小論文(意見文)を書く手順 〜いきなり原稿用紙に書いてませんか?〜
小論文が苦手な人は○○○○がわかっていない
小論文に向き合うたびに「何書いたらいいのかわかんない…」「どう書いたらいいのかわかんない…」と悩んでいませんか?
これまで小論文が苦手な人をたくさん見てきましたが、ほとんどの人に共通する原因があるんです。
それは、採点基準がわかっていない ということ。一問一答タイプの問題と違い、唯一の正解が用意されていない小論文は、「字数埋まってたら何でもOK」というものではありません。採点をするときの基準がいくつか設けられていて、それを一つひとつクリアして初めて点数をもらえるのです。
小論文でマルをもらうには?
小論文の採点基準を把握するために、まずは作文と小論文の違いをわかっていなくてはなりません。
作文 →出来事や体験について思ったことや感じたことを文章にして書く。
小論文 →お題に対する主張をして、読み手を納得させる文章を書く。
小論文はいかに読み手を納得させられたかが大事になります。だから、作文のように個人的に思っているようなことを書いたり、根拠もなしに好き勝手に自分の考えを書いたりしてはいけません。
小論文には、お題に対する自分の意見と、その意見を納得させられるだけの材料(根拠、説明、具体例)が必要になります。
採点者が読んだ時に「これがお題に対する意見だな」「この部分が根拠になっていて…」「なるほど、根拠をもとにどう考えて意見を導いたのかをこの段落で説明しているのか。そして直後に具体例を置いているのね。」と、わかるような書き方を心がけましょう。これら4つの要素がどこにあるのか明確にわかる書き方をしていれば、「よし、小論文に欠かせない要素が揃っているね」と最初のマルがもらえます。
これら4つの要素をそろえた型を「PREP(プレップ)」といいます。
実はこのPREPの型に合わせて書くだけで、ほとんどの小論文でマルをもらえるのです。その理由は2つ。
①世界的に王道な型の一つだから、読み手も意識しやすい。
世の中には様々な文章の型がありますが、PREPもそのうちの一つ。というか、実はわかりやすい小論文・説明文はほとんどがこの型に合わせています。この型で書いてると、小論文を読み慣れている人はすぐに「あ、PREPの型だ」と気づくのです。早く気づいてもらえる分、確実に4つの要素を拾ってもらえるのでマルをもらいやすくなります。
②最初に結論があるから、後の文章を納得してもらいやすい。
結論を先に書くということは「私はお題(テーマ)に対して○○な立場です」と先に断言するということ。いわば、あなたの話のゴールが先に示されているようなもの。ゴールが先に示されていれば、読み手はどこに着地するのかわかった上で読むので、うしろの文章を納得するための材料として拾いながら読み進めていくことができます。
結論を先に述べないと、「この人はどんな意見を導くんだ…?」と考えながらモヤモヤしながら読むことになり、不信感を抱かれやすくなるので気をつけましょう。
(例)たとえば「飲食禁止の自習室に飲食物ゴミの置き捨てが多い。」と述べた後だと「だからゴミ箱を設置すべきだ〔結論〕」とも「ゴミ箱を設置すると飲食を認めたことになるからゴミ箱は設置すべきでない〔結論〕」とも結論づけることができる。読み進めていかないと、書き手のあなたがどういう結論を出すのかモヤモヤしながら読み進める形になってしまう。
逆に「〔結論〕自習室にゴミ箱を設置すべきだ。」「〔理由〕なぜなら自習室にゴミを置き捨てる人がいるからだ。」という流れならゴール〔結論〕をわかった上で読み進めて〔理由〕を拾うことができるから、最初から安心して読み進められる。
というわけで、最初に結論を述べるPREPの型が小論文ではとっても有効になります。Point(意見)、Reason(理由・根拠)、Example/Explain(具体例・説明)、Point(意見の再提示)の型を心がければ、小論文で一番大事な部分をおさえたことになるので、まず大きな点数をもらうことができます。
※ちなみに「起承転結」は物語などをつくる上では有効な型ですが、納得感が求められる小論文では不適切なんです…。「起承」→「転」で読み手を裏切ることになるので、採点官の不信感を抱きやすいです。意外性やインパクトは強い印象を植え付けることもできますが、納得感につながるかどうかは保証されませんので、気をつけましょう。
段落構成はどうしたらいい?
さて、小論文を書く上でPoint(意見)、Reason(理由・根拠)、Example/Explain(具体例・説明)、Point(意見の再提示)の型で書くのがいいということがわかったところで、次に気になるのが段落構成だと思います。
結論からお伝えしますと、段落の数は2〜4段落で、P→R→E→Pの順で書くのが最もオススメです。一番わかりやすいのは、P・R・E・Pで一段落ずつ設定して合計4段落にする構成なのですが、全ての小論文でうまくいくとは限りません。お題や字数制限によっては4段落構成だとやりづらいことも。
ただP→R→E→Pの順が最も採点官に伝わりやすい順番であることは間違いないので、この順番を崩すのは得策ではありません。だから、この順序を崩すことなく、時に一つの段落に2〜3つを詰め込みながら調整するのが最善手となります。(ちなみに最後のP〔主張の再提示〕は省略しても構いません。大事なのは意見、根拠、説明・具体例です。)
(例)
①(P)結論+(R)根拠 ②(E)説明+(E)具体例 ③(P)再主張
①(P)結論 ②(R)根拠+(E)説明 ③(E)具体例 ④(P)再主張
①(P)結論+(R)根拠 ②(E)具体例+(E)説明 などなど
小論文における理想的な書く手順
小論文において欠かせない要素(PREP)と段落構成(2〜4段落)がわかったところで、次は実際に小論文に取り掛かるときの手順を学びましょう。
小論文にとりかかるときの手順は、次の5ステップが理想的です。
問題文を読んで、何を書くかを考えたあとにいきなり原稿用紙に書いたりしていませんか?残念ながら典型的な負けパターンです。
いきなり原稿用紙に書き始めた時点で、頭の中に文章の最初から最後まで何を書くかのビジョンはありますか?800字とか1000字の内容を頭に思い浮かべながら書けるはずがありません。おそらく「まず一文目を書いて、次にその一文目からスムーズにつながるように二文目を書いて…」と書き進めていくと思うのですが、これはゴールや全体像を見ていない書き方です。文と文のつながりは自然だけど、全体的に何を言っているのか分かりづらい文章ができあがってしまいます。
小論文で大事なのは、読みやすいかどうかではありません。文章全体で納得感を得られるかどうかです。全体像を意識しながら書くのが大切なので、最初にするべきは「メモ」による全体像の作成です。上記画像の通り、小論文を書くステップは5つありますが、1〜4はメモなんです。仮に試験が60分なら、40分はメモに費やしても構いません。実際にやってみるとわかるのですが、書くべきことが定まっていてあとは書き写すだけという状態なら、800〜1000字は15〜20分で書き終わります。
逆に、無計画に原稿用紙にいきなり書き始めてしまうと、書き進めていく途中で「うわぁ、こっから先なんて書こう…」と手詰まりになってしまうことがよくあるはずです。文と文の自然なつながりを意識して書き進めてしまうと、着地点を意識しない文章になってしまいます。ぜひメモをとるようにしましょう。
ここからは1〜5のステップについて簡単に説明します。
1、問題分析
問題自体の分析が最初のステップです。「問題の分析?」と思った方は、ちょっと危険です。問題自体の分析を行わないと、大幅減点の危険性があります。
たとえば「あなたの地域を活性化させる方法を考えて述べなさい。」というお題が出された時に、「私は地域活性化のために、子どもからお年寄りまで全員が参加するボランティアをするのが良策だと考えます。」という意見や「私は、地元の農産物を使った料理メニューをその地域の飲食店で出せば地産地消に繋げつつ地域活性化ができると考えます。」という意見がよく出てくるのですが、これらの意見(Point)を読んだ採点官はまずこう思います。
「"あなたの"地域」はどういうところなの?
子どもからお年寄りまで全員参加のボランティアを提案したはいいものの、お年寄りばかりの集落で子どもがいなかったらこの意見は成立しません。地元の農産物を使う施策は、工業地帯で農産物が生産されてない地域では通用しません。
問題文に「あなたの地域を」とあるのですから、まず最初に「あなたの地域」がどういうところなのかを明らかにしないと、あなたの意見は成立しないのです。
このように、問題文を分析して「何を答えるべきなのか」を明らかにしないと、読み手(採点官)の頭の中が「?」でいっぱいになってしまいます。かならず問題文をよく読み込んで「何を答えるべきなのか」を分析するようにしましょう。
2、意見作成
何を答えるべきなのかがわかったら、自分の意見(Point)を最初に作りましょう。このときのコツは思いつく意見をすべて書き出してみることです。なぜなら、採点官は「良い意見かどうか」ではなく、「文章全体で納得感があるかどうか」をもとに点数を決めるからです。
意見やアイデア自体ではほとんど点数はつきません。思想・良心の自由が憲法で保証されてるわけですから「この考えは✗!」と人の考え自体を否定するのは難しいのです。どんなにささやかな意見でも、納得させられる材料(根拠、説明、具体例)があれば、しっかりした考え方としてマルをもらえます。逆に、自分も採点官も「これは良いアイデアだ!」と思えるようなものであったとしても、「でも根拠がないなぁ…」となると大きく減点されてしまうのです。
つまり、小論文を書くときには「根拠、説明、具体例もセットで用意できる意見」を書く必要がある、ということになります。一番良い意見でも根拠が用意できないなら諦めましょう。二番目・三番目に良い意見でも根拠や具体例が豊富に出るなら充分です。だから、後から根拠・説明・具体例が思い浮かぶかどうかがわからない以上は、最初に思いつく限りの意見を挙げるのが非常に大切になるのです。
3、材料考案
思いつくだけ挙げた意見に対して、根拠や説明や具体例をたくさん思い浮かべましょう。このときに、自分の意見に関係のある内容はどんな些細なものでも書き留めるようにしましょう。些細な思いつきでも、それを見てさらに良いアイデアが思い浮かぶことがあります。
そして根拠や説明や具体例を一通り用意したら、一度「根拠→意見が、ちゃんと他者が納得できるものになっているか」を確認するようにしましょう。自分の中では根拠(理由)になっていると思っていても、他人からしたら「なんでそれが理由になるの?」というのはよくあります。
(例)
A「若者世代の人口流出が多い私の地域では、若者が地元で働きたくなるように、起業家を育成するプログラムで地域活性化をはかるのが良いと考えます。なぜなら若者がやりたい仕事を若者自身が創出すれば若者が地元で働きやすくなるからです。」
B『え?全員が起業しても会社が乱立するだけじゃない?』
C『いやいや、起業する力を身につけて他県で起業する人も出てくるでしょ?』
というような感じで、自分(Aさん)の中では筋が通っていると思えても、他者(BさんCさん)からはそうは思えないなんてことが充分にありえます。本当に「根拠→意見」の筋が、他人から見て納得できるものになっているかを確かめましょう。
4、構成考案
これはすでに説明したとおり。P→R→E→Pの順で2〜4段落で書くようにしましょう。ここまで思いついて書いたメモを並べ替えて、どのような順番で述べればいいのかを検討しましょう。
一つだけ留意していただきたいのは、一つの段落にあれこれと詰め込まないことです。日本だろうが海外だろうが、一つの段落では一つのことを伝える(一段一義)という原則があります。当然採点官もそのつもりで読み進めるので、一つの段落であれもこれもと述べていると、読み手を混乱させる文章として減点されてしまいます。気をつけましょう。
※ちなみに、小論文に慣れてきたらPREPの段落構成を崩して自分の好きなように書いても構いません。読み手がP(意見)とR(根拠)とE(説明・具体例)を拾えるのならばどんな構成でも構いません。
5、原稿清書
1〜4をメモ書きとして完成させているのなら、あとはほとんど原稿用紙に書き写すだけの段階です。次の3点に気をつけて清書しましょう。
①「〜です。〜ます。」または「〜だ。〜である。」と文末表現を統一する。
→どちらの文体でもマルをもらえますが、統一されてないと減点されるので注意しましょう。迷ったら字数を消費しづらい「〜だ。〜である。」がおすすめです。
②読み手が正確に理解できるかを常に気にする
→文章を書いた自分は自分の文章を違和感なく読めます。それゆえに無意識に語句を省略してしまったり、いろんな意味に解釈できる文を書いてしまったりしてしまいがちです。他人目線で自分の表現を常に見直すようにしましょう。
③一文は簡潔に書きあげて読み手に頭を使わせない文を書く
→一文が長いと、読み手は頭の中で内容を整理しながら読むことになり、それだけで「わかりづらい」という印象をもたれてしまいます。一文にいろいろな情報を詰め込まずに、一文で一つの情報を伝えるように心がけて、簡潔に書き上げましょう。
小論文上達のためのおすすめ記事
ここまで小論文において大切になるポイントをいくつか伝えてきました。でも、まだまだ伝えきれていないことがたくさんあります。さらに深く学びたいという方向けに、おすすめの記事を掲載いたします。
(1)小論文を書く手順 〜実践編〜
→当記事で紹介した小論文の書き方を実際の問題で実践したらどうなるのかを解説している記事です。
(2)小論文の採点基準と上達指導法 〜序論・本論・結論の型で指導してませんか?〜(後日執筆)
→教育関係者向けに、小論文採点シートの項目(採点基準)を公開しつつ、生徒に実際に小論文を指導する際に大切になる考え方を解説しています。
小論文は「この通りにやれば正解できる」というものがありませんが、今回お伝えしたポイントをもとに練習を重ねていけば、「こう書けば採点官はマルをくれるだろう」と手応えを感じられるようになります。ぜひ頑張って取り組んでみてください。