知床周回シーカヤックの旅 第2章

ついに洋上へ漕ぎ出した。知床半島を右回りに進むので、半島が常に右手にある状態で進んでいく。

ウトロ側は断崖絶壁が続き、壁には海鳥たちが住み着いていた。これをみたときはジュラシックパークを見ているような気分になった。

出発した直後は、街の店で買ったスポーツドリンクなどを飲んで過ごしていた。これから人のいない地域に踏み入れるのに、水分補給は重要と思っていた。

ふと先輩を見ると、500mlのフルーツオレを飲んでいた。さすがだ。あんなに口がネバネバする飲み物をこれから水が貴重となる環境に行くのにかかわらず、ごくごく口にしていた。

出発してしばらくすると、マスの集まるポイントを発見した。早速、釣りの準備をする。海を見渡して見るとマスがウヨウヨしている。

マスの群れをめがけて2人してルアーを放り込む。すぐに先輩の竿にヒットした。これからサバイバルな旅をするのに貴重な食料だ。無事にキャッチし、食料を得る。

またすぐに、先輩の竿にヒットする。しかし、私の竿にはなかなかヒットしない。

これを見かねた先輩が、竿を交換してくれた。おそらくルアーの色が違うから、釣れないんだろうと先輩は言っていた。

竿を交換した途端、マスがヒットした。興奮した私はマスを逃さないように、力強く竿を立てた。次の瞬間、竿が折れた。3分割されバラバラになってしまった。力を入れて引っ張ったため、竿が折れてしまったのだ。しかも先輩の竿を。出発そうそうついてない。

竿は折れながらも、マスはしっかりキャッチし、自分の食料を獲得した。折れた竿は、ダクトテープで固定しなんとか使える状態に直しはしたが、釣りを楽しみにしていた先輩には申し訳ないことをした。不穏な空気が流れたまま半島周回に向けて再出発する。

1日目の行程は知床半島の先端の手前までだ。

途中若いクマを目撃した。こちらはシーカヤックで海の上なので安全だ。そのクマはマスを獲り、食べようとしていた。しかし、カラスに横取りされていた。気の弱いやつなのかな。

午後3時くらいには漕ぎ終え、1日目のキャンプ地に良さそうな浜を探して上陸した。

日のあるうちにテントなどを設営し、寝る準備をしておかないと、すぐ暗闇になってしまう。

しかし、ここで重大な問題が発覚した。

テントを張ろうとしたら、テントの骨組みになるはずのポールがない。いくらシーカヤックの中を探しても出てこない。

シーカヤック出発前の野営場に忘れてきたのだ。

このままでは、野宿になると思った矢先、先輩がツェルトがあるから大丈夫だ。と言った。

ツェルトとは、緊急用のテントみたいなもので、遭難した時など、雨に当たらないように屋根にしたりする、テント生地の布見たいなものだ。

緊急でもなんでもないのに、緊急用テントを使うことになった。ツェルトは屋根部分しかないので、雨に当たらないだけで、ほぼ外だ。

ツェルトの両サイドに海岸に落ちている丸太をたて、それにロープをくくりつけてツェルトをテントのように張る。これがイメージできなければグーグルでツェルトを検索すると出てくるはずだ。

とりあえず、寝床は確保した。午前中に釣っておいたマスを晩飯で食べる。マスはホイル焼きにし、持ってきたジャガイモと一緒に食べる。ご飯を一緒に食べたいところだが、サバイバルツアーなのでそんな甘ったれたことは口にしてはいけない。

一通り食事をして、することもないので、寝ることになった。

ツェルトはただ屋根があるだけで、ほぼ外なので、虫が入り放題だ。蚊が顔の周りを飛んで鬱陶しい。それでも寝れてしまうので、なかなか疲れていたのだと思う。

しかし、またここで緊急事態発生。

深夜になり波の音がかなり近づいてきたのだ。先輩も同じ時間にそれを察知し、飛び起きた。ツェルトの外に出てみると、海がすぐそこまできているではないか。

このままでは就寝中にシーカヤックに乗らず海に出ることになるので、急いで荷物を陸側に上げ、ツェルトを一旦撤収し、より高い位置に貼り直す。

サバイバルしてる感がすごい。ただのミスってだけだが。

熊もいる環境で、しかも深夜の暗闇の中、慌てて寝床をずらす経験なんて今後することはないだろう。

ツェルトを貼る位置は、潮が満ちてきても大丈夫な位置に貼ったつもりなのだが、予想が甘かった。知床をなめてはいけないと思い知った夜だった。

こうして知床半島周回1日目は終了した。長い一日だった。

2日目はついに知床岬を超え反対側の羅臼側に出る。果たしてどうなることやら。

続く。




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