外山恒一&藤村修の時事放談2019.12.12「進次郎を総理にしてサミットから追放されよう!」(その7)

 【外山恒一の「note」コンテンツ一覧】

 「その6」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 かれこれ4年ほど半年おきに続けている、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2019年12月12日におこなわれた。
 年末だし〝今年を振り返る〟的な内容だが、過去の対談を今読んでも滅法面白いように、べつに2030年ぐらいになってから読んでも引き続き面白いだろう。

 第7部は原稿用紙26枚分、うち冒頭7枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその7枚分も含む。

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 山本太郎は少なくとも左派ではない

藤村 『左派ポピュリズムのために』っていう、シャンタル・ムフという人の本があって……。

外山 最近よく聞くやつだ。

藤村 この本でも、左派ポピュリストは中道左派より右派と組むべきだという主張をしてる。もちろん、右派の中にある排外主義的な傾向については充分に注意すべし、ってことも書かれてるけどさ。
 なぜ右派と組むべきかといえば、右派に流れてるような部分こそ、まさに新自由主義の犠牲者になってる層なんだ、と。オレはそもそも山本太郎が左派だとはまったく思ってないけど……。

外山 うん、右派だよね(笑)。

藤村 その証拠もいっぱいあるでしょう(笑)。彼の発言をちゃんと聞いてれば、少なくとも左派でないことははっきりしてる。
 ……ともかく、中道左派より右派と組むべきだというのは当たり前なんだ。だって中道左派なんてものは、せいぜい〝所得の再分配〟のシステムをちゃんと作りましょうという程度の、まあ云ってみれば〝新自由主義左派〟みたいなもんだからさ。そういう側面も含めて、多くの人から見れば野党のほうが新自由主義的に感じられるということには根拠がある。

外山 安倍ちゃんよりパパ小泉のほうがずっと新自由主義だったでしょ。で、パパ小泉の新自由主義路線は、安倍ちゃんとかより維新のほうに受け継がれてるわけで、維新とくっついたり離れたりを繰り返してきた旧民主党系には、維新寄りの人がいっぱいいるだろう。
 安倍ちゃんも維新とは仲良くしてるけど、あれはたぶん橋下徹というモノホンのポピュリストを敵に回すとヤバいという判断でしかないと思う。

藤村 さっきの〝レイシスト〟問題につなげると、山本太郎はとにかく経済問題にプライオリティを置いてて、それはレイシズム問題を軽視するというのではなく、結局レイシズムの風潮の背景にも経済問題があって、経済問題がどうにかなりさえすればレイシズム問題もおのずと……。

外山 緩和する、と。

藤村 うん、完全になくならないまでも今よりは改善する。野間さんたちが展開してきたような〝カウンター〟というのは、社会に蔓延してるレイシズムの量的規模を減らしたりはしないんだ。
 野間さんのやり方で可能なのは、レイシストたちの街頭での行動を封じ込めることだけだよ。野間さんたちは実際それをやったし、街頭でのレイシズム行動は封じ込められた。それは野間さんの功績だし、とても素晴らしいことだと思う。しかし、そこまででしょ。

外山 街頭に顕在化してた部分が封じ込められただけで、レイシズムそのものは、むしろいっそう強力に社会全体に広まってる。

藤村 野間さんがどう考えてたかはともかく、初期のしばき隊に参加してた清(義明)さんは、男組の山口裕二郎さんとの対談で、〝我々はレイシズムをなくすことができると思ってるわけではなく、せいぜい街頭でそれを撒き散らすのをやめさせることを目指してたし、それ以上のことは我々の運動ではやれないというのが、当初からの共通了解だったはずだ〟と云ってるんだよ。そりゃそうだろうと思うし、それがマトモな人間の認識でしょう。野間さんだって、たぶんそうだったんじゃないの?

外山 だと思うよ。

藤村 ところがだんだん〝アベ政治を許さない〟とかワケの分からんことを云い出して、そりゃオレも許せないけどさ(笑)。

外山 在特会が相手だったから有効だったしばき隊の手法を、そのまま安倍政権に向けてもね。


 資本主義の暴走を抑えられるのは国家権力だけ

外山 ……しかし今日みたいに、ろくでもない安倍ちゃんにずっと首相を続けほしいとか云ってると、また野間っちから例のワンパターンな攻撃が飛んできそうでゲンナリする。

藤村 〝ヒドすぎて素晴らしい〟っていう〝面白系糞サブカル〟の〝逆張り芸〟だ、って(笑)。……でも野間さんもかつて〝非常階段はヒドすぎて素晴らしい!〟みたいなことを書いてたのをオレは忘れないけどね。

外山 それさえも野間サンお得意の〝そのまま自分に返ってくる悪口〟なのか(笑)。……だけど短期的な展望が現実に何もない以上は、〝もっとヒドい状況になる〟ことを歓迎するしかないし、〝ヒドすぎて素晴らしい〟が正解なんだ。

藤村 またラジオの話ばかりで申し訳ないとはあんまり思ってないが(笑)、大竹まことのラジオにも山本太郎が出てたんだよ。そこで大竹まことが、「今の新自由主義というのは資本主義の1つの形にすぎないのか、それとも資本主義というのは必然的に新自由主義に行き着くものなのか、どう思いますか、山本さん」って訊いた。
 これはもう山本太郎的には、「生きていてもいいですかと誰もが問いたい」けど「その答えを誰もが知ってるから誰も問えない」(中島みゆき「エレーン」)という種類の問いじゃないですか(笑)。山本太郎はやっぱりはぐらかしてたけどさ(笑)。
 でもそこは重要な論点で、どう考えても新自由主義は資本主義の必然的な帰結に決まってますよね。

外山 うん。

藤村 それをこれまではさまざまな要因で抑え込んでたわけだ。

外山 資本主義の必然的な展開を、国家権力とか左翼勢力とかがあの手この手で妨害してた。

藤村 ところが今やそれは制御不可能な状態にまで近くなってきてる。それを今からでもどうにか制御しうるのか、という問いに対して山本太郎は本来なら「可能です」と答えなきゃいけない。実際に彼はMMTに乗っかって、新自由主義を抑え込もうという提起をあちこちでやってるわけだけど、一方でどこか本音では、無理かもしれないと思ってるんじゃないかなあ、と。

外山 資本主義に対抗しうるのは国家権力だけじゃん。

藤村 そうだよね。

外山 だから〝権力を獲らなければ〟という方針が出てくるんであって……。


 中華主義者として今の香港の状況は?

藤村 あ、そういえば今日は外山君に香港問題についての見解も訊きたかったんだけど……今の香港のデモを見て、さすがにシールズと比べようって奴はもういないよね。

外山 暴れまくってるし(笑)。もともと香港や台湾の運動と同列のように論じること自体、おこがましかったんだよ。

藤村 木下ちがやでさえ、もうそんなことをしようとは思わないでしょう。……で、どうなんですか、中華主義者として今の香港の状況は。今回の問題でも中国支持ですか?

外山 香港の状況の具体的な展開をほとんど追ってないから、細かいことはあまり云えないけど、原則論ははっきりしてる。中国共産党が〝良い独裁〟をやってないからああいうことになるんだ。

藤村 〝本来の中華主義〟に戻るべきだ、と?

外山 そうそう、そうすればそもそもあんな事態にはならない。

藤村 でも香港が〝完全な民主化〟を望んだとしたら……。

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