トヨタデイズ第四回  欧州向けに開発した「もっといいクルマ」が日本でも大ヒットしてるわけ
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トヨタデイズ第四回  欧州向けに開発した「もっといいクルマ」が日本でも大ヒットしてるわけ

●ヤリスの名前は違和感なく浸透しつつある

コロナ禍の始まる前、2月に発表されたためになんだかタイミング悪かったが、ヴィッツがヤリスと名を変えてモデルチェンジしたことは今年の結構大きなトピックだ。1999年、初代ヴィッツが出た時、ヤリスという世界共通の名前にしなかったのは、当時、日本語的になんだかイメージよくなかったからだと思っているが、クルマの名前なんて慣れればそう問題がないものだからヤリスで良かったはず。同じ頃、ホンダのパーソナルミニバンにS-MXなんてのも出たが、これなどは(ある効果を)わざと狙ってネーミングしたのではと当時は思ったものだ(このあたりいろいろご想像ください)。

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初代ヤリス(ヴィッツ)はワールドカーだったためなのか、どことなく作りも走りも国産車らしからず(なんとなくフランス車ぽくて)、日本ではリッターカーというクラス感を醸さない、初めて「大人の男性でも乗れる」クラスレスな印象のコンパクトカーだった。だからこそ世界で通じるヤリスという名前でいいのにと思ったものだが、まあヴィッツとして売れまくったから、良しとすべきか。その初代ヴィッツは個人的にも購入し、ずいぶん長い間足として乗った。1リッター4気筒NAは街乗りではそう不満はなかったが、やはり高速巡航は辛く、思えば現在の軽NAくらいの体感動力性能だった。

初代ヴィッツ・モーターデイズ試乗記はこちら

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それから数えて4代目となるこのクルマでいよいよヴィッツの名を捨てて、ヤリスとなったわけだが、このところトヨタは古い車名をどんどん抹消しようとしている。クラウンですらがいよいよなくなるということだが、つまりは世界に通用する車名で統一しようということだろう。絶対的な数が出ない日本専用の車種や車名はもう必要がないわけだ。コロナさえなければ今年は地元愛知・岐阜でラリージャパン2020が開催されたので、それに合わせてヤリスという名を大々的に広めるつもりだったのだろう。なにせ、ヤリスといえばラリーカーだから、ここで華々しい活躍をして、一気にヴィッツという名を葬り去るつもりだったはずだ。それはできなかったが、今の好調な売れ行きを見る限りは、すっかりヤリスの名は定着したように見える。

こちらはWRCカーをイメージしたGRヤリス

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●ほどよいパワー感で、軽快に走りを楽しめる

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ということで、ついにというか、やっとワールドカーのヤリスが日本でも売られたわけだが、車幅こそ日本向けに5ナンバー枠にやや狭められているものの、前席重視の室内空間はかつてのヴィッツの「小さくても広い」という商品訴求手法をすっかり方向転換している。広さより走りにその性格を振っているわけだ。ヤリスは素晴らしいシャシー性能となり、硬めの足、そしてパワフルな新型のハイブリッドシステムによって。それはそれは楽しい走りが満喫できるようになった。初代同様、まるで欧州車のようだ。(同じ試乗車の試乗記

いわゆる高性能なクルマはたくさんあるが、それらの性能を引き出すのには走りの場所を選ぶ。公道でアクセルをベタ踏みすることなどそうできるものではない。しかし試乗したヤリスは思い切りアクセルを踏めた。程よいパワー感とボディの剛性がうまくマッチしているから、楽しく操ることができるわけだ。ハイパワーを電子制御でコントロールしているクルマに乗せていただくのでなく、ローパワーを自分でコントロールした走りが楽しめる。この程度の走りの性能が普通の人が乗って楽しいクルマの上限ではないか、と運転オタクでないワタシは思う。

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初代とは違ってセンターメーターではないインパネもオーソドクスで、普通。でもって質感はお世辞にも高くない。そして昨今のクルマらしくナビ位置に関しては大変素晴らしい。これが欧州Bセグらいしところか。とはいえ、カップホルダー中心のデザインなどしてないから、工夫をこらしてある軽自動車の方が使い勝手がいい、と思ってしまうのは確か。背もたれを直立気味にして、スポーティなドラポジがとれるのも欧州車ぽい。というか、そのあたりはドイツ車っぽい。初代はセンターメーターでモダンなフランス車みたいだったが、ヤリスは王道のドイツ車ぽい。

20年前の初代のほうが未来っぽいインパネだと思う

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●広いクルマなら軽自動車がある。コンパクトカーは走りで勝負

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そんな欧州的なコンセプトゆえ、リアシートや荷室は狭いので使い勝手は良くはない。前席は不満ないが、リアドアは大きくは開かないから後席は乗り降りしにくい。「後席はおまけ」の2ドア車をむりやり4ドアにした感じだ。ドライバーの位置決め(センター寄せの重量配分)からしてとにかく走り優先の設計ということなのだろう。トヨタの「もっといいクルマ」というのはこういう方向のことなのだというのはわかるが、この狭さでは先代、先々代ヴィッツに乗っている人の代替え需要には応えられないと思われる。

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しかしまあそれでいいのだ。普通の走りができて、広さを求めるなら、日本の場合はもう軽自動車で十分で、あえてリッターカークラスを買う必要はない。であるならこのクラスは軽自動車とは圧倒的に違う走りを個性にしたほうがいいに決まってる。広さやユーティリティでヤリスを凌ぐ新型フィットがイマイチ苦しんでいるのはそういうことだろう。ホンダ車で広さやユーティリティを求めるなら、フィットよりN-BOXの方がいい。となるとコンパクトハッチバック車は軽ミニバンにはできない「走り」を売りにするしかないのではないか。

ヤリスで残念だったのはアダプティブクルーズコントロールが停止までフォローしてないところ。向上したという自動駐車システムなんかより、電動パーキングブレーキとオートホールド機能、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールは、今年最新のクルマであるならぜひ標準装備してもらいたかった。個人的にはこの部分だけで買う気をそがれるが、まだ今はそこまで一般ユーザーの需要は高まっていないと思うので、数年の間にマイチェンして装備してもらいたいものだ。

●全ディーラーが全車種を売れるのでトヨタ車祭りが始まった

20年10月の登録車ランキングではヤリスが一位(18,592台)になったが、これは8月末に追加されたヤリスクロスや、少ないとはいえGRヤリスも含まれた数字。それでも9月の販売実績ではヤリス単体の販売が66%というから10月も同じであれば12000台くらいは売っていることになる。この数字はつまり、トヨタの全ディーラーが売っているからだろう。ヴィッツの販売はネッツ店だったが、5月からトヨタディーラーの全車種扱い(東京都除く)により販売店が一気に増えた。そのため代替えではなく新規販売が増えたのだろう。営業マンが自分の持っている顧客にコンパクトカーをすすめるなら、もはや古くなったアクアやポルテ(スペイド)、そしてパッソではなくヤリスとなる。そういう新規の顧客ならリアの狭さも理解してもらえるはず。この販売数字はそうした動きを物語っていると思われる。

絶好調のヤリスクロス

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しかしこのランキング、見れば登録車の1位から6位まではすべてトヨタ車で、7位フィット、8位フリード以外ベストテンはトヨタ車で占められている。11位から20位まででも半分がトヨタ車。独禁法大丈夫かというような祭り事態だ。全車扱いによる凄まじい販売効果が出ているのではないか。トヨタ車はヤリスのように「もっといいクルマ」になってきたので、クルマ好きとしても買ってもいいと思えるようになった。しかし、売れるのがトヨタばっかりという状況もなんだか面白くない。クルマに限らずすべての商品が「選択と集中」でないと生き残れない時代らしいが、多様性、選択肢がどんどんなくなっていくのはつまらないと思ってしまう。まあそれも「バブリーな時代を生きてきたからですよね」と若い人に言われれば返す言葉がないのだが。

ちなみに第30回(2021年次)RJC カー オブ ザ イヤーはヤリスになったようだ。これもまあ「だからなに?」と言われてしまいそうだが。

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