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【台にアニバーサリー】毎週ショートショートnote

俺は人生を全うし黄泉の国へ来ていた。
そのパチンコ台は、まるで高層ビルのように聳え立っていた。中央にある液晶画面には、anniversary(アニバーサリー)という文字が表示されていた。
「こちらへ」と俺を待っていた天使がパチンコの入口へと促す。
そこには無数のパチンコ玉が煌めいていた。その球体の表面は銀色に輝くカプセル状の乗り物だった。
「どれを選ぶかで、来世の人生が決まるのです」
「ギャンブル好きな俺にはお似合いだな」
俺は一つの玉を選んだ。近づくと徐に玉のハッチが開いた。俺はシートに座る。ハッチが閉まりカウントダウンが始まった。
10、9、8、7、……
【0】で天使がパチンコのレバーを捻ると、凄まじい勢いで打ち上げられた。
玉は上層部の釘に打ち付けられ、右へ左へ流れ落ち、チャッカーの穴に吸い込まれた。
anniversaryの文字が誕生日に変わった。

目が覚めると母親の温もりに抱かれていた。



たらはかにさん企画
毎週ショートショートnote
お題「台にアニバーサリー」より

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