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インスタで万垢を大量に生んだ人事がTikTokでも当てちゃった話。

僕のメンバーに過去にTikTokで100万回再生を連発させていた男の子がいて、その子曰く「絶対に『人事の樋田さん』でバズらせることができます!だからTikTokやらせてください!」とのこと。

ということで、約3ヶ月前くらいからTikTokのアカウントを運営し始めた。

が、一向に伸びない。

運用を初めて最初の2週間。まあ初速はこんなもんだろうと。

さらにそこから1ヶ月が経過してやや倍増。思っていた(当人が伸びると言っていた)よりも伸びがよろしくない。ただ当人が「絶対にいけます!」と言い張るのでまだ様子見。

そしてそこからさらに2週間。

「いやおい!?怒」

びっくりするくらい伸びていない。というか、ここまでの僕の演者としての時間を使っての投資対効果としては異様なほどよろしくない。

※ちなみに、ここまでのアカウントの方向性はこんな感じのもの。やや醜態を晒しており、他の経営幹部陣からは「とい、よくやってるな…俺やったら絶対に無理やわ…」とコメントをもらうほどです。笑

もはや1周回って恥ずかしさなんてものは存在していないのだが、流石にこれだけ伸びていないのは僕としても尊厳が脅かされる。ということで、完全にテコ入れ。まだテコ入れして1投稿しかしていないのだが、コンセプトから見直して実行した結果がコレ。

そのテコ入れした投稿がコレ。

@jinjino_toidasan

ESにガクチカなんて実はいらんのよ。質問くれたらガチ返信するで。 #就活 #ガクチカ #長期インターン #イカれ人事

♬ Piano music and BGM that match the emotional scene(1291542) - syummacha

大前提、僕は「人事」である以前に経営幹部であり、人事の前にやっていたのはゴリゴリのビジネスサイド。特にインスタのコンセプト設計をメインで担うチームの責任者をやっていた。

ちなみに、これまでに立ち上げてきたアカウントの数は100を超えていて、その中から1万フォロワーを達成しているものもゴロゴロある。10万を超えたものは5個くらい。

ということもあり、今回はどんな思考プロセスでリブランディングを図ったのかを軽く書いていこうと思う(絶賛インフルでそんなに頑張って書けないので、詳細が気になる!ってコメントが多かったら続編書きます、気が向いたら)

①フォローされるアカウントは「〇〇×〇〇」の要素がある

インスタだろうがTikTokだろうがX(Twitter)だろうが、いずれのSNSであったとしても、フォローされるアカウントは決まってこの特徴を満たしています。SNS運用をやろうと考えている人事さんであれば、まずはこの要素が満たされているのか否かを意識してアカウントの設計をやっていきましょう。

その要素というのが「便益性」と「独自性」です。

いずれもそのままの意味ですし、特別なことは言っていません。しかし、この2つの要素を満たしていなければSNSを伸ばすことはできませんし、ただの自己満足に終わってしまいます(初期の「人事の樋田さん」がまさにコレ)

便益性というのは、コンテンツを受け取るユーザーにとって便益があるのかどうか。まず自分にとって有益だと思えなかったら、コンテンツを「いいね」も「保存」もしてくれません。特にこれだけ「Googleからインスタに」とか、「情報収集のあり方が変わった」とか言われている現代において、全てのコンテンツに求められるのは「便益」があるのか否かです。これは絶対に外せない要素ですね。

また、便益があるだけだと「コンテンツを享受するためだけのアカウント」に成り下がってしまうのが怖いところ。フォローするにまで至らないんです。ここでもう1つ大切になるのが「独自性」の観点。他のアカウントとどう違うんですか?という問いにいかに答えられるのかが重要です。

つまり、以下のような解釈ができます。

Q. 便益があって独自性のないアカウントは?
A. コンテンツは保存するが、そのアカウントはフォローする意味がない。

Q. 独自性があって便益がないアカウントは?
A. 面白いけど継続的に見る意味がないからフォローしない。

Q. 便益も独自性もあるアカウントは?
A. ためになるし、このアカウント以外では得られないからフォローする。

このような構造になっているため、便益性と独自性との2つの要素を充足させるアカウントを設計する必要があるのですね。

②ターゲットとペルソナを考えてみる

ここから先は普通のマーケティング的な話になるので軽く進めます。

便益性を見出すためにターゲットを考えていきます。今回のアカウントは「自社の長期インターン生を採用するため」に立ち上げたアカウントなので、ターゲットは以下のように絞られていきます。

・関西に住んでいる大学生
・性別/年齢/学歴の如何は問わない
・今の自分を変えたい/このままだと大学生活が終わっちゃう

まあ、うちに長期インターン生として入社する子たちのあるあるパターンですね。これだけ情報が飽和した時代になると、以前よりもさらに不安を抱えている学生は多いことでしょう。ということで、実際に入社したインターン生の中でも、最近入ってきた子に絞ってペルソナを作り込んでいきました。

・同志社大学の3回生の女の子(第一志望は神戸だったが落ちて同志社)
・周りよりもちょっと早く就活に取り組み始めている
・周りの子たちよりも早く動いている自分に自信がある
・情報感度は高い方だと思っている
 (もうちょっと細かく出しましたが一旦これくらい)

ペルソナを組んでいくときによくありがちなのがジオグラ・デモグラ的な情報に重きを置きすぎて、結局ペルソナのことをよく理解できない状況に陥るアレです。

大切なのは「何に困っていて、何に不安になっていて、何を解決したいと思っているのか」という点を解像度高く見出してあげることにあります。

上のペルソナの場合だと「絶対に誰よりも就活を成功させて、良い会社に入ったんねん」という欲求が最強に強いため、周りとは一味違う形での何かにものすごく惹かれやすく、完璧主義的に物事を進めたいという感情から失敗しない選択を誰よりも好みます。安定的な「公務員」という選択ではなく、メガベンチャー的な会社に入ることをステータスだと思い込んでおり、でも自分の中に確固たるガクチカ的なものを持ち合わせていない自負はあるため、そのために徹底して情報収集して「勝てる状態」にまで自分を持ち上げようとしている。みたいな状況だと推察されます。

③ペルソナは何を望むのか

なんとなくわかるかと思いますが、ペルソナはわかりやすく「就活で無双するための情報」を求めていることがわかります。

・人事はこう思っているんだよね
・こういう学生は目に留まりやすいよね
・こんな子だったら働きたいと思うよね

といった生の情報を求めています。また、かなり情報収集をしてきていることは間違い無いので、そこらへんでありつけるような情報は求められていないことが容易に想像できます(この時点で若干の独自性にも目が向いていきますね)

④他の人事アカウントを押し並べて観察し、”普通”を定義する

何を発信するのが良いのかのイメージが湧いてきたら、それに類するアカウントをリサーチしていきます。すると、以下のような特徴があることがわかりました。

・一人語り形式で画面に向かってTipsを話すことが多い(〇〇な学生3選、みたいな)
・実際の面接の風景を切り取ってフィードバックする形式でTipsを届けるものも多い

独自性を見出していく上で大切なのは「普通」を定義して、その普通から逸脱させることです。独自性があるというのは言い換えると差別化ができているということなので、差別化をする上でもどんなアカウントや投稿のフォーマットがこのマーケットにおける普通なのかを見つけていきましょう。

今回だと絶対にやってはいけないのが以下のパターンだと考察しました。(マーケットの中の普通だからやってはいけないという意味)

・画面に向かって一人で話すスタイル
・面接やGDの様子を切り取って話すスタイル

逆に言えば、これ以外のフォーマットで便益を届けることができれば、理論上は伸びるという仮説が立ちます。

⑤別ジャンルで踏襲できそうなフォーマットを探す

やってはいけない(普通)のフォーマットが分かった上で、次に実行したのが「TikTokの中で受けているフォーマット」を探し出すことです。

僕はTikTokのプロでは無いため、このフォーマットなら伸びる、という答えを残念ながら持ち合わせていません。ということで、すでに伸びているフォーマットで、やろうとしていること(便益)に限りなく近いフォーマットを探すことにしました。

今回目をつけたのは「ホストクラブ」のアカウントです。めちゃくちゃ多いんですよね。しかもずっとバズっている。

https://www.tiktok.com/@yuki__tachibana?_t=8iByrk64LGU&_r=1


https://www.tiktok.com/@hiromun8?_t=8iByxOmtWZG&_r=1

この人たちを中心に、ホストさんたちの日常を発信しつつ、その中で問題解決をしていく、という構図がウケがいいことがわかりました。

ということで、この人たちのフォーマットをTTPして動画を作っていきます。

⑥要素を組み合わせていく

まず届けたい便益は以下の通り。

・就活を本気で勝ちにいきたいと思っている子たちに、人事から見た就活でガチで無双できる情報を提供する
・世の中に落ちているようなありきたりな情報を斬っていき、本質的に重要だと思われる情報を発信する

差別化としてはこんな感じ。

・人事の顔は出さなくてOK(人事の顔が見えているだけで胡散臭く見える)
・日常の会話の中でTipsを盛り込んでいく構造(ホスト垢から踏襲)
・短い必要はなく、しっかりと情報を余すことなく伝える(端的に伝えると浅く聞こえる)

この結果生まれたのが『イカレ人事が今日も斬る』というコンセプトです(そのままアカウント名にしました)。言葉にしやすい(語呂が良い)のも良いですし、人事であることも伝わりますし、「イカレ」という単語から普通じゃ無いことも伝わりますし、「斬る」という単語から現状をぶった斬ってくれることもイメージが湧きます。

⑦とにかくスモールスタートしてみる

ひとまず上記のコンセプトを考えて、その5分後には撮影を開始し、撮影が完了したすぐ後から編集を開始。そのまま編集が完了して投稿してみました。

そもそもこのコンセプトが伸びるのか否かがわかりませんし、その答えがわかるのはマーケットに投下したあとなのです。インスタの運用をやっていたときもその鉄則を重々理解していたので、とにかく方向性を決めたらGoしてみる。数字的なフィードバックをもらったら答えがわかる。そんな信念を持ってやっていました。

ダメだったら、また変えたらいいだけなんで。SNSなんてそんなことの繰り返しですからね。

さて、実際にどうだったかというと、インサイトはこんな感じ。

ほとんど編集に時間をかけず、また台本もない状態で動画を作ったため、何話しているのかよくわからない動画になってしまいましたが、それでも1本の動画でフォロワーは50人以上の増加。

これまでにも7万再生された動画はあったのですが、そのインサイトはこんな感じ。

明らかに「いいね」や「保存」の付き方に差が出ました。また1番大きい違いはオーガニックのコメントがついたことですね。

このスクショ以外に3つくらいついてて、めちゃくちゃ真面目に返信しておきました(ちなみに、これまでの動画についていたコメントは全て社内の人間が優しさでつけてくれていた意味不明コメントたちです。笑)

⑧振り返りもしておく

今回の動画での反省点と次回の改善事項はこんな感じ。

・余すことなく伝えると言ったが、それにしても長かった(動画は2分半。1分半くらいに収めたいところ)
・台本なしは流石にきつい(同じこと2回言ったり、変な言い回しになったり…恥ずかしい…)
・イントロのキャッチはもう少し工夫の余地があった(もうちょっと尺取って魅力づけできた)
・エンゲージメント率が高かったので方向性は変えなくてOK
・キャプションに最初から「質問あったらガチで返信するで」って入れておけばよかった(途中で編集して入れた。コメントで滞在時間稼げるはず。)

結局、細かくpdcaを回していくしか選択肢はないので、ひたすらこの改善を繰り返してやっていくしかないかなと。まあでも一発目の変更でここまで当てることができたので、人事でSNSやろうと思っている人にとって参考になったら嬉しいです。


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