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【不当解雇に屈しない】元公務員の雇止め体験記〈後編〉

こんにちは。
国家公務員20年→ブラック民間企業3年→大手優良グループ企業9年目のとよぞうです。

国家公務員…からの非正規雇用…からの解雇通告…
国家公務員の頃は年金事務所で年金審査官として年金業務に奮闘していた。その頃にはまるで想像すらしていなかった事態が現実として自分の身に降りかかる。
こんな経験は誰もがしたくはないだろう。

世の中自分らしく人間らしく生きようとすれば人間として扱われない。
…だからみんな忖度して生きていく。

そもそも非正規雇用って国力を低下させるシステムじゃあないのか。
非正規雇用も派遣切りも解雇通告も上級国民にはピンと来ないだろう。
このシステムのせいでこの国で大勢の人たちが困窮し苦しんでいるんだ。


〈前編〉からの続き…

雇止めの通告を受けて
呼び出された時は、まさか解雇通告を受けるとは想像もしていなかった。
…が、年始のあいさつに来ただけだった役員「H」に対して「K」への不満を口にしてしまった時から嫌な予感はしていた…

結局、いち非正規雇用労働者風情が、恐れ多くも会社役員に対して直接物申した事が面白くなかったらしい。
「せっかく俺が採用してやったのに」「おとなしくしていればいいものを」
私がアホ「K」の素行不良を訴えた時、確かに役員「H」の表情はそう言っていた。

…悔しさが込み上げてくる。

これまでにもこの会社では同じような事が何度も繰り返されて何人もの非正規雇用者が解雇されている。
ちょうど1年前にも「K」と揉めてここを去った同期入社の人もいた。
さぞかし悔しかった事だろう。

ここいらでこの会社にお灸を据える必要がある。
どう考えても不当解雇だ。
泣き寝入りするわけにはいかない。
じっちゃんの名に懸けて…じゃなくて社労士の名に懸けて。

労働組合+社労士のタッグ
私が不当解雇を主張する根拠は「解雇理由の不合理」です。

いくら単年更新の契約社員だとしても求人情報や就業規則に「基本的に更新」を掲げて、尚且つ同条件で複数の契約社員が更新しているような場合、特定の人間を雇止めするには相応の合理的な理由が必要です。
例えば…
・勤務態度不良
・職務上の能力不足
・健康上の問題
・事業所の業務縮小に伴う人員削減など

今回私に作業上の不具合が生じた訳ではなく、同条件で勤務する同僚は皆更新している。そして業務規模の縮小もない。
気に入らない非正規契約社員の更新のタイミングを待って解雇権の濫用を行ったことは明らかだった。

しかしいくら解雇が不当でも、一人で労基署へ駆け込んだところで時間の無駄だ。
20年の役所勤めは伊達じゃない。
役所がたった一人の、しかも非正規労働者の解雇になど時間を割かない事はよく判っている。
会社の幹部を同じ席上に座らせて交渉するには一人じゃ無理だ。

私は社員の一人に頼んで元受け航空会社の労働組合の方を紹介してもらった。そして事情を説明したうえで急遽組合員にして欲しいと願い出る無理を承諾してもらう事ができた。

労働組合の方々は歴戦の強者という感じでやる気満々だった。
「同じ業界で働く者として誠意の無い悪質な協力会社が存在していること自体情けない」「徹底的に戦いましょう」と言って協力していただけることとなり労働組合の弁護士事務所も紹介してくれた。

解雇の理由
まず始めに「解雇理由の説明」と「雇止め取り下げ」を要求する文書を配達証明で社長あてに郵送した。
返送された文書には、解雇理由として勤務態度不良と記されておりその内容は私が会社備品を投げつけたと書かれていた。

…絶句した。
あくまで「K」を擁護しようとする姿勢の会社は、ありもしないでっち上げをしてきた。

許せない。
こうして戦いの口火は切られた。

交渉は難航した
私に対する「雇止め撤回」を求める交渉は三か月間に及んだ。

こちら側は労働組合の支部長と補佐役の方と私。
会社側は常務と総務課長と事業所長「A」。

あくまで私の勤務態度不良を主張する会社は、その根拠が無いだけに捏造にかなりの無理があったが今更ながら後に引けない。
まさかこのような展開になろうとは予想もしなかっただろう。これまで解雇にしてきた人間は皆泣き寝入りしてきたのだから。

こちらの机上要求はあくまでも不当解雇の撤回復職である。
…しかし本当はもう復職など希望していなかった。
早々に示談金を受け取って転職したい気持ちと「労働審判」の経験もしてみたい気持ちとが入り混じっていた。

示談にしたいものの示談金を渋る会社側に対し、あまりにも誠意を欠いたその対応に業を煮やす支部長は常に興奮気味で、頑として労働審判への姿勢を崩さない。支部長を抑えつつも話を冷静に進める補佐役の方。
役割分担がしっかりしている。流石だ。

誰がどう見てもこちら側の言い分が正しい。
会社側の主張は全部でたらめだ。
示談を切り上げて労働審判へとなれば勝てるだろうと思った。

しかし、どちら側にも証拠という点では不十分だった。
せめてボイスレコーダーでも残せていたら…
「お前なんか田舎で公務員やってりゃあ良かったんだよ」…何度か言われたこの台詞。
パワハラでも訴えられるのに…ボイスレコーダーは必須ですね。

三か月の間、三対三の机上交渉は六回を重ねたが…結局、示談成立という形で戦いは終わった。
私は示談金として二か月分の給料と付与されたばかりの有給休暇全額を会社に買い取らせて円満退社となった。

会社都合による退職のため失業保険も待機なしで満額受け取ることもできました。

労働審判を経験することはできなかったけど、この解雇経験はいろんな意味で人生の勉強になった。
労働組合の方々にも心から感謝しています。
この経験をいつか誰かの力になれるように役立てたい。

非正規雇用は希望する人だけでいい
2013年4月1日改正労働契約法により「無期転換ルール」が施行されました。
不当な雇止めを繰り返したあの会社もこの法改正を機会に全員を契約社員から正社員にしたそうです。
聞くところによると、私が辞めた後に着任したまともな事業所長が会社に正社員登用を進言してくださったようです。
私との一件が職場改善に繋がってくれたのかは判りませんが何よりです。

しかし、そんな会社は例外かもしれません。
この法改正を逆手にとって、非正規切りを企てる経営者が後を絶たないそうです。
「5年を超えたら無期転換を義務付ける」というこのルールのせいで、今まで非正規雇用で何年も働いてきた人たちを雇止めにしてしまう会社が立て続けに出てきています。

腐った不完全新ルールでまた追い詰められる人たちが大勢出てしまった。

国のルールを決める人たちは自分が汚れることもしないし現実を知ろうともしない…もう何も期待できません。

そもそも非正規雇用なんかなければ誰も苦しまない。
目先の利益を追求する企業や献金を受ける政治家が日本の未来を刈り取ってしまった。

ある程度働いた中高年が将来的な選択肢として非正規雇用を視野に入れることは有効だと思います。
しかし若い人たちが非正規労働者にならざるを得ない状況は国として見過ごしてはいけない。ありえない。

もしかすると、あるいは民意を分断しようとする狙いが政権政府にあるのかを疑ってしまう。
いやもうすでに民意は分断されてしまっている。
確実な票田を構築するために。

そう思う今日この頃。

また次の記事で…
とよぞうでした。


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