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超短編小説『ナンセンス劇場』019

【旅立ちの朝】

 目を覚まして時計を見ると8時ちょっと前だった。
 僕は布団から飛び起き、急いで階段を降りた。

「お母さん! どうして起こしてくれなかったんだよ!」

「何回も起こしました! あんたが全然起きなかったんじゃない!」

 言い争ってる暇はない。
 急いで顔を洗って歯を磨き、寝癖を直している時間はないので髪の毛はボサボサのまま自分の部屋に戻り着替えを済ます。
 1階に戻ってお母さんが作ってくれたお弁当と水筒をリュックサックに詰め込み玄関に向かう。

「忘れ物ない?」

「うん、大丈夫。今日ちょっと遅くなると思うから晩ご飯先に食べてて。
 それじゃ行ってきます」

 僕は集合場所まで休まず走りなんとか遅刻せずにすんだ。

「お前、寝癖付いてるぞ」

「ああ、寝坊したんだよ」

「ははは、ドジだなぁ」

 友達と喋っていると先生がやって来た。

「はい、みんな静かに。それじゃこれから魔王討伐に向かいます。
 2日前に現れた魔王はもうすでに200万近い人々の命を奪っています。 人類の未来はみなさんに託されているのでくれぐれもふざけたりせず、失敗してもいいから最後まで諦めず全力を出し切って頑張ってください。
 分かりましたかー?」

「はーい」

 魔王はとてつもなく強くて恐ろしいやつだ。
 でも僕は知っている。
 みんなで力を合わせて頑張れば乗り越えられない壁なんてないってことを。
 大縄跳び県大会3位の僕たちにやれないことなんてないんだ。


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