見出し画像

【エッセイ】母になって分かった「重み」の話

友人の結婚式でたまに見かける「両親への贈答品」の中で、いやいやこれはいらないだろう、と思っていたものがある。

自分が産まれたときの体重と同じ重さのお米、である。

そんな中途半端な重さのお米、どうすんねんと思っていた。
しかも噂によると、あのお米は重さが何gであっても値段は変わらないらしい。
そうすると、まあ、私は3800g超えのビックベイビーだったのでワンチャン得するかもしれんな、なんてせこいことを考えていた。

でも、母になった今なら分かる。
娘達の結婚式のフィナーレにもしあの米を渡されたならば、号泣する自信しかない。

長女は2998g。
次女は3232g。

この中途半端な数字達を、私はきっと生涯忘れない。
健診のたびに、予防接種を打つたびに、体調を崩して病院に行くたびに問診票に書いたこの数字。
そしてなにより、お腹から出てきた娘達をはじめて抱っこしたときの、新たな命を背負った重みを表すこの数字。
もう二度と抱っこできない、この数字。

20年後なのか30年後なのか、もうすっかり忘れてしまったその重みを久しぶりに腕に抱くとき、私はきっとそのお米を抱きしめながら泣けるのだとおもう。
娘達の若い友人からは、「なんであの人、お米抱きしめながら泣いてるんだろう」と、あの日の私と同じ不思議そうな目を向けられながら。

いつになるか分からない感動の瞬間を期待して、娘達が結婚式というものを理解しはじめたころには「ママへの贈答品はお米にしてね!」と早めに仕込んでおこうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?