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2024 年は国政選挙の年 世界の半分以上の人口が住む国々で国政レベルの選挙が実施される!

 本日翻訳して紹介するのは、1 月 7 日に the New YorkerWeb 版に投稿されたAmy Davidson Sorkin によるコラムで、タイトルは"The Biggest Election Year in History"(史上最大の選挙の年)となっています。

 Amy Davidson Sorkin はスタッフライターで、政治や国際関係の記事をしばしば投稿しています。スニペットは、”It’s not just us. In 2024, more than half of humanity will live in a country holding a nationwide vote.”(アメリカだけではない。人類の半数以上が国政選挙が 2024 年に実施される国々に住んでいる)となっていました。

 さて、本日翻訳したコラムの内容は 2024 年は世界中で国政選挙が行われることに関してのものでした。史上最高レベルだそうです。エコノミスト誌の集計によれば、74 カ国だそうです。74 カ国に住む人口を合計すると 40 億人で、地球上の全人口の半数以上になります。

 エコノミスト誌は、選挙が行われる国々を民主的で自由で公正な選挙が行われるかをレーティングしています。その際の基準の 1 つは、選挙結果が政策や政権を担う人物に真の変化をもたらす影響力があるか否かということでした。これは、裏を返せば、高度に民主主義化された国ほど、政情が不安定化しやすいということでもあります。実際、そうなのかもしれません。高度に民主化されていない国、たとえばロシアや中国や北朝鮮で、選挙の結果によって政権与党が交代するなんてことはないわけですから。

 だから、政情不安定で与野党逆転がしばしば起こったり、理念の全く異なる政党が連立政権を組んだりという国に住んでいる人は嘆くべきではないのです。それは、間違いなく高度に民主化された国に住んでいるといえるわけで、喜ぶべきことなのです。嫌なら、北の楽園に行けということなのかもしれません。私は、民主主義は万能ではないが、専制主義より優れていると思いたいです。

 では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。


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The Biggest Election Year in History
史上最大の選挙の年

It’s not just us. In 2024, more than half of humanity will live in a country holding a nationwide vote.
アメリカだけではない。人類の半数以上が国政選挙が 2024 年に実施される国々に住んでいる。

By Amy Davidson Sorkin January 7, 2024


 アメリカの民主主義の行く末は、今や、たった 6 州のスイング・ステートの有権者の手の中にあるのかもしれない。彼らがドナルド・トランプを支持するか否かが、民主主義が生き延びるか死んでしまうかを決める可能性がある。その観点からすれば、来週のアイオワ州の共和党党員集会から本格的にスタートする各州での集会や投票は、11 月 5 日に大統領選の最終結果が判明するのを緊張感を持って待つための前哨戦に過ぎない。その結果を大きく左右するのは、スイング・ステートと呼ばれる州の有権者の投票行動である。しかし、民主主義の闘いが繰り広げられるフィールドは、アメリカだけではない。暦上のめぐり合わせによって、2024 年には非常に多くの国々で国政選挙が実施される。それらの国の人口を合計すると、 40 億人を超える。これは地球上の全人口の半分強である。これまで、こんな年はなかった。いずれの国においても有権者の投票行動は大きな意味を持つ。

 今年は、多くの国で重要な選挙が実施される。エコノミスト誌( The Economist )の集計によれば、2024 年に国全体の選挙が実施されるのは、76 カ国である。なお、これについてはさまざまなカウント方法があり、この数はブラジルのように統一地方選のみ実施される国も含めたものである。(ブラジルの 10 月の統一地方選は、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領にとって重要な期中評価となるはずである)。76 カ国の顔ぶれを見ると非常にバラエティに富んでいる。アルジェリア、アイスランド、インドネシア、ベネズエラ等々、選挙が行われると言っても、実際の民主主義のレベルはさまざまである。エコノミスト誌は、自由で公正な選挙が行われる国として 43 の国の名前をあげた。しかし、最も自由な選挙をする国においても欠陥が無いわけではない。エコノミスト誌がこのレーティングをする際に参考としたことの 1 つは、選挙結果が政策や政権を担う人物に真の変化をもたらす影響力があるか否かということであった。別の言い方をすれば、民主主義の健全性は、選挙結果が不安定化をもたらす可能性が大きい国ほど高いということである。公正な選挙というものは、不安定化を招くリスクをはらむものであり、何のリスクも伴わないような選挙は実施する意味がないのである。

 公正な選挙がもたらすリスクは、その結果が不安定化を生み出すことだけである。自由に投票する権利や誰でも立候補できるという権利がリスクに晒されるようなことがあってはならない。先陣を切ってバングラデシュで 、1 月 7 日に選挙が行われた。最大野党が野党指導者や人権活動家の不当な逮捕が続いていることをを非難し、投票のボイコットを呼びかけるなど混乱が続く中での選挙であった。3 月にはロシアで選挙が行われる。この国では、あらゆる意味で民主主義が危機に瀕している。ウラジーミル・プーチンが再任されるのはほぼ確実である。最も有力な挑戦者と思われるアレクセイ・ナヴァルニーは現在、西シベリアの流刑地のハルプ( Kharp)に収監されている。そんな中で行われる選挙であるが、投票率や投票結果や街角の雰囲気には、プーチンの長期政権に対する賛否が少なからず反映されるだろう。また、イランでも候補者が限られるものの選挙が行われる(立候補登録者の多くが事前審査で失格とされた)。現政権に対する大規模な抗議デモが続く中、審査は続いており、さらなる失格者が増えそうである。一方、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、3 月に予定されていた大統領選を実施するつもりはないと表明した。戦争が続いており、「選挙の話題を軽々しく遊び半分で国民に投げかけるのは無責任」だと発言している。彼の選択は理解できないものではない。しかし、それでも民主主義にとっての損失である。悲劇的なことである。

 4 月から 5 月にかけて行われる今年最大の選挙は、14 億人の国民を代表する 543 人の議員を選出するインドの連邦議会の下院総選挙である。大規模な選挙の結果によって、ナレンドラ・モディが首相に留まるか(留まらなかった場合の影響は甚大である)、彼が率いるヤナタ党( Bharatiya Janata Party)が連立を組むことを余儀なくされるか(可能性が高い)を左右する。この選挙の少し前に、パキスタンでも下院総選挙が実施される。同国では、現在、カカール暫定首相が、新内閣発足までの選挙管理内閣を率いているが、野党指導者イムラン・カーン前首相が有罪判決を受け投獄されて以降、政治的混乱が続いている。また、パキスタンでは選挙における人工知能の台頭の前兆が見られるかもしれない。カーン前首相は選挙運動やテレビ・ラジオへの出演を禁止されているため、AI が生成した演説音声を収録した動画を公開している。

 2 番目に大きな選挙は、いろいろな意味で未だに形成途上にある政体の議会の選挙である。欧州連合( EU )の議会選挙である。この選挙は 6 月に 27 カ国で行われる。欧州議会の議員連盟は国別ではなく、国境を越えた政党によって構成される。例えば、フランス再生党とドイツ自由民主党はともに、欧州議会において欧州刷新という政治会派に属している。この選挙によって、EU の優先事項と優先順位があらかた決まるであろう。ウクライナへの関与の仕方も定まるであろう。この選挙は、欧州各国の政治的ムードを知るバロメーターにもなる。昨年、オランダではサプライズ的に右派ポピュリストが勝利を収めている。( EU を離脱したイギリスでは、リシ・スナク首相に総選挙の実施日を決める権利があり、2025 年 1 月までに実施すればよいのだが、今年の秋に実施すると予想されている)

 北アメリカでは、メキシコで 6 月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の後継者を選出する選挙が行われる。有力候補は、女性 2 人、クラウディア・シェインバウムとソチル・ガルベスである。さて、欧州各国で行われる EU 連合の議会選挙を除外すると、2024 年に最も多くの国で選挙が行われる大陸はアフリカである。エコノミスト誌の集計では 18 カ国となっている(いくつかの国は実施日未定)。中でも注目されるのは南アフリカで、政権与党のアフリカ民族会議が 30 年ぶりに政権の座を追われる可能性が高い。有権者の多くが腐敗体質と内部対立に辟易としているからである。南スーダンは、元々は 2015 年に実施予定であった選挙を今年 12 月に実施する。識字率が低いため、有権者が正確に自分の意志を示すことも容易ではない。

 一方、1 月 13 日に新総統が決まる三つ巴の選挙戦の真っ只中にある台湾の上空では、異例の数の中国の観測気球が目撃されている。ロイター通信の報道によると、ある中国高官が警告を発していた。その高官は台湾を「台湾地域」と呼び、有権者は「正しい選択」をすべきだと主張し、誤った選択は戦争につながる可能性があると示唆した。台湾の政権与党の民進党の頼清徳候補は、国民党の侯友宜候補よりも中国に対して融和的ではないと見られている。世論調査では両者は拮抗しており、大接戦となっている。

 明白な疑問がある。数十の選挙が実施される中で、どれが最も重要なのだろうか? アメリカ人であれば、アメリカ大統領選が最も重要だと言う者がほとんどだろう。また、トランプが復職するか否かがかかっているわけで、実際に非常に重要であるように思われる。しかし、どこか遠い国の選挙結果がアメリカにどんな影響を及ぼすかということは誰にも分からない。また、アメリカの選挙結果が他の国にどんな影響を及ぼすかということも分からない。結局のところ、どこの国の選挙結果が重要で、どの国の選挙結果がそうでないかは誰にも分からないのである。これから、毎月のように私たちの元に選挙結果のニュースが届けられる。それぞれのニュースの影響がどのようなものなのかは予測できない。落胆させるものかもしれないし、不安にさせるものなのかもしれないし、明るい未来を暗示させるものかもしれない。そもそも現時点では、ほとんどの選挙の結果を予測することは不可能である。♦

以上

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