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【おいしい粉雪】毎週ショートショートnoteお題『会員制の粉雪』より

その男はショーウィンドウに目を止めた。中で粉雪が降り出したからだ。
そこへ店舗のオーナーが来た。
「美しい粉雪でしょう」
「冬服を展示するにいい演出だ」
「商品は粉雪なんです」
「粉雪?」
男はオーナーに促され、店内に案内された。天井から粉雪が降ってくる。刹那、ふわっと甘い香りが漂ってきた。オーナーが口を開け粉雪を味わっている。
「さあ、あなたも」
男も口を開け粉雪を味わった。
それは甘美で濃厚な味わいだった。
「これは、きっと繁盛しますよ」
「ええ、会員制にしようと考えています」
男はその日に会員になった。
商品名は『アノ粉雪』だった。

開店後、予想通りの大反響でオーナーの予想以上の会員数になった。が、数日後、閉店した。会員は残念がったが、無料会員なので誰も文句を言わなかった。

オーナーは新たな店舗をオープンした。有料会員制洋菓子店だ。
店頭の看板にはこう書かれていた。
〈原料にアノ粉雪を使用しています〉



たらはかにさん企画
毎週ショートショート
お題『会員制の粉雪』より

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