いきなり方向転換をしなければならない時に備えた管理職の心得 M&A 重職心得箇条 第12条

「今年はオリンピックもあるし、売上あがるぞ!」と、期待していたのに、今回のような「想定外」の事態が起きると、どうしようとかと呆然としてしまう。
局所的な災難だったら、国が何とかしてくれる、自治体の助成をとりあえず待とうと、他者頼りも当てにできるが、「全世界同時に起きていて長期化するだろう」という、ある意味、人類に平等な災難なので、誰がどう考えても自助努力しかソリューションがない。

逆に早くそれに気づいて、対処できた企業のみが残るだろう。

今までのんびりしていたが、さすがにソロソロ…かなり抜本的な改革をしなければならないことは、財務評価をみている管理職は良くわかっていて、いかにそれをスピードを持って行うかが問われている。

わが社は介護施設で補助金に守られているから大丈夫、わが社は売上持ち直したから大丈夫、などとも言っていられない。

With Coronaの時代は、コロナがまだいる訳だから身動きできないが、After Corona 、コロナ禍が収束したら、人は大きく動けるようになるのだから、時代の流れの勢いは、当然の事ながら倍速以上の勢いで変革していくだろう。

平和時はのんびりできたけれど、激流が押し寄せる訳だから、いきなり方向転換をしなければならないのが、これからの時代だ。

この動乱期の舵取りこそが、重職(管理職)の重要な仕事になる。

下手にやってしまうと、これぞという有能な社員が辞めてしまったり、社員の連帯感を微妙に固めて逆に組織が硬直化してしまう恐れもある。そんな時にどうしたら良いのか、佐藤一斎先生はこのように述べている。

大臣たるもの胸中に定見ありて、見込みたる事を貫き通すべき元より也。然れども又虚懐公平にして人言を採り、沛然と一時に転化すべき事もあり。此の虚懐転化なきは我意の弊を免れがたし。能々視察あるべし。
重職心得箇条 第12条

管理職たるものは、上司(社長)、部下、社内の立場に関係なく、女性、男性、若い、年配者など、一切の偏見や先入観を持たずに、周りの人の意見をよく聞いて、必要なら180度方向転換すべきである。

90度でもダメ、120度でも微妙…、
180度の方向転換、

故に、この変化には、勢いがなければならない。
どのような勢いかというと、台風のような勢いで、一気に強まり、その後は、カラリと晴れ渡る。

その方向転換を推進するには、日ごろから何を心がけなければならないかというと、「自分の意見、一定の見識というもち、それを発信しているかどうか。」だと一斎先生は述べている。


自分の見識(定見)とは、

自分の立場は守られるだろうか。
自分の利益は守られるだろうか。
自分のアイデアを持っていかれないだろうか。
自分の手柄を横取りされないだろうか。

などという、「私欲」の要素が一切含まれてはいけない。

コレ、中々出来るものではないかもしれないが、この「私欲」を捨て去ることで、言葉に情熱と説得力と勢いが出てくる。

その言葉は、「情熱をもって変えなきゃいけない」と思っている社員の心に響くのだ。

激動の時代になると、「どうにかなるんじゃない?」という、ことなかれの平和主義者を味方につけても、物事は硬直化するだけ。

必要なのは「動乱期を一緒に乗り越える仲間」

そして、変化のやり方は、まったく台風と同じ。
最初、弱めの雨を降らせてジワリジワリ様子をみながら、少しずつ風を強め、それから一気にスピードアップして一気に破壊して、一気に洗い流して、一気に晴れ渡る。

M&Aや企業合併など、この類に入るかもしれない。

それを一緒に行ってくれるのは、「情熱的で勢いがある人物」しかいないだろう。

しかし、ここからがポイントで、管理職自身が日ごろから、「虚懐公平」(私欲を持たず公平な立場)を貫き、それに準じた言葉を発していなければならない。

会議や飲み会などで、「部長一言!」と言われた時、これを心得ながら、常に「私利私欲のない熱い言葉を言う自分」を創りあげていく必要がある。

「あの部長だったら、仕方がない」と思わせるだけの人物に、自分を創りあげられるかどうか、これは管理職の大切な仕事なのだ。

そんな「自分」を創りあげないで、一気に変革なんかすると、「アイツ、自分のために変えたんじゃないの?」という誤解を受ける。

部下が誤解するのはまだしも、精神的にキツいのは、社長から誤解を受けること。

「お前の会社のためにやっているんだろうが!」と心の中で叫びながら、誤解というストレスから逃れられなくなってしまう。

社長(殿)は、城の持ち主なので、自ら台風を引き起こして城を崩壊することなど、信長レベルの人物でない限り無理だろう。
逆に、台風から城を守ろうとするし、オーナー企業の場合は、私欲は文化であったりするもんだから、これもまた始末が悪い。

会社を守るか、社員を守るか。

城か、それとも人間か。

この佐藤一斎先生から学んだ幕末の志士は、「人間」を選んだ。
だからこその、無血開城

重職自身は生身の人間であり、社員なので、この選択に迫られた時、重職(管理職)は社員を守らなければならない。

会社(城)を壊しても。そしてそれが出来る立場にいるのは、重職(管理職)だけであり、だからこそ、それこそが、重職の最も大切な役割でもあるのだ。

それには、日ごろからニュートラルな立場を貫き、「虚懐公平」なる人物に自分を創りあげること。

この重職心得箇条は、江戸時代末に書かれたものだが、人間社会は変わらない。

全てのヒントが歴史にあり、古典にあり。

一般社団法人数理暦学協会
山脇史端


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