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いまどきな塩づくり

前回、ちょっと古風な塩づくりについてご紹介しました。
今回は現代の塩づくりについてフォーカスしていきます。
高温多湿な日本だからこそ発展した製塩法を紹介します。 



イオン交換膜製塩法

純国産の塩のほとんどは「イオン交換膜製塩法」

現在の日本における代表的な製塩法の1つで、海水の不純物を取り除きながら濃縮する製法です。
イオンにならない物質は通さない膜(イオン交換膜)を使用することからこの名前で呼ばれています。濃縮した塩水は蒸発缶(立釜)で結晶化させます。

  1. 海水を汲み上げ、濾過機にかけ不純物を取り除く

  2. イオン交換膜透析槽で海水を濃縮し、濃い塩水をつくる 

  3. 濃い塩水を真空式蒸発缶(立釜)で結晶化させる

  4. 遠心分離機で余分な水を取り除く

  5. 乾燥機にかけてサラサラにする

  6. 塩の完成

    分子より小さいイオンレベルで濃縮していくので、もし海水に違う物質が入っていてもイオン膜を通過しないため、イオン交換膜製塩法でつくる塩は安全性が高いといえるでしょう。

イオン交換膜のしくみ

イオン交換膜製塩法において濃縮工程のカギとなる、イオン交換膜について詳しく見ていきます。通常、液体は均一な濃度に分散していますが、どのように海水から濃い塩水に濃縮しているのでしょうか。

海水には塩水、つまりナトリウムイオン(NA+)塩化物イオン(Cl-)が存在しています。
イオン交換膜には、陽イオンを通す膜(陽イオン交換膜)陰イオンを通す膜(陰イオン交換膜)があります。この製法に、この2つの膜は欠かせません。
イオン交換膜透析槽の両側には、プラス電極とマイナス電極を置きます。
その2つの電極の間に、数千枚もの陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に並べた状態で、海水を入れます。
両側から電気を通すと、ナトリウムイオン(NA+)はマイナス極に引き寄せられ、塩化物イオン(Cl-)はプラス極に引き寄せられ移動します。
ナトリウムイオン(NA+)は陽イオンなので、陽イオン交換膜を通りますが、陰イオン交換膜は通り抜けることができないため、そこにとどまります。
一方、塩化物イオン(Cl-)は陰イオンなので、陰イオン交換膜を通りますが、陽イオン交換膜は通り抜けることができないため、同じようにそこにとどまり続けます。
すると、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜に挟まれた槽に濃い塩水がたまります。そこから取り出された濃い塩水だけが真空式蒸発缶(立釜)に送り込まれます。

立釜のしくみ

濃い塩水は、結晶化させるため水分を蒸発させます。
蒸発しやすくするために釜内は密閉して減圧、釜の外から蒸気で加熱し、結晶化した塩をとりだします。

溶解再製法

天日塩を溶解し、再製する「溶解再製法」

天日塩は自然のチカラを利用した製法ですが、日本は多湿な気象環境により、天日塩をつくりやすい環境ではありません。
そのため、主にオーストラリアやメキシコなどの外国から輸入された天日塩を原料として溶解再製法という製法が開発されました。
天日塩の溶解再製法は、次のような工程で行われます。

  1. 輸入した天日塩を水に溶かす

  2. 泥や砂などの不純物を取り除き、きれいな濃い塩水をつくる

  3. きれいな濃い塩水を立釜で結晶化させる

  4. 使いやすいように乾燥したり添加物を加え加工する

  5. 塩の完成

輸入された天日塩をそのまま使うのではなく、いったん水に溶かしてから、再び塩として精製しているのです。※1、5

できあがった塩の特徴

日本国内で製造された食塩は、塩化ナトリウム(NaCl)が99%以上と高純度なものが多いです。
漬物に使われたり、食品工場で使われたり、食卓に並んだりと様々です。
固結防止剤として炭酸マグネシウムを加えた塩は固まりにくく、サラサラして流動性がよいです。

原料である天日塩が外国産である場合は純粋な国産塩とはいえませんが、製造場所が日本国内であれば、「国内製造塩」と記載することができます。
外国生まれ、日本育ちといったところでしょうか。
いずれも産地においては、食品の表示に関するルールに合わせてパッケージ等に記載されています。

次回

技術の発達に合わせて、塩も製法が進化しているのを感じました。
次回は、「古代中国や古代ローマと塩(仮)」
でお送りしたいと思います。

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