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「松岡英明」リマスター記念1st〜3rdアルバム全曲クロスレビュー(5):3rdアルバム「以心伝心」前編

 松岡英明リマスター記念クロスレビューもいよいよ3枚目となります。圧倒的なサウンド面でのバックアップのもと衝撃的なデビューを果たした1st「Visions of Boys」、自身の美意識を松岡サウンドという名の下に独自のエレポップとして昇華した2nd「Divine Design」。このような名盤2枚の後に続く勝負の3作目にあたる本作は、さらに洗練されたサウンド(とこざっぱりしたルックス)に変化、みずからが司会を務めるNHKの音楽番組「JUST POP UP」が開始してますます勢いを増した松岡が繰り出した勝負のアルバムです。本日と明日に分けて、この3rdアルバム「以心伝心」につきまして、いつものように対談形式でレビューしていきたいと思います。それではスタート!

◆3rd「以心伝心」(1988)

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〜オープニング〜

@tpopsreryo:
今週から始めております松岡英明初期3部作全曲レビュー。本日は第5夜ということで3rdアルバム「以心伝心」のレビューとなります。今日もjunnoviさんとの対談型ツイートの企画となりますが、よろしくお願いします。

@junnovi:
は~い。今晩は。今夜もよろしくお願いします。「以心伝心」は「Kiss Kiss」と並んで当時結構聴いたアルバムですけど、今回はどうなりますやら。

@tpopsreryo:
さて、「Visions of Boys」「Divine Design」と若さと冒険心あふれるエレクトリックサウンドで聴き手を驚かせてきた松岡英明でしたが、この「以心伝心」は前2作とは明らかに異なった印象を受けた作品なのです。なんていうか、ツルッと一皮むけたような・・w

@junnovi:
今回の聴き直しで思ったんだけど、明らかに職人的アレンジから職業的アレンジにシフトしたなって思うね。清水信之って大好きなアレンジャーやけど、松岡英明との相性は、職業的アレンジャーだから、それなりに楽しめるけど、ミュージシャンの新たな引き出しを引き出したり、新たな化学反応の試してみたりというスリリングなことは、殆ど鳴りを潜めたよね。

@tpopsreryo:
個人的にはね、1stは布袋&ホッピー、2ndは西平彰、3rdは清水信之っていうサウンドメイカーの流れだと思っていたのね。で、久しぶりに「以心伝心」聴いてみたら、清水信之以上に野崎昌利が多くの楽曲に関わっているのね。彼のアレンジ曲も3曲あるし、彼の存在大きいなと。

@junnovi:
あ。それは確かに思ってたわ。ゴメン訂正するw ま~この清水と野崎の二人が、自分の器用さゆえに持っている多彩なカードの中から、今回どれを選びますかっていうアプローチを思うのです。つまりまだ頭の柔らかい松岡英明をどうしたら未開エリアの開拓ができるかと。

@tpopsreryo:
ただ明らかにサウンドもそうだけど楽曲が変わりましたよね。スゴくポップになった。1stや2ndとは明らかに違う方向性でのポップ感覚。尖った部分を磨いて磨いて丸くしちゃったようなまろやかさを感じてしまうのです。あんまり言うとそのまままとめになっちゃうから後回しにw

@junnovi:
了解です。じゃ、1曲ずつヨロシクです!


1.「Wonderland」

 作詞:松岡英明 作曲・編曲:野崎昌利

@tpopsreryo:
それでは各曲レビューいきます。1曲目「Wonderland」。1曲目からポップですねえ。「Young pirates」路線という印象なんですが、野崎作編曲ということでこれまでの楽曲とは違った意味での若さを感じると言いますか。佐橋佳幸のギターフレーズは意外とアクが強いですけどw

@junnovi:
アルバムジャケットの白いトーンをそのまま音に落とし込んだような、お日様の下での真昼間のハッピーソング、っていうイメージ。本人もPVで目が覚めるような原色の横溢する画面で笑顔いっぱいで歌っていたよね~。ワンダラン!
ここで過去の2枚との決別を声高に謳った感じがします。やっと裏通りから表通りへ、とってもシャイニーな世界に躍り出て来たよ~みたいな。やっぱり2ndまではダークで夜の闇のイメージが強く出てたと思うしね。シンセ使いもギターもポップじゃん。

@tpopsreryo:
でもよくよく聴いてみると当時の派手なサウンドが横行していた時代にあってあのシンセリフは安直だなあって思ってたのよ。佐橋ギターで味つけはしているけれども、音は本当最小限って感じで、やっぱり若さ故の刺激を求めていた当時にあってはなにか物足りなかったんだよなあw

@junnovi:
音楽番組「eZ」でこの曲のPV流れてたのを昨日の様に思い出すけど、真っ白なバックにぴょんぴょん跳ねまわったり、けったいなポーズ取って踊ってるのを見て、こういう人なんだなって思ってた。でも嫌いな曲じゃないよ。むしろ思い出深い、好きな曲です。

@tpopsreryo:
そうそう、この時期の松岡にとって切り離せないのが「eZ」と「JUST POP UP」ですよね。ちょうど始まったのが88年4月だったから、彼の露出が本格的に始まった頃。それに合わせてサウンドもより一般化して親しみやすいものになっていくんですよね。

@junnovi:
そういう総力的プロジェクトなイメージやねんね。

@tpopsreryo:
そういうことですね。3枚目にして勝負に出た時期であったということで。では次の曲へいきますよ。


2.「以心伝心」

 作詞:松岡英明 作曲・編曲:松岡英明・清水信之

@tpopsreryo:
2曲目「以心伝心」。松岡と言えばこの曲と一般的には認知されてるみたいですが、松岡自作曲のメロディ自体は結構地味めだと思います。で、全パートを清水信之のエレクトロニクスが担当してますが、ドラムエフェクトのねじれ具合とDXマリンバ系音色が目立ちますが、音もスッキリ感が顕著です。

@junnovi:
この曲の良さはAメロ出だし「よ~る~を~」のウロウロするメロディライン。他はロンパールーム(注:1963年〜1979年にかけて日本テレビで放映していた子供教育番組)の様な、ポポポポいう桃色なシンセサウンド。伝心とダンシングとをかけてるのか、何なのか判んないけど、制作者が思っている程ひねりが利いてないなと。
と悪口に近いことを前曲に続いて書いてますけど、この曲も好きなんですよ。良く口を突いて出て来る曲だしね。でもなんか、何だろ、音楽的な規模というか、スリリングな冒険度という点では全く小さくなっている気がしますね。デーンシン、デーンシン、デーンシン!w

@tpopsreryo:
そういえば伝心とダンシングかけてるって話あったような。そう発音した方がノリがいいから、かもしれないけど、それほど意識されなかったのかもしれないw あのシンセ音がロンパールームってw なんて表現するんだよ! これもシングルカットなんだけど地味な印象しかないなあ。

@junnovi:
何かね、言葉の処理が未消化で前のめりで、それを若さとビートでカバーしてるって感じがしない? それがまたスピード感とも言えるんだろうし、当時はそれを楽しんでた。って今もだけど! でセンセ、ロンパールームって譬え、ダメ?w 前々から思ってたんやけどw

@tpopsreryo:
いや、ロンパールームは気に入ったよw でもあの音色がいちいち気になってね。なんであんなに耳障りなんだろうっと思ってたの。全打ち込みだしエレクトリック感は満載なんだけど、音色にちょっとやる気のなさを感じるんだよね〜w 言葉のノリはね、松岡の売りの1つだからねw

@junnovi:
ゲラゲラ。そうなんだ。良かったw ポッポポって、まろやかなのに確かに耳に残るあのピンキーなサウンド、まさにロンパールームのイメージですw

@tpopsreryo:
じゃあそろそろ次の曲いきます。次も清水信之独壇場曲ですねw


3.「Eyes Never Lie」

 作詞:神沢礼江 作曲:奈良部匠平 編曲:清水信之

@tpopsreryo:
3曲目「Eyes Never Lie」。これは非常にクールな曲ですね。ゲートリバーブの効いたうるさいぐらいのドラムに、クリーン&ダーティーなツインギターで楽曲を彩っています。そしてしつこいくらいのランダムアルペジオとイントロに4小節だけ現れる高速チョッパーにのけぞります。

@junnovi:
この曲は今振り返ると、このアルバムの1つのハイライトと言っても良いと思いますね。急に夜のトーンが戻ってるし。マジシャンが両手を開いたときにバックで流れてそうなベケベケ4小節は良いアクセントになってて歌が始まる勢いを加速させてるよね。良い曲です。

@tpopsreryo:
驚くべきはあのツインギターも高速チョッパーも全部清水信之が弾いていること。ほんとマルチプレイヤーさんなんだからっ!w また、あの高速チョッパーがあの4小節しか登場しないのも面白いですね。あれだけインパクトのあるフレーズをあそこだけにしか使わないという潔さですよ。

@junnovi:
この人は本当に多才で立派な人だよね。この人の制作で私はどれだけ今までアドレナリンを放出してきたことだろうw YAMAHAのDX3(注:そんなシンセはありませんw)だったかな、ステージで使ってるのを見て、スゲーって思ったものでしたw この曲はホント好物ですけど一般的に松岡との・・・。
何がスゲーって、清水信之のプレイじゃなく、そのシンセの厚みでございますw でもさ、清水信之ってどうしても大江千里とか安部恭弘っていうイメージがあるね。
あとセンセの言う、ツインギター。ホントに音数が多くて、ジャラジャラ言ってて良いね~w

@tpopsreryo:
多分それはYAMAHA DX1じゃなかったかな。清水はあのデカイシンセをステージで使ってた記憶あるから。確かに清水信之は大江千里のあの2作のイメージが強いからなあ。まあそれこそ南佳孝とか飯島真理とかスターボーとか真鍋ちえみとかの印象が強いけどw では次いきますよ。

@junnovi:
♪ビッデオで躍らせて、甘く熱く~。懐かしいね~。てかスターボーですかw
あと、間奏とかで良く聞こえるシーケンス、これって前々から思ってたんだけど、オノマトペって言ってるように聞こえるねんw 全然言ってないけどね。オノ、オノ、オノ、ペ、ペ、ペ、ペ、オノマ、ペ、ペ。って感じ。わけわからんかw

@tpopsreryo:
それはわけわからんw あのランダマイズされたシーケンスも音質がLo-Fiでいい音してると思うんですよね。ただやっぱり頻繁にしつこく出てくるのでだんだん耳障りに・・・w

@junnovi:
残念、調子のり過ぎた・・・w でもほんと、そんな風に聞こえるんよ。オノマトペじゃなくて、オノマトペそのものに。ということで、引っ張ってしまいましたが、次をお願いします。


4.「T-R-Y」

 作詞:神沢礼江 作曲:野崎昌利 編曲:清水信之

@tpopsreryo:
4曲目「T-R-Y」。細かい。フレーズが。しかしそこにはキレというよりは丸みを帯びたまろやかな音色で統一されていますね。あとこの曲はBメロの安心感が抜きん出ていて良いです。この少し泣きが入る部分が野崎メロなんでしょうか。こういうところがポップ性を高めているんでしょうね。

@junnovi:
このね、クルクル回るフレーズが実は当時から大好きで、バッハとかの対位法みたいな感じで、主題を上下反転させたり、音の長さを倍に引き延ばしたりと、そういうことを考えながら聴くのが楽しくてなりません。この曲も「eZ」で変なポーズ取って踊り歌ってました。
肘を左右に張って脇を広げて、腕先は内側に折って、クルクル回転するねん。竹とんぼみたいに。本人はいたって真面目にその、クルクルさを表現するための踊りなんだろうけど、奇天烈なダンスやったわw なんて言ってるけど、当時、よく真似て踊ってたんだけどね!w
あと、その「eZ」ではこの曲と「Young Pirates」をセットに歌ってた。ド派手なショッキングピンクのパンツを穿くなんて中々いなくて、おかんが「この子のファッション、女の子っぽいね~。男の場合上下逆ちゃう?」なんて言ってたのも思い出すよw

@tpopsreryo:
なんというか売り出し方がユニセックスな感じだったからかもしれないけどね。彼が影響を受けたニューロマンティクスなんかそんなファッションだったし。でもこの頃はこれでも結構等身大な印象を受けてたなあ。それまでの過剰なデコレーション具合とは裏腹な感じで。
こういう曲は2ndまでならもっと派手にゴリっとした音にしてたと思うんですよね。ただ今回はアレンジが清水なので妙に繊細な空気が漂っているというか、やっぱり「まろやか」なんですよ。この単語が一番しっくりくるw ダンスはね、まじめに見てなかったw

@junnovi:
うんうんそうだね~。あと楽曲については、地味なんだけどダダダッと打ってくるドラムが結構好きでした。
そしてやっぱりどっか音の色使いが、多色使いで相当カラフルだよね。おもちゃ箱をひっくり返したような音楽だっていう評価を当時の「CDジャーナル」で書いていたのを思い出すけど、まさにその通りだと思うね。
そう、今回改めて真面目に通して聴き直すと、上手く整理整頓されてて、予想外の良い意味での誤算がなかったのを思います。松岡はもっと攻撃的で、アグレッシブで、ダークであって良かったのではと思うのです。でもいい加減、そういうキャラづくりに疲れたのかもね。

@tpopsreryo:
そう、喉越しの良さがあるんですよ。本来の荒々しい味を人工調味料で味つけして、みんながおいしく食べられるようにファーストフード店で提供したようなw だから非常に整理されたポップ性の高さが感じられる反面、ものすごくジャンクな味がするのも事実なんです。
このカラフルな音使いは清水サウンドの真骨頂ですからね。細かいフレーズが計算尽くされたように配置されている。ただし音色はやっぱり「まろやか」っていう。もう何回も使うよこの単語!w というわけで次いきますよ。


5.「Justify」

 作詞:松岡英明 作曲:野崎昌利 編曲:清水信之

@tpopsreryo:
5曲目「Justify」。軽やかなグルーヴ。特にサビに入ってからのシンセベースと打ち込みリズムの絡み合いが楽しいですね。なんというか松岡ってマイナーなメロディが似合いますよね。この曲はメロもいいけど緻密な清水サウンドも相まって、本作では遠慮気味だったキレが出ていると思います。

@junnovi:
軽いよね~。ン〜パカパカっていうシーケンスとかペンペンペンペンって言ってるシンセベースとか。私はセンセと違ってあんましなんです・・・。ごめんよぅ。でもサビの所の音数の多さを看過することが出来ませんw
あとブリッジがすんごい歌謡曲っぽくない? ヒデキ(西城秀樹)とかが好きな身としては、全くアカンことないんやけど、松岡英明についてはそういう俗っぽいところを求めてないからさ・・・。どこかデジタルな世界での純粋培養の体現者であってほしいという私の勝手な要求やけど。

@tpopsreryo:
歌謡曲っぽさは本作から参加した野崎昌利のテイストだと思いますね。彼の参加はそれほど大きく松岡ソングに影響していると再確認しているところなんです。明日の後半でもその話題になると思いますけどね。洗練された清水サウンドよりも野崎メロが本作の方向性を決定づけています。
確かにあのサビの音数の多さがなければ物足りないことは否めないけどねw でもこのサビのガチャガチャ感が松岡のいいところだと思うんですよ。音をぶっ込んでなんぼみたいなw ラストの終わり方はあんまりだけど、ちょっとおもらししちゃうのが面白いw

@junnovi:
あ~分かる分かるw オシッコw

@tpopsreryo:
せっかく無理矢理終わったのに、(小声で)ジャ〜スティファ〜イ♪ってw ああいう余計な余韻も裏を返せば楽しい仕掛けなんですけどね。それではそろそろ今日最後の6曲目いきますか。

@junnovi:
そうなんやろうねぇ~。実は、あしたの後半が心配な私w。。。ということで今日の最後の曲ヨロシクです。


6.「きみを教えて」

 作詞:松尾由起夫 作曲:夏目美比克 編曲:清水信之

@tpopsreryo:
6曲目「きみを教えて」。これはまた地味な曲だなあ。多分今回レビューした中でも最も印象に残っていない曲でした。正直に話しますが、物凄く手抜き感がサウンド全体から漂っているので、個人的に苦手な曲と言ってもよいです。このちょっとモヤモヤした感じで前半が終わってしまうのが残念なんですよw

@junnovi:
それはね、この曲はこの3作の中でも特にその後の松岡英明の歌唱法と言うか発声法の癖が、とうとう全面的に開花してるからだと思います。楽曲の詰まらなさに加え、喉の奥を意識して広げてそこに音をぶつけてるような発声法。ア列やオ列に独特のくぐもった響きがあるねん。
あとこの曲が示してるように、清水信之と松岡英明って、あんまし相性良くないんやないかと思います。あとメロディや楽曲自体にパワーがなく退屈であること。だからそんなに多くないのに繰り返しが多く聞こえてしまう。私も実はあんまり好きじゃない曲です。残念やね。

@tpopsreryo:
清水信之もやるときはやるんですけどねw ただこの時期の清水は洗練され過ぎて薄味になってきた頃なので、全盛期が過ぎた頃ですね。82年くらいから86年くらいまでが全盛期かな。同時期に吉川晃司も清水アレンジだったけど、やはり薄味過ぎたからねw あと発音好きやなw

@junnovi:
そうなんやね、ノブさんもピークアウトの時期ですか・・・。発音はね、ホントこの3rdではいよいよ完成の域に達するのを聞ける気がするんですけど、どうも耳に残らない? 明日も間違いなくこの点を触れることになる曲があるんだけど、好き嫌い分かれると思うんよね。

@tpopsreryo:
それ多分あの曲だと思うんだけどw 発音ていうか鼻の病気かなんかと思ってたんだけどね当時はw ただあの歌い方がないと松岡じゃないなあって思えるほど彼のサウンドアイコンになったような気がするのも事実です。まあそこらへんは明日ということでw では今日はここでお開き?

@junnovi:
そうかも知れないね。私はあんまし馴染めないけれど・・・。ということで今日はこの辺でよろしいのではないでしょうか。今日は大人し目のやり取りになっちゃいましたね。1st「Virtue & Vice」とか2nd「Don't Look Back」のような刺激的なものは中々ないね。

@tpopsreryo:
あの2作のような刺激はそうそうないし、そうであったらもう少し彼の時代は続いていたかもしれないしw 過剰な音の飽和状態は88年がピークだと思ってるんだけど、松岡の場合は大人しくなるのが1年早かったかな、ということは時代の先を行ってたってことかw では続きは明日!




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