイプラインを構築し、運用しているらしい。

エンバークスタジオは2018にできた新しいデベロッパーでネクソンが投資している。5年経つがまだ発売された製品はなく、STEAMで定期的なβテストを実施しているようだ。新規タイトルをグローバルで立ち上げるためには、これくらい長期的な投資でないといけないのだろう。

タイトル画像はbingで作成した「プロシージャルなパイプラインのお陰でアートディレクターが自分のビジョン通りにアセットを作ることができる能力」です。

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