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大量輸送時代とコンコルド効果

日本における空輸の実情

日本の貿易での航空輸送比率はとても低い。社団法人日本船主協会が行った2013年の調査結果によると、重量ベースでは全体の99.7%が海上輸送。金額ベースでも76.7%が海上輸送。現在も傾向は大きく変わらないだろう。

コンテナ革命の恩恵を最も受けたのは、海上輸送大国である日本なのではないだろうか・・・

航空輸送はスピードと定時性に優れるが、輸送量の面とコスト面で海上輸送と比べて劣る。空輸を使うのは緊急時避難的理由と戦略的理由の2つによるもの。

緊急避難的理由
クレーム対応/ 納期厳守/ 鮮度保持

戦略的理由
一刻も早く届けることによる利があるから
輸送コストが高くても採算がとれるから

なお、航空運送状(Air Waybill | AWB)の説明については以前B/Lについての記事内で説明したので今回は割愛。

大量空輸時代の幕開け

海上輸送と比べて出番の少ない航空輸送であるが、それでも特定の状況下では大きな役割を果たしている。

そんな航空輸送が本格的に稼働し始めたのが1969年。この年はジャンボジェット機 ボーイング747が初飛行した年らしい。

ボーイングは旅客機としてのイメージが強いけど、もともとは貨物輸送を目的として開発されたんだとか。大型の荷物を運べるボーイングは、運賃の引き下げを可能とした。

余談1:単位には要注意

海上輸送の比率は重量ベースでは全体の99.7%、金額ベースでは76.7%と述べた。どちらにせよ海上輸送比率が高く、空輸比率が低いことには変わりないが、単位によって印象がずいぶんと変わると思った。

これは安くて大量に仕入れる場合や、大きくて重い荷物を輸送する際には海上輸送が優れているということが影響しているのだろう。数字を語られるときには単位や分母に着目しなければいけない。

余談2:コンコルドに見る戦略論

本筋とは全く関係ないけども、ボーイングを調べる過程でコンコルドについての記事を発見したので読むと色々と考えさせられた。

コンコルドは英仏が共同開発した旅客機。超音速で飛行するというスペックを持ちながら、商業的には失敗に終わったとされる。

海上輸送も航空輸送も、輸送量はとても重要な指標。大量輸送はコスト減に直結するからだ。高速飛行ができても大量輸送ができないコンコルドは輸送コストがとても高かった。

スペックの高いものを作れば儲かるわけではない。コンコルドはそれを象徴しているように思う。

高速化を目指したコンコルドの洗練されたフォルムは本当に美しいとは思う。

ちなみに損失になると理解しつつも投資をやめられない心理現象を「コンコルド効果」「コンコルドの誤り」なんていうんだとか。


参考文献

10分でわかる貿易のプロをめざす人の国際航空輸送の実務
姉崎慶三郎 著

姉崎先生による10分でわかるシリーズ。姉崎先生の本からの記事も4冊目となり、大分と先生のノリがわかるようになってきた。

過去に書いた姉崎先生著書のまとめ
インコタームズ
貿易保険
海上輸送


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