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貿易実務を学ぶ

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貿易、特に輸出業務についての知見をまとめていきます。
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記事一覧

鉄の原料、オーストラリア、東南アジア航海ルート

資源に乏しい日本は、ほとんどの資源を輸入に依存しています。製造業に不可欠である鉄鉱石や石炭も例外ではありません。この二つは鉄を製造するための原料です。 今回は、安定して鉄を製造するためにオーストラリア・東南アジアとの友好関係がとても重要であるというお話。 鉄の作り方鉄の原料は鉄鉱石です。鉄は、鉄鉱石と石灰石と石炭からつくられます。これらの原料を高炉にて製銑することにより銑鉄を作り上げます。 高炉に関しては日本にも存在しますが、鉄鉱石をはじめとする原料は輸入に依存していま

荷為替手形ってなんぞ?

貿易実務検定という資格に挑戦中のYoshiです。 貿易実務検定は、貿易にまつわる知識を体系的に学べる素晴らしい資格です。 しかし、正直なところ実業務ではほとんど使わないという知識も多いです。特に、書類関係や代金決済のあたりがそうだと思います。 貿易実務検定では、信用状取引(L/C)や決済手法についての出題数が多いです。ただ、製造業の貿易取引は代理店との取引がほとんど。顔なじみの相手に対しては電信送金(Telegraphic Transfer/T/T)でやり取りする場合が

運賃(Freight)と輸送費(Carriage)の違い

貿易実務検定という資格試験に挑戦中のYoshiです。 貿易用語には、アルファベットや翻訳された言葉が数多くあり、それらを覚えるのに一苦労です。 中でもIncotermsはなかなかに厄介。今回は、僕がIncotermsを覚えるために苦労した運賃(Freight)と輸送費(Carriage)の違いについてです。 そもそもIncotermsとは貿易業務関係者であれば今更説明する必要もないとは思うのですが、それ以外の方も見ていただいているかもしれないので一応・・・ インコター

FedEx vs. UPS 国際宅急便の沿革比較が面白い

海外に製品を発送したいと思った場合、どのような方法があるのでしょうか? 日本は海に囲まれた島国なので、海上輸送か航空輸送を使って海を越える必要があります。どちらにもメリット・デメリットがあるので、企業戦略や製品特徴に合わせた輸送方法を選ぶことになります。 今回は航空輸送のうち、国際宅急便に関する記事です。 国際宅急便とは?別名クーリエ。物流業界にいる方にとっては、こちらの呼称のほうが馴染みがあるかもしれません。 国際宅急便は、航空便で海外に書類や小口荷物を届ける民間の

信用状取引(L/C) ③B/L危機対応や航空輸送の場合

前回の記事: 輸出者にとって安全性が高く魅力的な決済方法である信用状取引(L/C)。しかし、L/Cのルールは複雑で挫折しやすい。今回はより詳細なルールを確認していく。 B/L危機対応とL/C B/Lとは船荷証券のこと。船積書類の中でも超重要書類に数えられる。L/Cを使った取引では買取銀行に提出する必要がある。しかし、最近ではコンテナ船の登場などによる輸送高速化が原因で新たなB/Lの仕組みが登場した。 それが、サレンダードB/L(Surrendered B/L)とSea

信用状取引(L/C) ②L/Cの種類と期限

前回の記事:信用状取引(L/C) ①L/Cの概要 輸出者にとって安全性が高く魅力的な決済方法である信用状取引(L/C)。しかし、知識が不十分なために思わぬトラブルになってしまうリスクもある。 今回は、信用状の種類について。外部リンク先に既にまとめてあるものがあったが、僕自身が理解しきれなかった箇所もあったので再度まとめなおす。 主要なL/Cの種類取消不能L/C(Irrevocable L/C) 確認L/C(Confirmed L/C) 買取銀行指定L/C(Restric

信用状取引(L/C) ①L/Cの概要

ビジネスを行うプロセス上で最も重要なのが代金回収だ。商品が売れてもカネが入らなければそれまでの営業の意味がない。 貿易取引では安全性が高く、船積み後すぐに代金回収ができる仕組みとして信用状( Letter of Credit | L/C)を使った取引が行われることがある。言わずもがなもちろん、貿易取引を行うために理解しておかなければならない重要書類である。 L/Cを使うことによるメリット輸出者が代金回収を懸念しなくてもよくなる 輸入者が支払不可能でも、開設銀行(後述)が支

海外代理店を知る ディストリビューターとセールスレップの違い

以前、中小企業が海外進出するためには海外代理店選びが成功のカギだということを紹介した。 しかしその前に理解しておかなければならないのは、そもそも海外代理店とは何者なのか?ということだ。 海外の販売代理店は大きく2種類ある中間流通を取り扱う業者の名称について日本では明確な区分はない。代理店は「問屋」「卸」「商社」などの名称で呼ばれることもあるが、そもそも線引きができないのである。 しかし、海外では大きく2種類の異なる区分が使われている。それが「ディストリビューター」と「セ

海上貨物保険をパンフレットから学ぶ ②海上貨物保険と貿易条件

前回の記事:①海上貨物保険とは 海上貨物保険を学ぶためには、保険会社のパンフレットを眺めるのがわかりやすいことを発見。 前回の記事では海上貨物保険の概要について説明した。今回は、貿易保険条件と海上貨物保険の関係について。 参考にさせていただいた保険三井住友海上 損保ジャパン 海上保険と貿易条件(Incoterms)海上貨物保険のパンフレットの構成は各社とも似ている。 いずれのパンフレットでも海上保険の役割を簡単に説明したのち、主な貿易条件(Incoterms)と海

海上貨物保険をパンフレットから学ぶ ①海上貨物保険とは

貿易を行う上でかかせない海上保険。輸送上のトラブルリスクを最小に抑えるためになくてはならない存在だ。 しかし海上保険の勉強を始めたはよいものの、なかなか知識が定着しなくて苦しんでいた。言葉も専門的なものが多いし、保険の内容を視覚的に理解できる資料も少ない。 どうすればよいものかと悩んでいたところ、Twitterでフォローさせている方がとても有益なつぶやきをされていた。 「海上保険のパンフレットから勉強する」なるほど、その手があったか! 確かに、パンフレットには契約者に

『中小企業が「海外で製品を売りたい」と思ったら最初に読む本』代理店選びが成功のカギ

ユニークな製品を作っている中小企業にとって、海外は魅力的なマーケットだろう。国内では競争相手の多い製品も海外ではもっと評価されるかもしれない。また、人口が減少している日本でのみ展開することへの危機感から海外進出を目指したい企業もあるだろう。 しかし、海外にコネもなく、資金も十分でない中小企業が海外に進出するためにはどうすればよいのだろうか。そのヒントとなる本を見つけたので紹介する。 『中小企業が「海外で製品を売りたい」と思ったら最初に読む本』 大澤裕 著 ダイヤモンド社

航空物流業界のお仕事

航空物流業界の3形態航空物流業界には、フォーワーダー、キャリア、インテグレーターの3形態がある。 フォーワーダー 航空貨物取扱業者。また、Door to Doorサービスを提供してくれる混載業者を指すことも。明確な定義はあまりなく、自ら飛行機を所有しない輸送業者という認識でOK? 国土交通省の免許が必要。同時にIATA( International Air Transport Association | 国際航空運送協会)の代理店でもある。 余談ではあるが、IATAには

大量輸送時代とコンコルド効果

日本における空輸の実情日本の貿易での航空輸送比率はとても低い。社団法人日本船主協会が行った2013年の調査結果によると、重量ベースでは全体の99.7%が海上輸送。金額ベースでも76.7%が海上輸送。現在も傾向は大きく変わらないだろう。 コンテナ革命の恩恵を最も受けたのは、海上輸送大国である日本なのではないだろうか・・・ 航空輸送はスピードと定時性に優れるが、輸送量の面とコスト面で海上輸送と比べて劣る。空輸を使うのは緊急時避難的理由と戦略的理由の2つによるもの。 緊急避難

海上輸送の超重要書類 船荷証券(B/L)

貿易実務をこなすうえではモノ・カミ・カネの流れを押さえる必要がある。今回は、カミの中でも特に重要書類である船荷証券(Bill of Lading | B/L)について。 B/Lが重要な書類である理由前提としてB/Lとは何かを説明する。B/Lは貿易取引でもっとも重要な書類と言われているが、その理由はB/Lが以下の4つの役割を担っている書類だからだ。 B/L(船荷証券)の4つの役割 ①運送契約書:船会社と荷主の間での運送契約を示します ②貨物受取証:船積み日の証明になります