私の治療】腰痛編|デッドリフトで腰を痛めたというトレーナーさん

魔法のように一撃で治す!

のような動画になっていますが、実際は治療で痛みが消える条件がそろっていた例だっただけのことなんです。

私たち治療家は、若いころには仙人のような治療家を夢見てしまうことがよくあります。

競技をやっていてもそんな空想、しますよね。
私もリングに向かう花道を、お気に入りの曲で入場する自分の姿を妄想したり、してました。
そこまでの努力もしていないのにね。お恥ずかしい。(^_^;)

その後、故障が重なり競技を離れて治療の世界に入りました。

整形外科クリニックのリハ室に勤務していた20代のころの話なのですが、
当時、ドクターから「一撃で治す」という幻想を捨てろと度々注意されていました。

治療の世界には「クイックフィクス」という戒めの言葉があります。
痛みの原因が筋肉の痙攣だったり、関節の引っかかりだったりしたケースでは一回の治療で魔法のように痛みが消えることもあります。

でも、腱や靭帯、はたまた神経線維が今にも千切れそうなロープのようにボロボロになっていたらどうでしょう?

千切れた筋繊維から出血していたら?

それらが一回の治療で魔法のようにつながるでしょうか?
いくら揉んでも、いくら針を刺しても、いくら電気を流しても、その場で元通りの組織が出来上がることはありません。

痛みの原因にはどうやっても時間が必要となるものがあるんです。

一撃幻想はそんな当たり前のことを麻痺させてしまいます。

「あれ?まだ痛みが消えない…もっと治療の手をかければあるいは…」

となると、場合によってはかえって傷を深めてしまうケースも出てきます。

治療で一番に大切なことは、痛みの原因を見極める(推理する)力を持つこと
です。

競技をしていた頃、あちこちの「凄腕治療家」を紹介していただいては治療に通っていました。
食費を切り詰めて、すがるような思いで方々に通いました。

結果は誰も「一発」で治すことができず(無茶し続けてたので当然なんですが…)、そうした経緯から、治療業界に入ってからも一発で治るなんて端から考えていないつもりでした。

でも、今思い返すと「一回の治療で治る」を前提とした考えが

『あれ?なんでうまくいかないんでろう???』

の根っこにあったなと、

ドクターはそこを見抜かれていらっしゃったんだなと、
いま思い返しても気恥ずかしく、そしてありがたく思います。

ネットでは「一発で!」が相変わらず隆盛で、若手の技師向けのセミナー広告を観ても「魔法」のような装いの治療技術セミナーが氾濫しています。

これ、とても危なっかしいなって思うんです。

治療をする上で治療技術よりも大切なのは、その場の治療で痛みが消えないものに出会ったとき、痛みが消えない要因を読む(推理といってもいいでしょう)ことができるかどうかです。

「一回の治療で治す」を追いかけているとその力(臨床推論といいます)を養う機会が失われます。

ゆえに、「クイックフィクス(一回で治す)」は治療の世界では戒められる思考となるのだと思います。

このところ治療の動画を挙げているのには、そんなトレンド?への警鐘の意味も込めています。

端から正論を突き付けても「できない者のやっかみ」と思われるのがオチでしょうから、「やれるけれど、事実はそうではないですよね」というメッセージを込めて治療シーンを公開させていただいてます。


ご同業の先生方には映像よりも、ぜひ左側のお手紙に目を通していただけたら嬉しいです。

何を長々書いているのでしょうね(^_^;)

しかも偉そうに上から…(-_-;)

長文お読みいただきありがとうございました。

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