外山恒一&藤村修の時事放談2019.12.12「進次郎を総理にしてサミットから追放されよう!」(その6)

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 「その5」から続く〉
 〈全体の構成は「もくじ」参照〉

 かれこれ4年ほど半年おきに続けている、福岡在住の同い年の天皇主義右翼(でもインテリ!)・藤村修氏との〝時事放談〟シリーズである。
 2019年12月12日におこなわれた。
 年末だし〝今年を振り返る〟的な内容だが、過去の対談を今読んでも滅法面白いように、べつに2030年ぐらいになってから読んでも引き続き面白いだろう。

 第6部は原稿用紙26枚分、うち冒頭8枚分は無料でも読める。ただし料金設定(原稿用紙1枚分10円)にはその8枚分も含む。

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 ファシストと天皇主義右翼に絶賛されちゃう山本太郎

藤村 野間さんはいわゆる〝左派ポピュリズム〟路線を志向してたはずだけど、山本太郎もそうで、じっさい本人も「ポピュリズムで何が悪い」とか云ってるもん。

外山 野間さんと違って人間もできてるし……。

藤村 勉強もしてるし……。

外山 こないだ見物に行った博多駅前での街頭演説も、経済学の〝授業〟みたいだった。

藤村 ポピュリストを自称しつつ、ポピュリズムの危険性を彼は分かってるんでしょう。

外山 一方でバカにも支持されるように迎合しつつ、一方でバカを啓蒙しようともしている。

藤村 そうそう。ムチャクチャ頑張ってるなあと感心したよ。……だけど「れいわ新撰組」(以下、カッコなしでは読みにくいので「令和新撰組」と表記)の政策で多くの人が一番つまずくのが、「でも財源どうすんの?」っていう問題だよね。
 だから彼はそこでMMT=〝現代貨幣理論〟という、要するに〝自国通貨を発行できる国は、国債をどれだけ発行しても財政破綻することはない。ただしインフレにだけは気をつけろ〟っていう理論を、もちろんいきなり直接その結論を云うんじゃなくて、じわじわと積み上げるように、まず〝国がたくさん借金をしてると云うけど、それは具体的には誰に借金をしてるのか?〟というあたりから始めて、2、3時間かけて聴衆を納得させようとしてたでしょ。

外山 また話が上手いんだ。途中から聴き始める人もたくさんいるから、何度も行きつ戻りつして、しかもずっと聴いてる人も飽きさせないように、ちょっと説明の仕方を変えたりしながら……。

藤村 でもMMTの結論にあたる〝国債なんかいくら発行したって大丈夫なんです〟っていうところまでは云わなかったような気がする。時間が足りなかっただけなのか、実は山本太郎もMMTを完全に真に受けてるわけではなくて、かなり慎重な云い方を心がけてるということなのか、よく分かんないけどさ。とにかくマジメな人だなあと思った。
 ……ラジオで喋ってるのを聴いてたら、原発事故の直後なんかは、福島に住んでる人たちに「早く逃げなさい、ここは危ないんだから逃げなさい」ということを云いまくって、それで批判もされてたでしょ。オレはそこまで批判されなきゃいけないようなことでもないと思うけど、まあ山本太郎の場合は、「自分たちは逃げられないんだ、ここで生きていくしかないんだ」という人たちの声も聞いて、自分も危機を煽るだけではなく、考え方を変えなきゃいけないのかもしれないと思い始めて、まずは貧困の問題を解決することのほうが先だと考えるようになった、と。
 それにしても、まったくではないとしても、それまでそんなに政治的なことに関心があったわけでもない人が、原発事故をきっかけにパッと目覚めて、行動すると同時にコツコツ勉強もしてて、非常にちゃんと1つ1つステップを踏んでるんだよね。

外山 かなりセンスいいと思うよ。〝3・11以降〟の活動家では、ほとんど唯一マトモな人でしょう。まあ清(義明)さんやノイホイさん(菅野完氏)もいるけどさ。


 野間易通のサブカル消費者根性

藤村 でも何がネックになるかと云えば、やっぱり今は国の借金が深刻だと云われていて、貧困問題に取り組むとしても、すぐ〝財源はどうすんだ?〟って話になる。逆に云えばそこさえ乗り越えればいいんで、だから彼はMMTに飛びついたわけだけど、それこそ松尾匤の本とか読んで勉強したんでしょう。
 実はオレはMMTに関してはかなり胡散臭く感じてて、あんまり長期的にそれをやってるとヒドいことになるんじゃないかという不安もある。というのは、管理通貨制度における紙幣というのは、政府に対する信頼で成り立ってるわけじゃん。これがただの紙切れになってしまうことはないという信頼の背景には、政府に対する信頼があるわけだ。その政府が、お札をガンガン刷りまくってる状況というのは、あんまり好ましいことではない気がするんだよね。だからあんまり長期的にやるべきではないんじゃないかと……まあオレも経済に詳しいわけではないから直感でしかないけど、長くやりすぎるとボロが出そうな気がしてる。
 これもオレの勝手な推測だけど、山本太郎自身もMMTをそこまで本気で信奉してるわけでもないんじゃないかとも思う。でもとりあえず理論として使えるから、今のところはそれに乗っかって、財政支出を増やす、金持ちから税を取るけどその制度が整うまでは国債でまかなう、って案をかなり堂々と提示してた。
 いずれにせよ山本太郎という人は、ものの考え方が一応ちゃんと〝政治活動家〟的じゃん。彼には他にもたくさん良いところがあって、野間さんとの比較で云えば……。

外山 うん、それは分かりやすいね(笑)。

藤村 いや、この比較は必要なことだよ。例えば野間さんは、〝政治家は使い倒せ〟というようなことをよく云うでしょ。自分たちが政治家になるのではなく、政治家に委ねる。で、安倍自民党に対抗するために〝野党共闘〟とか要求するわけだ。
 オレはそんな路線は無理スジだと思ってるのはさっきも云ったとおりで、野党のほうがよっぽど新自由主義的だと多くの国民に思われてるのもあるし、そもそもそんなこと云うんなら野間さんが自分で政治家をやればいいじゃん。

外山 しょせんサブカル消費者根性だ、と。

藤村 そうそう、完全に消費者メンタリティなんだ。決して自分が政治家になろうとはしない。なぜそうしないのかと云えば、大人は自分の仕事が忙しいんだとか、生活者としてのどーたらこーたら、でも生活者イコール消費者だもんね。
 いや、べつに消費者の立場に甘んじることを肯定したっていいよ。だったら東浩紀と組めよ、と。東浩紀は山本太郎に批判的だけど、それは筋が通ってる。

外山 なんで批判的なの?

藤村 ポピュリズムが嫌いだから。

外山 なるほど。

藤村 じゃあなんで野間さんと、一時期とはいえ仲良くしようとしてたんだよ、と思うけどさ(笑)。まあ野間さんのポピュリスト的な側面については、仲良しだった頃から警告を発し続けてたし、矛盾はしてないんだろうけど……。
 とにかく野間さんは自分が政治家になればいいはずなんだ。あるいは立候補までしなくても、政党を立ち上げるなりして、もうパヨク的な、しばき隊的な活動には見切りをつけて、令和新撰組みたいにSNSで呼びかけてサポーターを集めてさ。こないだの博多駅前での街頭演説も、そういう人たちがいっぱい動いて成立させてたわけでしょ。


 支持者でもないくせに安倍政権に〝陳情〟したシールズ

藤村 翌日の久留米での講演会にも外山君は行ったんだよね?

外山 うん、行った。

藤村 久留米にもいっぱい人が集まってたんでしょ?

外山 さすがに久留米ではそんなに集まらないだろうと思ってたから、ちょっとビックリした。

藤村 あれこそ野間さんの好きな〝クラウド〟だよね。……オレは昔は、パヨクの連中はみんな共産党に入れよ、と思ってたんだ。共産党は素晴らしいとか、さんざん云ってたんだからさ。じゃあ入れよ、と。共産党の活動なら、仕事しながらでもやれるでしょう。ともかく山本太郎は、野間さんの云ってた〝クラウド〟なんて与太話を、与太話ではないレベルで実現してる。

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