見出し画像

フクシア

あなたがいてくれたから
腐らずにここまでやってこれました
この声が届くことはないけれど
願わくばあなたが幸せであることを空に歌う


それは晴天の春 二度目の苦しい朝に叩き起こされ
あんなに悲しい目覚ましはもう二度と聞きたくない
白い白いこの部屋は白百合の花畑のように
神秘的で でも残酷で
無慈悲な機械音が私を責める

行かないで 皴の寄る冷えた手に惨めに涙と縋り付く
行かないで この言葉が ただの甘えた私が
あなたにバレないように下を向いて静かに泣くの

土砂降り心を嘲笑う それは晴れやかな空でした


果たす約束の時 隣に乗ったのは骨になったあなた
こんなに悲しいドライブはもう二度とないでしょう
ワインレッドのこの車は彼岸花にもなれずに
狂気的で でも優しくて
懐かしい民謡があなたを送る

泣かないで 金に飾るこの箱に悲しく涙が溢れ出る
泣かないで この涙が ただの甘えた子供と
あなたを困らせてしまうから強くハンドルを握る

焼ける匂いが心を裂く それは意地悪な青空でした


あなたがいてくれたから
私は真っ直ぐでいられました
あなたがいてくれたから
私は強くいられました
あなたを失ったあの朝は
私の弱音など聞ける人もなく
あなたを失った苦しみは
今も私の心を疼かせます

それでもあなたと出会えた幸せが それが何よりの真実でした

願わくばこの歌が響いてあなたの元へ、なんてね 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?