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"ミャンマーの現在と、日本の移民を考えよう" 「僕の帰る場所」上映会@江原河畔劇場

”ミャンマーの現在と、日本の移民を考えよう”と題し、ミャンマー日本合作映画「僕の帰る場所」上映。ミャンマー仏教が専門の京都大学東南アジア地域研究研究所の川本佳苗先生を上映後にお招きし、「ミャンマーの現状について」お話を伺った。

1)映画で描かれているミャンマーの人々の世界

ミャンマーの大学で仏教を学んだ川本早苗さん。ミャンマーで長く暮らした経験から、この映画に共感する点も多いと言う。

(以下、川本先生)
ミャンマーの方々は愛国心が強い傾向があります。映画の中で描かれるお母さんのように、ミャンマーに帰りたくて体の調子を壊すというのもよく分かります。他方で、日本で育った子どもがミャンマーで暮らすことになっても中々馴染めないというのもしっくりくる。生活環境が全然違うので、私も初めてミャンマーで暮らし始めた時、とても苦労しました。

宗教的な観点からもよく描かれていると思います。

ミャンマーから日本に移った家族が毎朝仏壇に手を合わせているシーンがありますよね。ミャンマー人のほとんどが仏教徒で毎日お経を読んでいて、曜日ごとに読むお経が違っていたりもするんです。

難民申請を断れるシーンがありましたが、軍事政権中に日本へ移民してきたミャンマー人のほとんどは政治難民でした。軍事政権に反抗して居辛くなった、あるいは1988年の大学生デモに参加した人が日本へ移民したケースが多いです。

石原元都知事が2007年ごろに、2016年以降の東京オリンピック誘致計画を構想していて、不法外国人を積極的に摘発した時期があったんです。残念ながら、その時に捕まって国に帰らざるを得なくなったミャンマー人が多かったと聞いてます。

2)ミャンマー軍による市民弾圧の現状

連日ミャンマー軍による市民弾圧のニュースを耳にするが、ミャンマー滞在経験のない人々にとっては、想いを馳せることは中々難しい。前提条件などを共有するために、上智大学教授で東南アジア近現代史が専門の根本敬先生が中心となり制作された短い動画(約10分)を会場で上映した。ミャンマーの現状と政治的な背景が分かりやすく解説されている。
※下記からフルバージョンが鑑賞できます。

(以下、川本先生)
今は、意図的にミャンマーの映像などをあまり観ないようにしているんです。心が苦しくなるから。仕事も手につかなくなってしまう。なので、最新の情報などはあまりお伝えすることが出来ないんです。

昨年の11月にミャンマーで選挙があって、私も注視していました。バイデンvsトランプのアメリカ大統領選挙と被っていたので、世界からはあまり注目されていませんでしたが。

この選挙でアウンサンスーチーさんが圧勝した訳ですが、その後”不正選挙”を行ったとして投獄されてしまいます。でも、私は”不正選挙”とは言い難いと思うんです。東京に住んでいるミャンマー人の友人たちも、アウンサンスーチーさん率いるNLD(与党・国民民主同盟)に入れようねと事前にSNSで団結していたそうです。「みんなでNLDに投票しようね」と団結していたことを、不正だということは難しいのではないでしょうか。

ミャンマーの人たちは「自分たちの国を良くしたいから、アウンサンスーチーさんに賭けてるから、願ってるから、みんなでNLDに投票しよう」と団結していたと聞きます。

それから、ミャンマーの友人がこんなことを言ってました。

「今は家の中に軍が入ってきて銃で撃ち殺してきます。つまり、家の中にいても、路上に出ても殺される状況です。でも、どうせ死ぬならデモに参加して死にたい。だから、ミャンマー人はデモに参加してるんです。」

これを聞いて、私はとても悲しくなりました。

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3)会場からの声

最後のQ&Aでは時間ギリギリまで沢山の質問や感想が飛び交った。豊岡在住のミャンマーの方からも感想が述べられた。

「上映会の開催、ありがとうございます。今、ミャンマーは大変なことになっているので、私のような海外に住んでいるミャンマー人たちも、出来るだけミャンマーをサポートしようとしてます。」

6/2, 5の上映会で合計100名ほどのお客様にご来場頂きました。

次回は7/21(水)、7/24(土)にドキュメンタリー映画「愛と法」の上映会を開催します。詳細は下記からご覧いただけます。

(レポート作成:歌川達人 / 写真:堀内遥友・友金彩佳)

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2021年6月5日 土 14:00 17:30
会場:江原河畔劇場
主催:豊岡劇場、豊岡映画センター
料金:大人1,500円 / 大学生1,000円 / 高校生以下無料
各上映後、京大東南アジア地域研究研究所 連携講師でミャンマー仏教がご専門の川本佳苗さんによるトークイベント開催
豊岡映画センター toyooka.eiga@gmail.com
【「僕の帰る場所」のあらすじ】
東京の小さなアパートに住む、母のケインと幼い二人の兄弟。入国管理局に捕まった夫アイセに代わり、ケインは一人家庭を支えていた。日本で育ち、母国語を話せない子ども達に、ケインは慣れない日本語で一生懸命愛情を注ぐが、父に会えないストレスで兄弟はいつも喧嘩ばかり。ケインはこれからの生活に不安を抱き、ミャンマーに帰りたい想いを募らせてゆくが——。
世界的な関心事項である”移民“という題材を、ミャンマーでの民主化の流れや在日外国人の家族を取り巻く社会を背景に描く。出演者の多くには演技経験のないミャンマーの人々を多数起用。まるでドキュメンタリーを思わせる映像は、ミャンマー人一家の生活を優しく見守りつつ、彼らが置かれた厳しい環境をありのままに映し出すシビアな眼差しで貫かれている。
・東京国際映画祭2017 アジアの未来部門作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞
・オランダ・シネマジア映画祭2018コンペ部門など10以上の国際映画祭で上映

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