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【獣害問題&ジビエ】をマンガで身近に!自治体・地域住民が今取り組むべきこととは

農作物への被害や森林破壊など、近年ますます深刻化している『獣害問題』

国や自治体は鳥獣被害防止特措法の策定をはじめ、住民への研修会や専門家による現場指導などさまざまな施策を打ち出し、獣害対策に取り組んでいます。そこで本記事では、獣害対策の基本やジビエ活用についてをお伝えするとともに、地域住民を含む多くの人々の理解をより深めるための手段としてマンガがいかに有効であるかについて、活用事例をふまえてご紹介します。

■獣害問題と対策

獣害のなかでも、最も大きな問題となっているのが農作物への被害
農林水産省の調査によると、令和元年度の野生鳥獣による農作物被害額はなんと158億円にものぼり、耕作放棄や離農が増えていることからも、農家の方々の苦難がうかがえます。さらに、生息域の拡大によって、枝葉の食害や剥皮といった森林破壊、車両との衝突事故なども増加しており、獣害問題はいまや深刻な社会問題と化しています。

それでは、獣害問題を解決するにはどのような対策が必要になるのでしょうか。
組織的な追い払いや捕獲など、取り組みに成功している自治体もありますが、地域住民との連携が充分にとれず、科学的根拠や明確な目標のない対策を行ない、被害減少が実現できていない自治体も多く存在します。

だからこそ、地域住民一人ひとりが当事者意識を持ち、個々の農地の自衛と、集落全体での組織的な施策を取ることが重要。しかし、野生動物の習性や引き起こされる獣害について、全ての人が同じレベルで理解を深めることは非常に困難なのが現状です。

■今、注目されている“ジビエ活用”

獣害問題を狩猟や捕獲で解決するにあたって、さらなる課題となっているのが捕らえた野生鳥獣をどう扱うかということ。そこで注目されているのが、野生鳥獣を食やクラフトに利用する『ジビエ活用』です。

ジビエの衛生管理やトレーサビリティを目的とする「国産ジビエ認証制度」、捕獲活動およびジビエフル活動に向けた取り組みを支援する「鳥獣被害防止総合対策交付金」などが制定され、ジビエがより身近な存在になってきています。
学校給食・家庭調理へのジビエ活用により、地産地消という観点から食育が可能となるほか、害獣として処分されていた有害鳥獣の食肉利用は、廃棄物の減少・食料確保といったSDGsにもつながります。 以上のことから、ジビエ事業者への国からの支援が、需要開拓や安定供給に大きく影響することがわかります。

■獣害・狩猟・ジビエがテーマのマンガ活用事例

そしてこれらの問題をひとりでも多くの人に伝えるために、『マンガ活用』が有効であると私たちは考えます。
絵と言葉、そしてストーリーに落とし込むことで、獣害問題や猟師不足、ジビエに興味を持ってもらうためのきっかけとしてはもちろん、問題の深刻さや正しい対策をわかりやすく伝えることができるでしょう。

そこで本記事では、問題解決のヒントとなることを願って、獣害問題や狩猟をテーマに描かれたマンガ作品の数々をご紹介します。

【罠ガール】行政コラボで注目集める、本格罠猟コミック

農家出身の緑山のぶひろさんが描く「罠ガール」は、行政とのコラボで注目を集める本格罠猟コミック。わな猟免許を持つ女子高生・朝比奈千代丸が、有害鳥獣の捕獲に日々奮闘するストーリーが見どころです。
そしてなんと作者の緑山さん自身もわな猟免許を持つハンターであり、「罠ガール」では獣害問題に苦心した経験をもとに、獣害問題の現状をわかりやすく描いています。

引用:狩猟マンガが異例のベストセラー! マタギ、罠ガール、山賊ダイアリー【ジビエ入門】

女子高生を主人公としたことで、これまで獣害問題について詳しく知る機会のなかった若い世代が興味を持つきっかけにもなっています。楽しむための狩猟でなく、罠の仕組みや法規制、対策に失敗して試行錯誤する様や被害の実態、そしてジビエとして“命をいただく”尊さなどがしっかりと描かれており、農家や地域視点のリアルな「狩猟」を知ることができるでしょう。

 シリーズ累計発行部数は44万部を突破。2020年には農林水産省・環境省とコラボし、鳥獣対策キャンペーンポスターが各自治体や農業団体で掲出されました。若手わな猟免許取得者の増加にも一役買っている話題のマンガです。

【マタギ】秋田生まれの作者、古き狩猟文化を伝える

東北地方の狩猟集団・マタギとして生きる三四郎の生き様や、美しくも厳しい大自然の姿を鮮烈に描いた「マタギ」
作者の矢口高雄さんは、マタギ発祥の地といわれる秋田県出身。マタギという存在が身近な環境で育った自身の経験から、リアリティあふれるストーリーが展開されます。 

引用:狩猟マンガが異例のベストセラー! マタギ、罠ガール、山賊ダイアリー【ジビエ入門】

週刊誌で連載されていたのは40年以上前ですが、近年文庫版で復刻。発売から約2ヵ月で発行部数1万7000部という異例のヒットとなりました。
その背景にあるのは昨今のジビエブームや獣害問題であるといわれ、これらのトピックスに関心を寄せる人が増えているということが期待できます。

また、マンガ内に登場するマタギ言葉や、大迫力の狩猟シーンも見どころ。自然との共生という普遍的なテーマの中で、伝統的な狩猟文化や命の恵みのありがたさについてドラマチックに伝えた狩猟マンガの名作です。 

【山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記】作者の故郷岡山が舞台の実録日誌

第一種銃猟免許とわな猟免許を持つ現役ハンター・岡本健太郎さんが、猟師としての日々を描いた「山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記」
岡本さんの故郷である岡山県が舞台となっており、シカやイノシシをはじめ、ウサギやマムシなど、捕獲した鳥獣を食べるエピソードが見どころです。

引用:狩猟マンガが異例のベストセラー! マタギ、罠ガール、山賊ダイアリー【ジビエ入門】

普通の若者として都内で生活していた岡本さんが、故郷に帰り狩猟免許を取得。「山賊」初心者として狩猟をはじめるところから描かれており、狩猟やジビエ、獣害問題について興味を持つ人の入門書としても注目されているようです。 

岡本さんと同年代である若い世代からの人気を集め、2016年には「マンガ大賞」にもノミネート。また、環境省主催「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」とタイアップし、来場者に配布するクリアファイルやハンドブックが作成されました。

【ゴールデンカムイ】アイヌの狩猟文化から見るジビエの神髄

狩猟マンガを語るうえで欠かせないのが、超人気作品「ゴールデンカムイ」。明治時代末期の北海道や樺太を舞台に、元陸軍兵・杉本佐一とアイヌの少女・アシ(リ)パが、仲間とともに金塊を探し求めるストーリーです。(※作中の表記では( )内は小字)

引用:話題沸騰中!おすすめ狩猟マンガ3選【ジビエ入門】

作者の野田サトルさんは北海道出身。実際の狩猟への同行や、アイヌ文化の徹底的な勉強をしたうえで制作されており、多様な文化へのリスペクトがマンガに盛り込まれています。
なかでも、アイヌ独自の狩猟方法やジビエ、人や鳥獣の命に関する描写は、「ゴールデンカムイ」の代名詞ともいえるでしょう。

マンガは空前の大ヒットとなり、2018年にはテレビアニメ化が実現。さらに「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」「手塚治虫文化賞」など数多くのコンテストで受賞し、2019年ロンドンの大英博物館で開催された「マンガ展」では、キービジュアルにも採用されました。

【東京カリニク鉄砲隊】初心者ならではの視点で狩猟現場を描く

作者・これかわかずともさん自身の体験にもとづき、新人猟師の狩猟を描いた実録マンガ「東京カリニク鉄砲隊」
物語の主人公は、ジビエブームにのって「カリニク=狩猟肉」でひと儲け‥そんな軽いノリと勢いで猟師になった栄川カズアキ。狩猟の難しさ、自然の厳しさに翻弄される新人猟師のエピソードや、思わず食べたくなってしまうジビエシーンが本作品の魅力です。

引用:話題沸騰中!おすすめ狩猟マンガ3選【ジビエ入門】

また、親近感のあるキャラクター設定やストーリーが、若い世代にウケている理由のひとつ。東京に暮らしながら「趣味」として狩猟やジビエを楽しむ登場人物の姿は、まさに“今どき”。一方で、捕獲した鳥獣の命の重さや尊さについてもふれられており、軽いノリだけでは終わらせない作品となっています。

【大槌ジビエ】民間と行政が協働、「害獣を財産に変える」

最後にお伝えする事例は、マンガとは少し異なりますが、岩手県初の地方創生ジビエ事業「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」についてご紹介します。ハンターたちに古くから受け継がれてきた「命への感謝」という思いを軸に、害獣と呼ばれる存在を“まちの財産”にしていこうと民間と行政が協働で取り組んでいます。

捕獲鳥獣のジビエ・レザー製品への利活用、狩猟体験ツアーなど多岐に渡る取り組みのなかで注目したいのが、獣害の原因であるシカを主人公にしたオリジナル短編アニメーション「しかのおくりもの」

引用:大槌ジビエソーシャルプロジェクト facebook

 キャラクターデザインを担当したのは、海洋生物の生態や農学に造詣の深い、研究者兼イラストレーターのきのしたちひろさん。現役猟師が日々の経験をもとに脚本を書き、命のサイクルや、共生とはどういうことなのかをわかりやすく伝えています。

アニメーションのDVDは教育機関に寄贈され、YouTubeでも公開。子どもたちにとって理解が難しい獣害問題について、やわらかなタッチでやさしく問いかける作品となっています。

■獣害問題の解決のカギとなる“マンガ活用”

深刻化する獣害問題を解決するためには、獣害や狩猟に関する住民の理解を深めることが必要不可欠。本記事では、そのための手段のひとつとして、子どもも大人も親しみやすいマンガを活用することで、どのように伝えていけるのかをさまざまな事例とともにご紹介しました。

今回ご紹介した作品の数々は、知識を得るためだけでなく、コンテンツとしても世代を超えて楽しめるものばかり。マンガのストーリーに沿うことでより理解を深め、獣害対策の当事者はもちろん、獣害問題について知る機会のなかった若い世代にもわかりやすく伝えることができるのです。これこそが、マンガならではの強みといえるでしょう。

狩猟をテーマにしたマンガ作品や行政とのコラボ事例、民間ジビエ事業者の取り組みを知ることで、獣害問題解決の新たなヒントとなれば幸いです。マンガ活用を検討されている方は、ぜひ一度トレンド・プロへご相談ください!

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