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移住ではなく引越し、その感覚で。/【移住者】井上 浩延さんファミリー

こんにちは、Uターン移住ライターのchiharuです。

今回は、約6年前に夫婦で南砺市(なんとし)に移住をして、現在はイタリアンレストラン「Cucina Nobu (クチーナ ノブ)」を経営している井上 浩延さん、妻の弥沙子さんを取材しました。

奈良県出身の浩延さんと愛知県出身の弥沙子さん、これまで富山には縁もゆかりもなかったお二人が南砺市への移住を決めたきっかけや、移住後の暮らしの変化、富山の魅力など、ありのままのホンネを語って頂きました。

井上 浩延さんファミリー

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2015年、神奈川県から南砺市にIターン移住をした井上さんファミリー。南砺市の地域協力活動へ参加したり、まちの魅力を発信する「地域おこし協力隊」として活躍。その後、2018年に古民家を改装したイタリアンレストラン「Cucina Nobu (クチーナ ノブ)」をオープン。地元食材を使ったこだわりのピッツァやパスタを提供している。現在、9歳と3歳の子どもたちの育児にも奮闘中。


┃南砺市に移住をしようと思ったきっかけは?

《井上浩延さん》移住のきっかけは、「「なんと移住体験ツアー」に家族で参加したことですね。私たちは神奈川県で結婚をして、子どもが生まれて、その当時は私もイタリアンのお店で修行をしていたのですが、子育て環境のことや、いずれ自分の店を持ちたいという夢もあり、ゆくゆくは家族で自然の豊かなところで暮らしたいという想いがありました。

ちょうどその当時は移住ブームの始まりで、まだ多くはなかったのですが、いくつかの自治体が移住体験ツアーやイベントを実施されていました。そこで偶然、南砺市を見つけたんです。これまで北陸には縁がなかったので、富山県には全く訪れたことがなくて。


《井上弥沙子さん》まだ北陸新幹線が開通する前だったので、「北陸ってどんなところなのかな?」って。ほんと軽い気持ちで参加しましたね。家族旅行でも行こうかって感じで(笑)


-----ほんと偶然、南砺市を見つけられたのですね!移住体験ツアーに参加されて、何かピンとくるものがあったのですか?


《井上浩延さん》そうですね。ツアーに参加しているときは、とにかく楽しかったのを覚えています。みんなで何かをやることが、とても新鮮に感じました。イベントのためにみんなで郷土料理を作ったり、餅つきをしたり……地域の人達みんな仲良さそうにやっていて。いつもは控えめな娘(当時3歳)も、楽しそうに子どもたちの輪の中に入っていったので、空気感が合うのかなと感じましたね。

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《地域行事:獅子舞》


┃南砺市に住み始めた当初、どんな印象でしたか?

《井上浩延さん》お水が美味しいなって思いました。水道水も美味しい!都会に住んでいた時は蛇口に浄水器をつけちゃっていました。そのまま飲む習慣ってなかったので。


-----確かに、都会では水道水をそのまま飲む習慣はないですよね。私も関西に住んでいた頃は、わざわざスーパーで水を購入していました。富山では、水を買う感覚ってあまりないですよね。


《井上弥沙子さん》そうですね。水は美味しいし、空気もキレイ。あと星空。移住した当初は山の方に住んでいたので、端から端まで星空がキレイに見えてとても感動しましたね


-----素敵!!街灯が少ないので、星空がキレイに見えるのですね。ちなみに子育ての面では、どんな印象を持ちましたか?


《井上浩延さん》ちょうど子どもが保育園に入るタイミングで南砺市に移住したのですが、1ヶ月前くらいに申込みをしたら、待機児童もなく「すぐ入れますよ」と言われて。以前住んでいたところでは待機児童数も多く、ずっと子どもを保育園に入れることができなかったんです。だから、働きたくても働けない。既に仕事を持っている人優先なので、これから仕事を探そうとしている人は、子どもを預けられないから探せない……そんな状況でした。


《井上弥沙子さん》一神奈川に住んでいたとき、一度だけ近くの保育園に電話をかけたことがあるのですが、「今キャンセル待ちの児童が20名以上います」と言われて。市町村によってはすぐに入所できるところもあるのかもしれませんが、私達の住んでいた地域では難しかったですね。だから、南砺市では待機児童の問題がないので、とても助かっています。下の息子も、生後半年から保育園に預けることができました。


-----何の心配もなく、保育園に預けることができると嬉しいですね。待機児童数の少なさは、子育て世帯にとっての大きな魅力かもしれませんね。


《井上浩延さん》ちょっと保育料の値段が高い保育園じゃないと空いていないとか、ちょっと自宅から離れた保育園じゃないと預けられないとか、そういう部分にコストをかけなくていいのはメリットですね。

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┃移住前と後で、変わったことはありますか?

《井上浩延さん》移住前とは仕事が変わったので、ライフスタイルもガラリと変わったのですが、一番感じる変化は子どもや家族と過ごす時間が増えたことですね。今はお店をやっているので、どうしても夜が遅くなってしまうのですが、子どもたちが夕方に帰ってきたときに顔を見ることもできますし、子どもとの触れ合いは増えたと感じています。


-----子どもたちも、帰ってきてお父さんの顔を見ることができるのは嬉しいですね。休日の過ごし方は何か変わりましたか?


《井上浩延さん》休日は二人ともじっとしていられないタイプなので、よく県内外いろいろな場所へ出掛けています。この前も立山アルペンルートに行きました。移住当初は、五箇山にもよく行きましたね。


《井上弥沙子さん》南砺市は季節ごとのお祭りも多いので、そういうお祭りやイベントも楽しんでいます。あと意外と地域行事も多いので、休日は草刈りや水路の江浚い(えざらい)などに参加することも多いですね。

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《料理教室の様子》


《井上浩延さん》実は移住前は、もっとのんびりした暮らしを想像していたんです。よく言うスローライフというか。でも、実際は全然のんびりではなかったですね(笑)こっちの人達は、休みの日も畑作業をしたり、町内の行事に参加したり、逆によく動くんですよ。だから、私達ものんびりさせてもらえません(笑)


-----地域行事が多いのは田舎ならではかもしれませんね。それだけ地域での結束が強いのかもしれません。やっぱり地域の住民同士の繋がりは深いと感じますか?


《井上弥沙子さん》そうですね、最初は恥ずかしがり屋なところがあるのかなと思いましたが、仲良くなるとすごく深いです。何かあるとみんな自分のことのように心配してくれます。ご近所の方も、「これ作ったから食べて」と季節の食材をたくさんおすそ分けしてくださることもあったり。富山のおすそ分け文化ってすごいなと思いますね。


┃富山の魅力は何だと思いますか?

《井上浩延さん》自然が多いことが一番かな。水と空気、人の温かさも魅力だなと思います。あと、四季がはっきりしているのが好きですね。夏はしっかり暑くなって、冬は雪が降って寒くなる。春夏秋冬、どの季節も感じることができます。だから毎年、冬の終わりには春が待ち遠しくて嬉しくなるのです。


-----四季がはっきりしている富山では、その季節ごとでの楽しみ方がありますね。


《井上弥沙子さん》私は道の駅に行くのが好きで。季節の山菜や野菜がたくさん出ているので、とても面白いです。「何だこれ?」というような山菜を見つけることも。


《井上浩延さん》あと、かぶら寿司も。お世話になっている方にかぶら寿司を頂いて、初めて食べたんですけど、すごく美味しくて感動しました!こんなに美味しいものがあるんだって。だから、冬のかぶら寿司の季節が近づくと楽しみで仕方がないんです。「そろそろ、かぶら寿司の季節ですかね?」とつい催促しちゃいます(笑)

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-----かぶら寿司、美味しいですよね。毎年冬の楽しみの一つなのですね。


《井上浩延さん》南砺市には、自家製の味噌を作ったり、干し柿を干したり、梅干しをつけたり……昔ながらの保存食を作っている人も多いので、とても面白いなと思いますね。うちのお店で提供しているピッツァも、塩麹を入れて作っています。せっかく南砺市でお店を開くのだから、ありきたりのものじゃなくて、南砺市ならではの食材を使いたいという想いがあったので。

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《お店の外観》

┃これから挑戦したいことはありますか?

《井上浩延さん》お店のピッツァ窯はもともと自分で作ったのですが、もう一つ小さめのピッツァ窯をケータリング用で作りました。そのピッツァ窯は、移動式タイプで車に載せることもできるんです。暖かい季節になったら、そのピッツァ窯を使って庭でBBQを楽しめたらいいなと思いますね。

-----素敵ですね!そんな貴重な体験ができるなんて、お子さん達も幸せですね。


《井上浩延さん》自然の中で教育できることが魅力ですね。都会に暮らしていると、なかなか体験できないことも多いですし。本やテレビで情報として見ていても、それが現実にあるものとしてイメージが沸かないんじゃないかな。薪を割ったり、火を燃やしたり、実際に体験することで自然と身につくと思いますし、大切なことだと思います。


-----暮らしの中で体験できるのは、子ども達にとって学びになりますし、良い刺激にもなりますね。田舎ならではの経験ってたくさんあるので、この地域に住む特権だなと改めて感じます。


《井上浩延さん》そうですね。ここでの暮らしを通して、子どもたちが成長していく姿を見るのが、今は一番楽しみですね。あと、やっぱり富山市や金沢市など中心部から南砺市に人を呼び込めるようなお店にしていきたいです。東京からみて富山は田舎だと感じるように、富山市や高岡市から見ると南砺市は田舎。まだまだ中心部から南砺市へ遊びに来る人は少ないんですよね。だから南砺市への人の流れを作りたい、お店がその役割を果たせるようになればいいなと。


《井上弥沙子さん》最近は少しずつ、富山市や金沢市などの中心部から来てくださるお客様も増えてきました。女性一人のお客様も増えてきて。一人でもふらっと入ってランチできるような、気軽に入れるお店にしていきたいですね。

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《ピッツァ窯づくり》

┃移住を検討されている方へのメッセージをお願いします。

《井上浩延さん》迷ったらすぐ動く!タイミングが大事!私達は、移住先を決めてわずか半年で実際に移住をしていて、南砺市以外のツアーは一切参加していません。南砺市のツアーから帰ってきて現実に戻ったときに、改めて良さを感じて。「あ~やっぱり良かったね。よし連絡をしよう!」と南砺市にすぐ連絡をしました。


《井上弥沙子さん》思ったら即決が一番。移住先で仕事はあるか、住む場所はあるか、などあれこれ考えていたら絶対移住できないと思います。私達も、ずっと勤めていた会社を辞めて、南砺市での仕事が見つかっていない状況でしたが、とりあえず移住することは決まったという感じで。よし、仕事見つけるぞ~って感じでした(笑)


-----仕事や住む場所の不安ってどうしても出てくると思いますが、井上さんご夫婦は、不安とか感じませんでしたか?


《井上浩延さん》なぜかその頃は、全て上手くいくという感覚がありました。第6感みたいな感じ。そのおかげなのか、移住してからいろんなことに恵まれて。お店の物件も、新聞に載ったことがきっかけで、大家さんから連絡を頂いて。ご縁あって、素敵な古民家をお借りすることができました。


-----お二人とも、運を引き寄せていますね!


《井上浩延さん》移住を即決した時から、運の巡りが良くなったような気がします。夫婦の間で意見が割れてしまうと難しいかと思いますが、どちらも「よし、行こう!」と即決するタイプだったので。移住を考えている方は、いいと思ったのであればすぐ動くことをオススメします。迷っていたらタイミングを逃してしまうかもしれないので。今は移住体験ツアーもたくさんあるので、上手く活用して実際の暮らしを気軽に体験してみるのも良いと思いますね。

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-----決断力って大切なのですね。最近ではオンライン移住体験ツアーなど、都会にいながら気軽に参加できるものが多くなりましたし、気になる地域の暮らしを体験してみるといいですね。


《井上浩延さん》富山が合うかどうかは人によって変わると思いますが、富山に興味を持った方はぜひ悩まず一度来てみてほしいなと思います。別に、富山への移住に人生を賭けているわけではないので。住んでみて自分と合わなかったら、また別の地域に移り住むことだってできるんです。だから、「移住」という言葉ではなくて「引っ越す」という感覚でいいんじゃないかなって。


-----引っ越すという言葉だと、気持ちのハードルは下がりますね。気軽に富山に来ることができるというか。


《井上浩延さん》「移住」だと、どうしても一大決心するような感覚になると思いますが、気軽に「引越しをする」レベルでいいと思います。ぜひみなさんも、ちょっと富山に引越ししてみませんか?


-----名言、頂きました(笑)思い立ったら吉日ということわざがあるように、自分の気持ちに正直に、すぐに行動するという井上さんご夫婦の姿勢は、とても大切だなと実感しました。富山に訪れた際は、井上さんご夫婦が笑顔で出迎えてくれるイタリアンレストラン「Cucina Nobu (クチーナ ノブ)」にも、ぜひ足を運んでみてください。

【ライタープロフィール】

千春さん写真 (4)

Chiharu

1985年生まれ。富山県出身。18歳で関西に上京し、大阪・京都・奈良にて12年間を過ごす。30歳のときにUターンで富山に移住。現在、小学生の男の子1人を育てるシングルマザー。
北陸の女性を応援するwebメディア「ワタシゴト」のママライターとして、
北陸のよいモノ・コト・ヒトを発信する活動を行っている。

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