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「ゴールデン・ジョン」

「何卒、お力添えを……」
 人里離れた山林のあばら家で、三人の男が土下座で懇願した。彼等は領主が遣わした使者と、その護衛だ。
 過日、領主の娘が誘拐された。犯人達は身代金を要求したが、激憤した領主は討伐隊を雇い、犯人達を皆殺しにする事を決めた。
 だが……結果は失敗。討伐隊は壊滅し、身代金は倍に上げられ、あと三日以内に応じなければ娘は惨殺される。
「もはや猶予は無く、二百人の討伐隊を返り討つならず者達を相手取れるのはあなたしかおりませぬ」
 囲炉裏を挟んで対面に座するは、このあばら家の主。身長はおよそ六尺半、衣服は褌と狼の毛皮、強靭に鍛えられた筋肉は熊を彷彿とさせる。そして……彫りの深い顔つきに金の短髪と青い瞳。異国の人間だ。
 彼を知る者は、金の髪から彼をこう呼ぶ。「金太郎」と。
 金太郎は静かに立ち上がり、壁に掛けられた巨大な戦斧を掴むと――目で追えぬ速度で振り下ろし、囲炉裏を破壊した!
「……帰れ!」

【続く】

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