超短編小説『ナンセンス劇場』064
【妖怪大百科事典】
=妖怪いないいないばぁ~=
「いないいない、ばぁ~」
「おぎゃ~~!!!」
《解説》
『妖怪いないいないばぁ~』は赤ちゃんがいる家庭に忍び込み「いないいないばぁ~」と言って恐ろしい顔を見せ赤ちゃんに一生消えることのないトラウマを植え付ける。
主に老婆の姿をして現れる。
=妖怪だるまさんが転んだ=
「うん? あの子どうしたんだろう。泣いてるのかな?」
「だ~るまさんが」
「え?」
「こ~ろんだ!」
「う! うぐぐぐぐ」
≪解説≫
『妖怪だるまさんが転んだ』は人通りの少ない路地や空き地に現れる。
両腕で顔を覆うような恰好で壁や木に向かって立っており、後ろを通りかかった人に対し「だ~るまさんがこ~ろんだ!」と言いながら振り返る。
振り返った『妖怪だるまさんが転んだ』を見た者は数十秒の間、金縛りにあったかのように動けなくなる。
一見、男の子のような姿をしているが、その顔には深い皺が刻まれている。
=妖怪横滑り=
(よし、席が空いたぞ)
“ササッ”(ニチャ~)
(な、なんだよコイツ)
≪解説≫
『妖怪横滑り』は主に混雑した電車に現れる。
席の一番端に座っていた人が立ち、その前に立っていた人が座ろうとした瞬間、横に座っていた『妖怪横滑り』が“ササッ”と端に移動し端の席に座ろうとした人を妨害する。
そして覗き込むように上目遣いに見上げ“ニチャ~”と不気味な笑みを浮かべる。
『妖怪横滑り』が座っていた席には隣に立っていた人が座り、そのまま立ち続けなければいけないということは言うまでもない。
【ご静粛に】
ヤクザの金に手を付けたことがバレ、男は追われていた。
袋小路に追い込まれ絶体絶命のピンチ。
「くっそ~、奇跡よ起これ~!!」
男が叫んだ。
“パン、パン、パン、パン”
男が叫ぶのと銃声が鳴り響くのはほとんど同時だった。
体が白い光に包まれ男は一瞬全てが止まったように感じた。
(これは俺の隠された能力なのか?)
我に返り男は自分の体を調べる。
どこにも撃たれた痕が無い。
「やったー! 奇跡が起きたぞー! 俺は生きてるぞー!」
「そこうるさいぞ、静かにせんか!」
男は閻魔大王に怒られた。
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