外山恒一&藤村修の時事放談2019.12.12「進次郎を総理にしてサミットから追放されよう!」(その3)

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 「その2」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 かれこれ4年ほど半年おきに続けている、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2019年12月12日におこなわれた。
 年末だし〝今年を振り返る〟的な内容だが、過去の対談を今読んでも滅法面白いように、べつに2030年ぐらいになってから読んでも引き続き面白いだろう。

 第3部は原稿用紙22枚分、うち冒頭7枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその7枚分も含む。

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 安倍ちゃんに比べたら誰でも名宰相?

外山 安倍ちゃんって、任期はいつまでだっけ?

藤村 えーと……自民党総裁の任期は2021年9月30日までだね。

外山 まだそんなにあるのか。

藤村 しかしさすがにその前には経済が落ち込みまくって辞めるとは思うんだけど……どうだろう、それも分かんないな。

外山 たしか歴代最長政権になったんでしょ? だけどそれは……。

藤村 もちろん〝のべ〟だよ。第1次安倍内閣も入れて、最長。

外山 それは分かってるけど、さすがに伊藤博文なんかよりは短いんじゃない?

藤村 いや、安倍政権のほうが長い。

外山 だってさっき年表を作る時に調べたら、〝憲政史上〟最長って云い方だったよ? そういう〝限定つき〟の云い方をしてるってことは、〝歴代首相全員で最長〟って意味ではないんじゃないの?

藤村 あ、そうだね。じゃあ伊藤博文のほうが長いのかな?

外山 〝憲政史上〟ってことは、〝立憲政治が始まって以来〟ってことだから、起点は大日本帝国憲法の施行でしょ? つまり1889年以来。内閣制度はたしか1885年だから、初代首相の伊藤博文はもちろん、2代目の黒田清隆あたりも計算には入ってないってことじゃない?

藤村 でも、まあ〝憲政史上〟って云ってるんだから当たり前だけど、山県有朋なんかは完全に超えてるはずだよ。

外山 〝桂太郎の記録を抜いて〟という書き方になってたから、山県有朋よりは桂太郎のほうが長いんでしょうね。だけど伊藤博文は……(改めて確認すると、黒田清隆はもちろん伊藤博文も完全に超えており、正真正銘の〝歴代最長〟であるようだ。なぜわざわざ〝憲政史上では〟という限定的な云い方がされているのかは不明。ちなみに安倍晋三、桂太郎、佐藤栄作に次いで伊藤博文は歴代4位)。

藤村 伊藤博文より長いのか問題はさて措いても、〝憲政史上〟最長の大記録を達成したのは確かなわけで……。

外山 うん、素晴らしいことだと思います(笑)。次は進次郎が30年ぐらいやってほしい(笑)。

藤村 (苦笑しつつ)これまでは自民党内の派閥の力学が強かったから、党の規約もなかなか変えられなかったわけじゃん。とくに総裁任期に関しては、どこの派閥だって自分のところから首相を出したいんだから、ますます変えるのは困難だった。中曽根さんですら、規定の2期を務めた後に、任期をさらに1年〝延長〟するってことを特例として認めさせるのが精一杯だった。
 中曽根さんは、1987年の〝死んだふり解散〟で突如として参院選に合わせて衆院解散をやって衆参同日選挙にして、結果としては大勝ちしたじゃん(公認候補だけで衆院300議席という自民党結党以来の最高記録を作った)。その功績で異論を抑え込んで、任期延長を特例として認めさせた。
 ほんとは3選も可能にする規約改定もやりたかったのかもしれないけど、選挙の時には〝大型間接税なんか導入しません〟と云っておいて、300議席を確保するや〝売上税〟(のちの消費税)を導入するとか云い出して、そのせっかく手に入れた〝2.5期目〟の間に内閣支持率はガタ落ちするわけだ。

外山 〝日本の89年革命〟の導火線の1つだね(『全共闘以後』参照)。

藤村 2年後の89年の参院選では、今度は社会党が大勝ちするっていう(野党のほうが議席が多くなり、参院では社会党委員長の土井たか子が首相に指名された)。
 ……しかし中曽根さんも、いい時に亡くなったもんだよ。この安倍政権下で亡くなって回顧されれば、反安倍勢力からしても〝名宰相〟の扱いでしょう(笑)。

外山 そりゃあ安倍ちゃんに比べれば、たいていの首相は〝名宰相〟だ(笑)。


 「あんなバカ、呼ぶのやめようぜ」と世界に云わせたい

藤村 もちろん、平成に入ってから本格化した日本の新自由主義的な改革というのは、実は中曽根さんが始めたことじゃん。だから今の、新自由主義のさまざまな弊害の問題も、すべて中曽根路線の延長上で起きてることです。しかし今の状況がヒドすぎて、そもそもは中曽根が撒いた種だというのはもう、どうでもよくなってる(笑)。
 だって荻上チキなんていう完全なリベラル派のラジオ番組で、専門家を呼んで、「中曽根政治の再検討」みたいな特集をしていたけど、〝いろいろ問題もあったとはいえ、中曽根さんは偉大な政治家だった〟みたいな話になってるんだもん。そんなもん、安倍ちゃんと比べるからでしょ(笑)。さすがに荻上チキは何か言いたそうだったけどね。
 しかしこれはつまり、やがて小泉進次郎が総理大臣になったら、〝安倍さんは偉大な政治家だった〟と云われるかもしれないという話でもある(笑)。……さすがにこういう云い方は中曽根さんに失礼か。
 少なくとも中曽根さんは、ちゃんと〝政治家〟の振る舞いをしてたもんね。彼の政策への賛否や、彼が敷いたレールの上で起きてる今の新自由主義の問題をどう評価するかという話は別として、安倍ちゃんほど野党や野党支持者をナメきったような振る舞いはやらなかった。オレはやっぱり、安倍政権より劣化した政治って、想像がつかない。

外山 いやあ、小泉進次郎ならもっと下を行くよ。

藤村 だって安倍ちゃんの〝劣化しきった政治〟というのは、自分の支援者のほうにしか顔を向けてないっていうものでしょ。自分の支持者でない連中は全員、日教組だとか思ってるんだもん、あの人は(笑)。

外山 その点はたしかに、小泉進次郎はもっと〝国民全体〟を意識した振る舞いをするでしょうね。しかしそれは単なる人気取りでしかなくて、国民にウケそうなことを、その場の勢いでテキトーに、キャッチコピー程度のフレーズとして連発するっていうだけの。
 しかも肝心の国民がどんどんバカになってるから、ほんっとに〝おバカ〟発言を繰り返すことになるだけでしょ。しかもその〝バカ殿〟モードのまんま、国際的な場にも出て行ってくれると思うんだ(笑)。

藤村 うーん……光景が目に浮かぶ。「私は総理大臣になりたてなのでよく分かりません」みたいなことを云いまくるんだろうなあ。

外山 もうサミットとか、呼んでもらえなくなるんじゃない?(笑)

藤村 ロシアもサミットからハブられたけど、あれはクリミア半島の問題で……。

外山 勇ましいことをやってハブられた。

藤村 つまり政治的な文脈でハブられたわけだけど、日本は単にバカだからって理由でハブられる(笑)。

外山 あんなバカ、呼んでも話し合いにならんから、もう呼ぶのやめようぜ、っていう。

藤村 代わりに韓国を呼ぼう、と(笑)。

外山 そういう展開は素晴らしいな。さすがに日本人も大ショックでしょう。それはもう明白に、日本よりも韓国のほうが国際的に評価されてるっていうことを、どうにも否定しようのない事実として突きつけられることになるんだもんね。

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