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効果バツグン!相振り飛車、端への「全集中」

本日(3/31)、cakes連載の第4回が更新されました。



今回は詰将棋について解説しています。
詰将棋と手筋は上達の両輪です。
ご自分のレベルに合った詰将棋を解いて、棋力アップにつなげましょう。

今回の記事は、振り飛車党で初段を目指す方を悩ませる「相振り飛車」で、とっておきの作戦をお伝えします!
上級者、そして有段者にも参考になる内容だと思います。

まえがき

振り飛車党で相振り飛車が苦手な方は多いと思います。
今回の作戦、端へ「全集中」させる駒組みを覚えて、相振り飛車の勝率アップにつなげてください!

この攻め方は、発売中の自著「将棋・ひと目の歩の手筋 ~将棋上達の入り口~」でも紹介しています。


相振り飛車での端への「全集中」、これが駒組みの理想図です。

相振り端攻め27手


この駒組みを覚えるだけでも、勝率アップ請け合いです!
そしてこの定跡を覚えることで攻めがうまくなり、棋力もアップすること間違いありません。


先手の場合

それでは解説に入ります。
まずは三間飛車に振ります。
最初にして重要なポイントは、角道を止めないことです。

相振り端攻め2手

ここで角道を止めずに▲9六歩と様子を見ます。

相手が振り飛車の意思表示(△4四歩)をしてきたら、おもむろに▲7八飛と三間飛車に。

相振り端攻め5手

▲9六歩の一手が無駄なようですが、この歩はあとで生きてきます。
むしろ▲6六歩と角道を止めると、その手があとで邪魔になってしまいます。

次に飛車先の歩を交換します。

△3二銀▲7五歩△4三銀と進んだ局面。

相振り端攻め8手

▲7四歩△同歩▲同飛と歩を交換します。
相手も△7三歩と打つくらいでしょう。先手も▲7六飛と引いておきます。

相振り端攻め13手

中段にいる飛車のことを、浮き飛車といいます。
三間飛車ではこの浮き飛車が好位置です。

次は囲いを作ります。美濃囲いがオススメです。

△3三角▲4八玉△2二飛

相振り端攻め16手

後手は向かい飛車と呼ばれる、バランスのよい陣形です。
余談ですが、2八に飛車がいなくても「向かい飛車」と呼ばれます。

さぁ、▲3八銀と美濃囲いの骨格を作りましょう。

以下、△6二玉▲3九玉

相振り端攻め19手

相振り飛車では、玉は3九が定位置です。
2八までいくと、かえって相手の攻めの当たりが強くなります。
一手省略できるのも見逃せません。

△7二玉▲5八金左

相振り端攻め21手

これで囲いは完成です。
この後は攻めの形を作ります。

端へ「全集中」

△8二玉▲9五歩△7二銀

相振り端攻め24手

相手も美濃囲いを作ってきました。
わりとよくある進行でしょう。

ここから攻撃陣を端へ「全集中」します。

▲6六角△5二金左▲7七桂

相振り端攻め27手

理想図にたどりつきました。
角と桂が9三の地点を狙う準備が整いました。
7九の銀は動かす必要ありません。

水面斬り

△2四歩と相手も攻撃態勢を整えてきました。

相振り端攻め28手

しかし攻撃態勢構築のスピードは段違いです!
先手は理想形。「水面斬り」で襲いかかります!!

「水面斬り(みなもぎり)」は『鬼滅の刃』に出てくる、主人公の竈門炭治郎の使う技の一つ。


ちなみに「全集中」も『鬼滅の刃』に出てくるものです。
とはいえ今回の記事では『鬼滅の刃』はそんなに出てこないので、ご存知ない方も気にせずに読み進めてください。

▲9四歩△同歩▲9三歩

相振り端攻め31手

軽やかな端攻めのスタートです。
将棋AIの評価値はなんと+1000!
相手の気づかぬうちに切っているのです。

ここからは具体的に手順をみていきます。
まずは香で取ったら(△9三同香)どうなるでしょうか。

相振り端攻め32手

▲8五桂と跳ねて、角と桂のききが9三の地点に集まりました。

これ以上受けられないので△2五歩と反撃態勢を整えてきます。

相振り端攻め34手

さあ、一気に切り込みます。
▲9三桂成△同桂▲9四香△9二歩▲9五香

相振り端攻め39手

端への集中砲火です。
△8一桂と受けるくらいですが、

相振り端攻め40手

▲9六飛で「全集中」が完成します。

相振り端攻め41手

次は、▲9三香成△同歩▲同香成△同桂▲同角成(同飛成)をみています。しかし持ち駒に歩しかない後手はそれを防げません。

将棋AIの評価値も+1500に上昇!「水面斬り」が決まりました。
ここでようやく相手も切られたことに気がつくでしょう。


桂で取っても「全集中」

戻って、▲9三歩を△同桂と取ってみましょう。

相振り端攻め32手 (2)

▲9四香と歩を取るのが自然な攻め。

相振り端攻め33手2


ここで△2五歩だと、▲9二歩が「歩の手筋」。
自著「ひと目の歩の手筋」にもよく出てくる手筋です。
大事なことなので(?)、もう一度リンクを貼っておきます。


▲9二歩△同香に▲9六飛とすれば、

相振り端攻め37手2

端へ「全集中」して次の▲9三香成が受かりません。
後手陣は崩壊です。
ちなみに▲9二歩を打たずに▲9六飛だと△9二歩と受けられて失敗です。
▲9二歩は相手に△9二歩を打たせないための、「敵の打ちたいところに打て」の手筋です。

戻って▲9四香には△9二歩と受けるべきです。

相振り端攻め34手 (2)

端はだいぶ強化されたので、初めて端以外に目を向けます。
▲7四歩が歩の手筋。「合わせの歩の手筋」です。

相振り端攻め35手

△同歩に▲5五角と王手します。

相振り端攻め37手

△7三銀には▲9三香成△同歩▲8五桂と今度は7三の地点に「全集中」します。

相振り端攻め41手 (2)

以下△6四銀と逃げれば、▲同角△同歩に▲7四飛で詰みも見えてきます。

△7二香には▲7四飛!

相振り端攻め43手

この飛車を取ることはできません。恐るべき「全集中」です。
△6四歩と角道を止めてきたら、

相振り端攻め44手

色々な攻めがありますが、ズバリ▲7三飛成と飛車と銀を交換します。
普通は駒損でいけませんが、もう終盤戦です。
終盤戦の最優先事項は駒の損得より「詰み」です。

相振り端攻め45手

△同香に▲7四歩と打って、△同香に▲6四角

相振り端攻め49手

以下△7一玉に▲8二銀△6二玉▲7三角成で詰みとなります。
△9二玉なら詰みませんが、▲8二銀で必至になります。

「水面斬り」でスパッと切りました。
なんと気持ちのよい攻めでしょう。

後手の場合

端攻めの破壊力を実感されたでしょうか。
この指し方は後手番でも十分可能です。
むしろ実戦では後手での採用が多くなるでしょう。

相振り端攻め32手

これが理想図。最初にあげた理想図と大差ありませんね。
では手順を追っていきます。

▲7六歩△3四歩▲6六歩

相振り端攻め3手

相手が振り飛車を目指せば、この出だしになります。自然な順なので実戦での登場回数も多いでしょう。


ここで三間飛車(△3二飛)に。

相振り端攻め4手

以下、▲7八銀△3五歩▲6七銀△3六歩

相振り端攻め8手

飛車先の歩を交換するのも一緒です。

以下、▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛

相振り端攻め12手

浮き飛車にするのも一緒です。

以下、▲7七角△6二玉▲8八飛△7二銀▲4八玉△7一玉

相振り端攻め18手

美濃囲いを作ります。玉は7一が定位置です。

以下、▲3八玉△5二金左▲2八玉△1四歩

相振り端攻め22手

端攻めの態勢を作り始めます。

後手でも端へ「全集中」

▲3八銀△1五歩▲5八金左

相振り端攻め25手

さぁ、端へ「全集中」します。

△4四角▲8六歩△3三桂

相振り端攻め28手

攻撃態勢が整いました。▲8五歩には△1六歩と攻め込みます。

相振り端攻め30手

▲同歩△1七歩

相振り端攻め32手

理想図になりました。こうなれば先手でも後手でもほとんど一緒です。
あとは先ほどの解説同様、攻め駒を端へ「全集中」させて先手陣を崩壊させましょう。

将棋AIの評価値は、香で取っても桂で取っても、後手に1000点ほどふれています。
「水面斬り」成功です!

端を受けてきたら2つ歩を持つ

相手が端を受けたらどう攻めるのか。
△1四歩に▲1六歩と受けたとします。

相振り端攻め23手

△4四角▲3八銀△3三桂

相振り端攻め26手

端へ「全集中」させました。
ただ、相手が端の歩を受けた時はすぐに攻めないほうがいいです。

▲5八金左△2四歩▲8六歩△2五歩

相振り端攻め30手

おもむろに2筋を伸ばしていきます。

以下、▲8五歩に△2六歩▲同歩△同角▲2七歩△4四角と2筋を交換します。

相振り端攻め36手

相手が端を受けたときは、2歩持つのがポイントです。

以下、▲8四歩△同歩▲同飛△8三歩▲8八飛

相振り端攻め41手

先手も飛車先を交換しましたが、攻撃態勢構築のスピードは歴然としています。

水面斬り炸裂

いよいよ端攻めの開始です。

△1五歩▲同歩△1七歩

相振り端攻め44手

ここでもこの手順で始まります。
端攻めの号令はいつもこの手順です。

以下、▲同香△2五桂

相振り端攻め46手

▲1七同桂では△1六歩で桂が取れます。よって香で取る一手。
対して桂を跳ねるのも一緒です。

ここでの将棋AIの評価値は、後手に1000点ほど。「水面斬り」が炸裂しています。
しかし端攻めの威力を知らなければ、まだ切られていることに気が付かないでしょう。

ここで相手が放置すると(▲9六歩と指したとする)、△1七桂成と香を取り、

相振り端攻め48手

(圭=成桂)

▲同桂△1六歩で、桂が逃げれば△1七角成や△1七歩成と相手陣を突破できます。

戻って△2五桂に▲1六香と逃げます。

相振り端攻め47手

ここで手持ちの1歩が生きます。

△3六歩

相振り端攻め48手

この歩が打てないと攻めがつながりません。
2筋の歩を交換して手持ちにした効果が表れました。


次は△3七歩成▲同桂△1七角成があるので▲同歩の一手。
そこで△5五角が先ほども出てきた攻め方。

相振り端攻め50手

▲3七桂△3六飛

相振り端攻め52手

後手は3七の地点に「全集中」しています。
桂を取ると玉を取られますし、次は△3七桂成で崩壊します。
よって▲4八金上と受けるくらいですが、△1六飛と香を取って、

相振り端攻め54手

香得したうえに、次の△1七飛成が受かりません。先手陣は崩壊です。
将棋AIの評価値は後手に4000点。
「水面斬り」の威力をまざまざと見せつけました!

おわりに

端へ「全集中」する指し方、いかがでしたでしょうか。
最後にポイントをまとめておきます。

・角道を止めずに三間飛車へ
・飛車先の歩を交換して浮き飛車に
・囲いは美濃囲い、玉は入城させない
・角と桂を端に「全集中」させる
・「歩の手筋」で攻略する

ぜひご自分の実戦で、相振り飛車になったらお試しください。
理想図に組めれば、勝率アップは間違いありません!

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