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「第一回手品個展」を鑑賞しました。

黒川智紀さんの「第一回手品個展」を鑑賞しました。
こちらはステージマジックの創作家、パフォーマーである黒川さんの近年の作品群を動画で配信し、それをみんなで鑑賞する、という回です。

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マジックの演技動画をネットにアップする、あるいはリアルタイム配信でマジックを演じる、という事はいずれもよく行われている事ですが、自身の撮影済みの演技動画を生配信するというのはなかなか珍しい企画ではないかと思います。

セッティング等の関係でリアルタイムで複数の演技を連続して行う事が難しいステージマジックというジャンルだからこそ辿り着いたスタイルのようにも思いますが、マジックの鑑賞法としてはとても可能性があるように感じました。

また、そこで演じられたそれぞれの演技もオリジナリティに溢れた素晴らしい演技でした。
せっかくなので、少し感想を。


『Next Stage』
パズルをモチーフにした演技。パズルのピースを使った出現、移動、カラーチェンジが次々と起こっていきます。完成したパズルにはめる枠を上手く使ったり、パズルが身体のあちこちに付いてしまったりする所が良いアクセントになっています。

パズルのピースという素材に特化して作品を作っているので見やすくわかりやすいのですが、どうしても現象的にも手法的にも平面的になってしまうので、何か立体的な現象やアイテムがあるともっと良くなりそう。


『Lilac』
シンプルな道具立てでのゾンビボールの演技。まず箱のアイディアが良いです。これだけで途端にイメージが固まります。
また、ゾンビボールの動きが素晴らしかったです。通常のゾンビボールでは難しい自由度の高い扱いをされていて、その事が不思議さを非常に高めている印象を受けます。

「マジックは生で見るべきだ」という論が未だに根強いですが、マジックを撮影する一つの利点として、視点を固定出来る、という事があります。ステージマジックはその名前の通り、ステージ、舞台で演じられるマジックです。そして舞台というものには客席があって、客席のどこから見るか、によって実はかなり印象が違うよな、と常々感じていました。角度、距離を固定化できる動画によるマジックは、作品作りをしているマジシャンにとって、実は大きな武器になるのではないかと思っています。


『わって、とかして、かきまぜて、』
チョコレートの演技。チョコレートをわって、とかして、かきまぜて、指に付けて味見しようとする、体で進む演技。指ですくいとったチョコレートに見立ててシンブルの演技をする、というのは面白いですね。途中、板チョコも追加しながら指先のチョコもカラーチェンジしていきます。

シンブルは何かに見立てて演じられる事が多いですが、なかなか移動現象や増加現象と見立てた物をマッチさせるのは難しいです。黒川さんのこの作品ではその辺りが実にうまく融合していました。チョコのカラーチェンジはつまりは味が変わる、という事なので、その辺りもストーリー的に絡められるともっと広がりが出そう。


『りあらいず』
子供のラクガキ的な壁画を使ってのマジック。現象や手法も面白いのですが、動画手品としての面白さとしては演技とは別でイラストを用いた前後があった事です。

ステージマジック、特に学生マジックやコンテスト領域で行われる演技の場合、10分以内の短い時間で行われる事が多いです。そうなると、演出は簡単な設定程度の事しか出来ません。それがステージマジックというものを良く言えば単純化、悪く言えば浅いものにしてしまっている原因でもあるように思います。

マジック動画作品を配信する、という形にした事で、実際の手品演技と別の媒体を扱う事が出来るようになる、というのは大きな可能性ではないかと思います。


なかなかステージマジックが見れない中、実験的で大変面白いイベントでした。
第二回も楽しみにしています。

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