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ハドソン川は見えるか?

65歩を埋めるために

「ハドソン川の奇跡」という映画が好きで、何度も観ます。
クリント・イーストウッド監督、トムハンクス主演の映画です。
バードストライク(鳥がエンジンに吸い込まれるトラブル)で、
機長のサリー(トムハンクス)がハドソン川に不時着水させたことを、
事故調査委員会が「判断が正しくなかった」と報告するのです。

ネタバレになりますので、このへんで止めますね。

関心が無さすぎたために、わずか65歩の距離を遠くしていた私は、押っ取り刀でその距離を埋めにかかります。

ハドソン川に不時着水できた風景を想像しながら、少しずつ母の家に入っていきました。

入浴介助とゴミ捨て

妻と娘が入浴介助に入ってくれました。直接肌が触れる入浴介助は、母の気持ちを変化させるきっかけになったようです。入浴の気持ち良さを思い出したことは、後のデイサービスでの入浴等の抵抗感を軽減することに繋がったはずです。

下関市は、ゴミの分別がなかなか厳しくて、6種類のゴミ袋を使い分けるのです。ゴミ捨てを担当した私は、その分別を一から覚えることになりました。


配食サービス

調理はほとんどできません。栄養の偏りを心配して、配食サービスを提案しました。しかし、「時間通り来ない」という理由で長続きしませんんでした。時間通り来ないということは無いと思うのですが、その内容と量と金額のバランスに馴染めなかったのだと思います。

仕方がないので、私がお弁当やおかずを買って持参することにしました。初めはコンビニでの調達が主でしたが、「体に良くない」と妻や娘に指摘され、賞味期限が短いスーパーマーケットでの品に切り替えました。

それでも、出来合いの物はパターンが決まってしまい、、さらなる工夫が必要になりました。

次に考えたのは、配食サービスをわが家に届けてもらって、一品二品何かを加えて、朝と夕との2食を届ける方法でした。これは、うまくいきました。喜んで食べてくれました。


デイサービス

昼食と入浴に関して不十分でしたから、デイサービスを提案しました。

おそるおそる行き始めたデイサービスでしたが、ある作戦が功を奏しました。それは、スケジュールの明示です。毎日、A4の紙に大きく翌日の予定を書いて壁に貼るのです。例えば、「◯月◯日、風呂」「お迎え△時ころ」といった具合です。

スケージュールが分かっているということが、彼女の安心に繋がったようです。時に、自分で書いて貼っていたこともありました。

このA4スケジュールは、徐々に枚数が増えていきました。


壁に貼ったスケジュール



通院

通院の介助が必要です。私も4週に1度、通院していますので、別のクリニックにかかっていましたが、思い切って転医をしました。私と一緒に通うのです。

信頼のおける先生で、検査結果を見ながら、「こりゃ息子さんより成績がいいやん」などと明るく話しかけてくださいました。

おかげで、デイサービスでの交流と相まって、自分が社交的であったことを思い出したようでした。


金銭管理

通帳の在り処が分からなくなったりしましたので、通帳の管理をすべて私がすることにしました。

初めのうちは、「残高は大丈夫かね」などと心配していましたが、最近では「任せるよ」と言い、心配しなくなりました。


ハドソン川

こうして、徐々にエンパワーされてきた母。

ハドソン川の風景は、私が見つけるのではなく、母が自分でイメージし始めたのを感じました。

妻の入浴介助から数えて、9ヶ月の時間を要しました。


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