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つながるトーク2022「一箱本棚から広がる、まちへの関わり方 」特別セミナー編(ゲスト土肥潤也さん)

みなさんこんにちは。2022年度T-projectがいよいよ始動します。
スタートに先駆けて、7月8日につながるトーク2022特別セミナー編を開催しました。
「みんなの図書館さんかく」の土肥潤也さんをゲスト講師にお招きし、「一箱本棚から広がる、まちへの関わり方」と題して講演いただいた様子をお届けします。

スペシャルゲスト土肥潤也さん

<プロフィール>
みんなの図書館さんかく館長。1995年、静岡県焼津市生まれ。早稲田大学社会科学研究科修士課程修了、修士(社会科学)。2015年に、NPO法人わかもののまちを設立。2020年に、まちづくりコーディネート団体、一般社団法人トリナスを共同創業、現在は代表理事。焼津駅前通り商店街の空き店舗を活用し、完全民営の私設図書館「みんなの図書館さんかく」を開館。一箱本棚オーナー制度を導入した市民参画の仕組みで、現在は同様のシステムの私設図書館は全国30館にも広がる。そのほかに、商店街に芝生を敷き子どもの遊び空間を展開する「みんなのアソビバ」を企画するなど、商店街の活性化に取り組む。内閣府若者円卓会議 委員、子供・若者育成支援推進のための有識者会議構成員、内閣官房子ども政策の推進に係る有識者会議(こども家庭庁に関する有識者会議)臨時委員等を歴任。

みんなの図書館「さんかく」

みんなの図書館さんかく(以下さんかく)は静岡県焼津駅前通り商店街にある私設図書館です。

「さんかく」という名前は「ここに来た人誰もがこの場の主人公として「参画」する場になってほしい。そして、この図書館だけでなく、まちや社会に「参画」する拠点になってほしい」という想いから。

私たちがまちづくりや社会というワードを語る時、無意識に公営の施設や官民協働の取り組みを想像してしまうことも少なくありませんが、さんかくは土肥さんらによる完全民営の図書館なのです。

新しい公共を作る「私設公共」

まちや社会との接点を民間の立場からつくる、というさんかくの発想の起点が生まれたのは、土肥さんのドイツで過ごした時代に遡ります。

土肥さん「ドイツでは、イベントというわけでもなく、まちの広場に人が集まって歌ったり踊ったりというシーンが日常にありました。まちの中で自分が好きなことをする、自分らしくいる、そういった瞬間、人はその場所を『私のまち』と感じるのではないかと思うんです」

「誰か頼みは限界が来る。自分が住みたい街は自分たちでつくろう」と土肥さん。「わたしのまち」という思いが生まれたひとは、「まちは自分達が変えても良いんだ」「好きに使ってもいいんだ」という想いから、まちづくりに自然に参画するようになる、と話す。

「私のまち」を感じる瞬間こそが、いち住民に自分もまちづくりの担い手であるという気づきを与えるのではないか、そう気がついた土肥さんが、「新しい公共を作る私設公共の社会実験」として、立ち上げたのが「さんかく」のはじまりでした。

一箱本棚オーナー制度

「さんかく」の代名詞とも言えるのが「一箱本棚オーナー制度」。文字通り、オーナーが図書館内の本棚のひと区画に自分の本を並べ、来館者に貸し出す事が出来るしくみです。オーナーから支払われる月額2000円が図書館の重要な収益源ともなっているそう。
誰かに本を貸すために月額を払うという不思議なシステムですが、現在本棚のオーナー枠はいっぱいで、申し込みはキャンセル待ちという人気ぶり。

オーナー選書の個性豊かな本棚たちの一例を挙げると「動物愛護に関する本を集めた本棚」「好きな芸能人の本が並ぶ本棚」「性教育関連書籍の本棚」と様々。なかには「自由に使えるけん玉が置いてある本棚」まであるとか。

本棚を覗くまでは何が並んでいるか分からない一箱本棚のしくみ。普段探そうともしなかった本との出会いも多くあり、図書館を利用する人の新たな関心が広がってゆくきっかけにもなっています。本に挟まれた感想カードも貸す人と借りた人の交流に一役買うアイテムです。もちろん、オーナー同士の交流もたくさん生まれているそう。

土肥さん「2千円払って本を『貸す』なんて、オーナーはなんて”へんなやつ”なんだろう。でもそんな面白い人となら話してみたい、とみなさん思ってくれているようです」

さんかくでの交流や新たな出来事との出会い、居心地の良さに惹かれた本棚オーナー達の中には、店番をしたいと手を挙げてくれる人も多いのだとか。今では土肥さんやスタッフがいなくても、さんかくは毎日営業できる状態になっているのだと言います。

さんかくは、自分の表現を受け止めてもらえる場所

今日では、さんかくの存在が生んだ不思議な地域の交流や小さなアクションは、図書館を飛び出して、まちの中へと広がっています。

最近、土肥さんは「さんかくがまちの人にとって、自分の好きなものや、やりたいこと表現して、それを受け止めてもらえる場所になってきた」のを感じているのだと言います。

土肥さん「商店街にある蕎麦屋の店主さんは昔、古本屋を開きたかったらしいんです。彼は、一箱本棚を見たときに『自分でやってみればいいんだ!』と気づいたらしく、今では自分の店の一角で古本コーナーをはじめています」

他にも、さんかくにやってきたお坊さんが、一箱本棚に飾ってあったミニ四駆を見て『お寺の子供向けイベントに協力してほしい』とオーナーさんにお願いして実際にイベント行ったこともあるのだとか。最近では若い世代の活動を見た定年退職後の地元有志が負けじと古民家カフェをオープンしたのだそう。「多世代交流拠点」等の看板を出さなかったからこそ、世代や性別、仕事を超えて様々な交流がうまれる今のさんかくの姿があると思うとも土肥さんは回想しました。

最後に

かつて土肥さんが見たドイツの景色のように「わたしのまち」を感じる場所を焼津に生んだ「さんかく」の例。「わたしのまち」や「自分らしくいられる場所」は、さんかくから飛び出して少しづつまちの他の場所にも広がっているようです。

まちに住む人が、自分のまちでやりたいことをしてみたいと思う、ここでならチャレンジが出来るかもしれないと思えること、ともすれば「自分はサービスの受け手」と受け身になりがちなまちづくりにおいて、とても大切な気持ちを育むプロジェクトのお話でした。

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