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超短編小説『ナンセンス劇場』006

【そこにあったか】

「先生、僕はとても冷たい人間です」

「そんなことはない。手のひらを太陽にかざしてみろ、お前の体にも熱い血潮が流れていることが分かるはずだ」

「本当だ、見える、見えるぞ。
 僕の体にも熱い血潮が…うん?
 なんだ?
 この地図みたいに見えるものは」

「クククク、テツゾウめ、息子の手の中に宝の地図を隠しておったか」

「せ、先生?」


【夭逝】

“心頭滅却すれば火もまた涼し”

それが『びっくり人間コンテスト』に出場した彼の最後の言葉でした。


【高視聴率プログラム】

「みなさんこんにちは、『下町ぶらぶらブラ散歩』の時間です。
 今日は鶴亀市にやって参りました。
 どうですか、この閑静な住宅街。
 あそこの公園ではお爺ちゃんかな?
 お婆ちゃんかな?
 うたた寝をしていますね。
 それでは早速本日のゲストをお呼びしたいと思います。
 本日のゲストは今人気絶頂のアイドル、リョウヘイ君とマイコちゃんです! どうぞこちらへ!」

 “よろしくお願いしま~す”

「リョウヘイ君、そのブーメランパンツ決まってますねぇ」

「ええ、気合入れて赤のブーメランパンツ穿いてきちゃいました」

「マイコちゃんもハイレグのビキニ、とっても似合ってますよぉ」

「本当ですか~、ありがとうございますぅ~」

「それでは今日もはりきってまいりましょう。
『下町ぶらぶらブラ散歩』レッツラゴー!」

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