豊丸晃生|ショートショート

星新一(ショートショートの神様)に刺激されてからショートショート書いています。400字程度の作品多めでサクッと読めます。お笑い好きで怪談も好きな関西人です。よろしくお願いします。

豊丸晃生|ショートショート

星新一(ショートショートの神様)に刺激されてからショートショート書いています。400字程度の作品多めでサクッと読めます。お笑い好きで怪談も好きな関西人です。よろしくお願いします。

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400字のショートショート

【スターグラス】 天使のメガネ職人は考えました。サングラスがあるならスターグラスがあったら面白い。サングラスが光を遮るなら、スターグラスは星が心を照らすメガネにしよう。 長年の歳月をかけスターグラスは完成しました。天使は下界に降りて必要な人間にそれを与えました。 夜。崖に立っている男がいました。就活に疲れ、生きることに疲れたのです。いつのまにか彼の胸ポケットにメガネがあることに気付きました。 『star glass』と刻印されています。彼はそれを掛け夜空を見上げました。

    • 【モンブラン失言】#毎週ショートショートnote

      モンブラン伯爵。あなたがあんな失言するとはね。ショックだったわ。スイーツ王国でその発言は禁止されているはず。 「たまには餃子食ってビール飲みてぇな」 まったくの大失言だわ。王様は許してくださったけど、カスタード・プリンセスの私に容赦はないの。そんな心持ちでスイーツ王国の伯爵でいられる道理がないわ。もうこの世界には必要ないわけ。どうするって? そうねえ、このまま消費期限切れにして廃棄処分、なんてのもいいわね。でも、もっといいもの見つけちゃった。これ、なんだと思う? 口が塞がれて

      • 【誘惑銀杏】#毎週ショートショートnote

        近ごろ胃腸の調子が良くない。ストレスのせいだろう。俺は会社帰り、公園のベンチで休んでから帰宅することにした。そこには大きな銀杏の木が二本あった。その傍のベンチに腰かけ黄昏に染まる景色を眺めていると、背後から女の声がした。 「胃腸が悪そうね」 振り向くと神々しいほどの美女だ。 「なぜそれを?」 「私は銀杏の妖精。胃腸ことならまかせて、銀杏だけにね」 そういえば妖精っぽい姿をしている。二本あったはずの銀杏の木が一本消えていた。これは妖精のようだ。 「いい男ね。つきあってあげてもい

        • 【祈願上手な男】毎週ショートショートnote

          その男は無人駅を降りた。空は晴れ渡り雲一つない。見知らぬ村の林道を行くと、砂利道になった。その先に鳥居が現れた。鳥居を潜り抜けた刹那、空に光の玉が浮遊しているのを男が見やった。いや、光は空に貫かれた穴で、穴から突き抜けてきたのは、龍だった。龍には何者かが乗っていた。凄まじいスピードで龍を縦横無尽に操り、鳥居を潜り抜けると、砂煙を巻き上げ、巨木が横たわる如く男の前で動かなくなった。その上から見下ろす女は、神々しい美貌で、肌の露出が多い妖艶な鎧を纏っていた。妾は、この村の氏神、毘

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        400字のショートショート

          【トラネキサム酸笑顔】毎週ショートショートnote

          軽トラに乗った男が、メガホンで呼びかけながら、街をのろのろ走行していた。 「トラネキサム酸笑顔いかがっすかぁ〜止血に炎症、鼻血に効いちゃうよ〜、はやく来ないといっちゃうよ〜ん」 その家族は、それを聞いていた。 「あなた! 健ちゃんの鼻血が止まらないの、あの人呼んできて」 夫は手を挙げ車を止めた。 「まいど。トラネキサム酸笑顔をご利用で」 「息子が鼻血を出して止まらないんだ」 「鼻毛を出して止まらない?」 「バケモンか、うちの息子」 「冗談ですよっ」 「いい

          【トラネキサム酸笑顔】毎週ショートショートnote

          【猫の宝石店】 400字の物語

          猫の宝石店がリニューアルオープンした。あの猫の額ほどしかなかった店が、今や猫の手を借りたいほどの大盛況だ。 真珠のネックレスが豚に大人気だったことから噂が広まり、猫の宝石店は、世界的ジュエリーショップとして有名になった。支払いも小判からキャッシュレスになった。 有名になると、客も増える、客が増えると、猫手が足りなくなってきた。猫店長は、東京ネズミーランドにいる猫の従業員をスカウトすることにした。 猫の宝石店は益々成長し、猫ホールディングスという大企業になった。猫店長は猫

          【猫の宝石店】 400字の物語

          【レトルト三角関係】毎週ショートショートnote

          僕は試食のバイトをしている。 職場に着くと、担当の西山さんが、手招きしていた。西山さんはスタイル抜群の美人だ。 「山下くん。今日はカレーだよ」 「レトルトカレー? ですね」 パッケージには『三角関係』と書いてある。 「具材は牛肉、豚肉、鶏肉なの」 「で、三角関係か」 僕はそのカレーライスを食べた。口の中で牛、豚、鶏が主張してくる。こうなると旨味を消しあってしまう。僕は、その感想を伝えた。 「そっかぁ……残念。これ私が企画したの」 えっ! 最初っから言ってくれれば、もっと褒め

          【レトルト三角関係】毎週ショートショートnote

          【おいしい粉雪】毎週ショートショートnoteお題『会員制の粉雪』より

          その男はショーウィンドウに目を止めた。中で粉雪が降り出したからだ。 そこへ店舗のオーナーが来た。 「美しい粉雪でしょう」 「冬服を展示するにいい演出だ」 「商品は粉雪なんです」 「粉雪?」 男はオーナーに促され、店内に案内された。天井から粉雪が降ってくる。刹那、ふわっと甘い香りが漂ってきた。オーナーが口を開け粉雪を味わっている。 「さあ、あなたも」 男も口を開け粉雪を味わった。 それは甘美で濃厚な味わいだった。 「これは、きっと繁盛しますよ」 「ええ、会員制にしようと考えてい

          【おいしい粉雪】毎週ショートショートnoteお題『会員制の粉雪』より

          【夜光列車】毎週ショートショートnoteお題『夜光おみくじ』より

          その男はギャンブラーだった。 黄昏に田舎町の廃線を歩き続け、トンネルを抜けると、黒い緞帳が降りたように夜になった。刹那、向こうから妙な列車が男に迫ってきた。夜光虫を纏ったような光を放ちながら、列車を牽引するその車両は六角柱で、まるで神社にある「おみくじ」そのものだった。 「あれが夜光列車か」男が呟く。 列車は男の傍で急停車した。衝撃でガラガラと何か混ざり合う音が車両内から聞こえたかと思うと、牽引車両の扉が開いて、白装束の老人が降りてきた。 「切符は魂。いいかね」 「ああ、その

          【夜光列車】毎週ショートショートnoteお題『夜光おみくじ』より

          【ルールを知らないオーナメント】毎週ショートショートnote

          そのオーナメントはルールを知らない。恋人たちにとっての。 夜空に無数のドローンが舞い上がった。 そのイルミネーションは高速で集結、飛散を繰り返し、星、クリスマスツリー、トナカイに夜空を飾った。 恋人たちはその光のショーに呆れた。もうクリスマスは終わったのだから。 ビルの屋上で、二人のカップルが寄り添っていた。 ドローンがサンタクロースの姿を描いていく。 「クリスマス、もう終わってるんですけど」 「これ作んのに、間に合わなかったんだ」 「ちゃんとルール守れよ、大イベントなの

          【ルールを知らないオーナメント】毎週ショートショートnote

          【台にアニバーサリー】毎週ショートショートnote

          俺は人生を全うし黄泉の国へ来ていた。 そのパチンコ台は、まるで高層ビルのように聳え立っていた。中央にある液晶画面には、anniversary(アニバーサリー)という文字が表示されていた。 「こちらへ」と俺を待っていた天使がパチンコの入口へと促す。 そこには無数のパチンコ玉が煌めいていた。その球体の表面は銀色に輝くカプセル状の乗り物だった。 「どれを選ぶかで、来世の人生が決まるのです」 「ギャンブル好きな俺にはお似合いだな」 俺は一つの玉を選んだ。近づくと徐に玉のハッチが開いた

          【台にアニバーサリー】毎週ショートショートnote

          【呪われたスマホ】毎週ショートショートnoteお題『白骨化スマホ』

          その廃屋に呪われたスマホがあるという。持ち去った人が、白骨化するらしい。 大阪のオカルト雑誌『怖い念』の編集長と霊媒師のマツコは、現地へ向かった。 大正時代に建立された洋館は、廃屋とはいえ芸術的で壮観だった。 「マツコ。この取材に来させた意味がわかるか?」 編集長はマツコの巨体を見ながら言う。 「あたしのカラダで検証させたいんでしょ。承知の上だわ」 編集長は館内の書斎に妙なスマホを見つけた。 「間違いない。画面の裏側に骸骨の絵が描かれている」 二人はそのスマホを社に持ち帰

          【呪われたスマホ】毎週ショートショートnoteお題『白骨化スマホ』

          【助手席の異世界転生】毎週ショートショートnote

          その駅前にある魔法陣に足を踏み入れると、タクシーが現れた。異世界転生タクシーだ。竜の行燈がそれを表している。 徐に助手席のドアが開いた。 「まいど」とチンパンジーの運転手がニカッと白い歯を見せる。運転手はチンパンジーに決まっているらしい。 「今日は竜と戯れてみたいな」 「ドラゴンマスターなんてどうです」 「よし決まり」 タクシーは舞い上がり空を駆ける。意識が暫く奪われ、俺は竜の立髪を掴んでいた。竜の頭上にいるのだろう。 『おまえが竜使いか』 「ああ、そうだ。散歩でもしないか

          【助手席の異世界転生】毎週ショートショートnote

          【強すぎる数え歌】毎週ショートショートnote

          大阪の雑誌『怖い念』の編集部に投稿があった。地方にある廃屋から数え歌が聴こえるらしい。聴いた者は取り憑かれるそうだ。編集長と部下、霊媒師は取材に向かった。 現地に着いたのは丑三つ時。 数分後、部下が一人寝室に入った刹那、女の歌声が聴こえてきた。 いち、にい、さんまのしっぽ、ゴリラのむすこ、なっぱ、はっぱ、くさった、とうふ…… 部下は寝室から飛び出して発狂し卒倒した。取り憑かれたのだ。 編集長は霊媒師に除霊を任せた。 「かなり強い怨念だ。私では…」 「どうすれば?」 「

          【強すぎる数え歌】毎週ショートショートnote

          【秋の腹時計】毎週ショートショートnoteお題「秋の空時計」をSFで。

          その男は空腹だった。空に浮かんだ雲さえうまそうに見えた。腹時計がぐぅぐぅ鳴る。 「食欲の秋だな。ランチは何を食べようか」そんなことを言いながら雲を見ていると、赤く光る数字のような文字が浮かんできた。目を凝らすとデジタル時計に見えた。 【0:00】 腕時計を見ると丁度その時刻だった。 「ほう、空時計か。秋の空時計、なんだかロマンチックだな」そんなことを言いながら雲を眺めていると、雷みたいな音が聞こえてきた。というより腹時計が鳴っているような音だった。 雲はだんだん男に迫っ

          【秋の腹時計】毎週ショートショートnoteお題「秋の空時計」をSFで。

          【なるべく動物園】#毎週ショートショートnote参加作品

          よく当たる占い師がいる。と、会社の同僚から聞いて、駅前の商店街にある占い館に行ってみた。 店内はエキゾチックな装飾で異国のようだ。奥に進むと、大きな水晶を前に鎮座する女が俺に笑みを向けた。 「どうぞお座りになって」 「よろしくお願いします」 「この水晶は宇宙からの波動を受け取り、幸せな未来へと導いてくれます」 占い師は水晶を撫でながら告げた。 「『なるべく動物園』と水晶からメッセージが届きました」 「なるべく動物園?」 (水晶を凝視する占い師) 「見えてきま

          【なるべく動物園】#毎週ショートショートnote参加作品