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乳がんになった時のこと 6

「あの時どんな気持ちでこれを書いたのか」

労災病院はとにかく大きかった。子供のころ、扁桃腺の手術で近所の市民病院に入院した時大きい病院に入院したな〜と思っていたが、それの3倍はあった。なぜかこの日の日記だけiPhoneのメモに残っていた。文体はガタガタだけど、リアルに描写してる。不安や混乱がそのまま書かれているので載せる。


9時に到着、9時半から診察。10時から検査に回る。
マンモグラフィー、エコー。すべて女性の医師でホッとする。
ここまではスムーズに進んだが、検査結果を聞くのまでがずいぶん時間がかかる。
乳腺外科はとても混雑していて、入れ替わり立ち替わり、人が訪れる。
これだけ患者をさばいているんだから、待つのもしょうがないだろうなと納得。
ただ、私ぐらいの年齢の患者はいない。大体60歳以上という感じ。なんとなく不安にはなる。
1時間ほど待って、12時ごろ診察室にはいる。
エコーとマンモの写真を見せられるが、前の先生のところでみたのとほぼ同じなので「はぁ…これみたけどな」と思ってしまう。多分プロが見たら全然違うんだろうけど。「乳がんの可能性が否定できないので、細胞診もしましょう。麻酔をして、しこりに針を刺して細胞を取り出します。それを調べたらがんかどうかがはっきりわかります」と言われる。
このテンション、雰囲気。あんまりいい感じではない。本当に乳がんかもしれないと、改めて思う。なんとなくこのエコー見て「これは乳がんじゃないですね!」とポップに言ってくれるような気がしていたので、そう感じたのかもしれないけど。

とりあえず姉からのLINEに返信。心配しているからか昼休みにバンバン送って来る。病院の中で昼ご飯を食べるのが嫌なので、近くのコンビニまで歩きながら電話をする。姉は「悪いけど、その感じだったらガンの可能性は50%超えてる」と言った。でも私は50パーセントって半々ってことだから、大した事ないはずともう一つの可能性のぶら下がろうとした。とにかく画像CDを速達で送れと言われる。
セブンイレブンでコーヒーとドリアを買って外のバラの咲いている庭で食べる。
天気が悪く薄ら寒いのでテンションは上がらないが、院内の空気を吸ってるよりまましだと思った。
2時過ぎに検査室の前に戻り、3時まで時間を潰す。吉田修一の「怒り」キンドルで昨日買ったものだけど、中身が重いので読んでいるとダークな気分で疲れる。

3時前にやっと呼ばれて中に入る。今度は髭の男性医師だった。触診でしこりをさわり「結構動くねー。若いから乳腺が硬いのかな」と言われる。若いのか?まあ今日の待合室を見た感じでは「若い」に分類されるのだろうな。
局所麻酔の注射を右の胸の外側からうたれる。歯医者の麻酔みたいな感じで、液が入ると熱いが、そこまで大騒ぎをするほどではない。その後穿刺の針を刺されたんだろうが、全く気がつかなかった。

「今までに乳がん検診を受けた事は?」
「ないです。40歳になったら検診があるからしようとは思ってましたが」
「ご家族で乳がんの方は?」
「乳がんはいないですけど、姉が大腸がんになりました」
「えっ?!(急に無言)」

そんなあからさまに黙らないでほしいと思った。
手を頭の後ろに組んでいるので、しびれて痛い。

麻酔が効いているし、私は上を向いているので何が行われてるかよくわからないが、髭面が「ちょっと押しますよー」といってぎゅうぎゅうとしこりの上の部分を押す。看護師さんが「大きな音がしますから、驚かないでくださいね」と言う。大きな音ってどういう音だろうか、どかーんとかだったら驚くけどと思うが、キュイーンという小型掃除機のような音がするだけで、別に驚かなかった。それより、髭面が他人のおっぱい押し過ぎだろというぐらいぎゅうぎゅうと押すのにびびった。終わった後につけられるガーゼがとても大きくて、ブラジャーつけられるのか…?と思うほどだった。
「お姉さん、何歳の時にガンになったの?」
「えーと私の6歳上で2年前に手術したので、43ぐらいだと思います」
「…(無言)」

返事してよ。がん確定の雰囲気をひしひしと感じる。やばいなーと思いながら帰る。仕事と子どもの事を考えると泣けてきそうだったので、オアシスを聞きながらバスに乗って駅まで行った。

帰り道に姉に電話。「あんまり状況は良くないかもしれない」と細胞診の様子を伝える。「私もそう思っている。でも東京のがんセンターも紹介できるし心配するな。最新の治療が受けられるようにする。セカンドオピニオンも取れる」と相変わらず、心強い。ラインでここだけ読めと診断結果を聞く時に医師に聞かねばならないチェック項目のサイトを送ってきた。そこだけ読め、他は読まないでいいとの事。いらない情報を読んで不安がせらしたくないのだと思った。


#乳がん #健康 #シングルマザー

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