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老子と学ぶ人間学⑨武士道と起業家エコシステム

私の若い頃から、
マーケティングというと、コトラー。
コトラーの提唱した顧客至上主義が
ビジネスの基本になっている。

1.顧客至上主義と環境問題

顧客満足度、顧客第一主義、
マーケティングの王道は、
他社よりいかにして
顧客ニーズを満たすことができるのか。

顧客の欲望が増大するに従い、
いかに他社に先駆けて、
その欲望を満たす事が出来るのか。

顧客がもっともっとと望めば、
際限なく、果てしなく満たしていく。

欲望を満たす企業こそが、
顧客を大切にした企業であるとされ、
永年にサービス競争をした挙句…

うんざりするほど商品が多くなり、
物質は氾濫し、
生産、廃棄が繰り返され、その結果、
環境問題となっている。

例えば暖房器具。
毎年新機能が追加され、
多種多能な商品が販売されている。

暖房器具が一つもなく、
寒さで凍えながら冬を越す人など、
今の日本には皆無だろう。

ほとんどの人が、既に十分な器具を持っている。

充分持っている人たちに、
更に商品を売りつけようとするわけだから、その苦労は半端ない。

競争に勝ち抜くには、
顧客が何を求めているのか。
そのデータを持っている人こそ勝者となる。

ついに市場調査の度が過ぎ、消費者を監視する社会になってしまった。

少し前までの市場調査は、
街頭アンケートだったが、
そのような牧歌的な光景は今はみられない。

どの顧客がいつ、何を欲しがるのか、
的確な情報を知る企業こそ勝者となり、
消費者の欲望を際限なく、果てしない世界へ先導していく。

ビックデータを保有している
IT大手が有利なのは言うまでもなく、
彼らの巨大な組織を通過し、
利益を生み出す商品を増やすため、
顧客の欲望をひたすら増大させている。
それに参加せねば物が売れない時代、
参加企業は、
的確にタイムリーに安価に供給する
お行儀のよい小人でなければならない。

天下に忌諱多くして、民弥々貧く、
民に利器多くして、国家滋々昏だれ、
民に智慧多くして邪事滋々起こり、
法令滋々彰かにして、盗賊多く有り。

老子の道徳経 第57章

法律や禁令が多くなり、縛りが強まると、
新たなものに挑戦しようという意欲が失われ、
人々はどんどん貧しくなる。

人々が便利な道具をたくさん持つと、
国はますます混乱してしまう。

技術が進めば進むほど、
怪しげな物が作りだされ、
法令の解釈が明確になればなるほど、
法網をかいぐぐり、儲ける人が多くなる。

山脇史端超訳

2.ゴールドラッシュと武士道

GAFAMに代表される巨人たちは、
ビジネスエコシステムという
仕組みの中で誕生した。

アメリカでは、大学が輩出する技術や人材、投資家(VC)、起業を支援するアクセラレーターやインキュベーター、ビジネスを支援する弁護士やコンサルタント、スタートアップとの協業を狙う企業などが集まり、スタートアップを支援するビジネス循環型エコシステムが自然発生的に構築され、これがイノベーターを育成した土壌として、数多くのスタートアップ企業やユニコーン起業を輩出した。

シリコンバレー自体も、
1848年に始まるゴールドラッシュにより繁栄した
カリフォルニア州のUCLAを中心に発展したIT産業市だ。

このシステムが土壌になり、
世界リードするIT企業が生まれている。
つまり、起業家エコシステムとは、
金脈を探し当てて一攫千金を狙う採掘者的な発想だ。

そう考えると、日本にはこのシステムが生まれにくいのは当然のように感じるが、私は、武士道の影響が特に強いと思う。

スタートアップの成功率は、1割以下だという。
一攫千金の発想だからそれでよく、
9割以上が失敗するが、それを許容する。
そのため、その失敗が経験となり、
次なる挑戦への飛び台になるのだ。

失敗を許容し、次の挑戦を支援する。
これが起業家エコシステムの特徴だ。
敗者復活戦を歓迎し、経験者として逆に価値は高くなる。
金塊の掘り起こしも、失敗を積み重ね、それが経験となり勘が研ぎ澄まされ、成功できるという発想だ。

そしてほんのわずかな確率だが、成功者は莫大な富を生みだすので、多くの失敗を許容することが出来る。

Fail First  
Try and Error

早めにやってみて失敗し、それを糧にして成功に近づこう!
この言葉がもてはやされる位、
敗北者は経験者として受け入れられる。

日本の場合、武士道精神が強いので、
失敗者に甘くはない。
責任をとり、切腹を申しつけられる。

元の会社には帰りづらくなるし、
敗者復活戦を支援する考えも、
仕組みもないため、
次なる挑戦まで至らない。
失敗を糧にせず、終焉とする。

人様に迷惑をかけた癖に、何たることか!
という禁令的雰囲気が流れ、
そうなると、最初から挑戦すること自体が怖くなり、
とりあえず静かに組織に順応して
様子をみていた方が無難と感じ萎縮する。

武士道哲理は禅思想を根基に
儒教思想が組み合わされたものである。

その基本にある禅思想に、
大いなる影響を与えたのが老子だ。

中国仏教は、既にあった老子の道教地盤に入りこめたから成功した。

故に、断捨離も禅的で、老子的であり、
禅的でかり、武士道的だ。

余計なものは持たない、行わない。
故に、負けたら潔く引退する。

そのような考えだと、
思いきったイノベーションは生まれにくいし、
そもそも、
人間や環境に歩調に合わせない進歩など求めない。

人間の欲望を亢進させるコトラー的思想ではなく、
その真逆の、
人間の欲望を抑制する思想なのだから。

3.老子の言葉を逆手にとると…


文明の利器を手にした私たち、
老子によると、
人々が便利な道具をたくさん持つと、
国はますます混乱してしまう


確かに、誰もがスマホで発信できるため、
言論の自由、個人の自由が拡大した。
そうなると、国家統制は弱体化され、
上に立つ者は、よほどの人徳者であり、かつ、理路整然とした明快なメッセージを発信し続けられる人物であるか、またはカリスマ的強権者でない限り、国家(企業)は迷走する。

日本人は武士道精神への憧憬が強い。
縦社会を遵守する武士道精神では、フラットな関係でこそ機能するエコシステムはむずかしいだろう。国主導で行っても、お役所ペーパーから逸脱できず、面白いものは生まれない。

和の精神が強いので、企業コンソーシアムのような考え方の方がやりやすいが、参加企業の理念が徹底して共通しない限り、空中分解しやすい難点はある。

菜根譚によれば、
社会貢献理念が30%共通していれば良しという。
つまり、70%は各々の自己利益を追い求めてよく、それ位の割り切りと寛容さがない限り、オープンイノベーションは育ちにくい。

そして、また老子はいう。
技術が進めば進むほど、怪しげな物が作りだされ、
それを用いた人たちが、従来の法律の眼をかいくぐり利益を得る

文明の利器を手にすると、
人間の能力の上下の差は拡大化され、
その間の膨大な数の中間層の能力は、下方で均一化されてしまう。

その上で、技術が進んでいく。
メタバースだの、ホログラフィーだの、
人間の在り方の根本を覆すような物が次ぎから次へと作りだされ、それらへの使い道への法律が追いつかないため、その合間を縫って利益を得る賢い人たちが増えるという。

メタ空間の土地売買が、注目されている。
メタ空間の土地なので、
実際の土地ではなく、バーチャルな土地だが、
その空間に訪れる人が増えれば、
一等地に自社看板を立てておけば、広告効果は莫大だろう。

その土地は、どこの国の土地でもないため、どこの国の法律も関係しない。

それこそ、老子のいう「技術をつかった怪しげな物」であり、
それを用いた人が、法律の眼をかいくぐり利益を得るのだ。

だが、メタ空間の土地はいかに開発しても、
どんなに過激な看板を立てても、
地球環境を破壊することはないため、
リアル空間の自然環境は保たれる。

地球環境を守るために、
リアルな世界では質素に暮らし、
バーチャルな世界で欲望を満たしていく。

新時代の仙人の生き方かもしれない。

一般社団法人数理暦学協会
山脇史端

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