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群論入門part3 位数と巡回群と位数

part4がなくても怒らないでください
※群論入門part2「対称群」はこちら
※誤植間違いがある可能性は0ではないため各自確認しながらお読みください。また教えていただけると嬉しいです

3.1.(群の)位数

定義1(群の位数)
群Gの要素の数(集合論でいうGの濃度)を群Gの位数といい、|G|と表す。

定義2
群Gに対し、|G|が有限値であるときGを有限群といい、有限群でないときGを無限群という。

例1
整数全体からなる集合ℤは足し算に関して群をなす。ℤは当然無限集合であるため、無限群となる。

例2
3次対称群S₃は6つの元からなる集合であるから、|S₃|=6であり、有限群。


3.2.生成される部分群

定義3
Gは演算・によって群をなしており、Hは群Gの部分集合であるとする。Hが演算・によって群をなすとき、Hを群Gの部分群であるという。

例3
3次対称群S₃について、恒等写像e、1,2,3を2,3,1に並び替える置換をσ、1,2,3を3,1,2に並び替える置換をδとすると、
集合A₃={e, σ, δ}は S₃ の部分集合であり、置換の合成に関して群をなすため、A₃={e, σ, δ}は S₃ の部分群となる。

命題1
定義3は次と同値。
●群Gの部分集合Hについて、
(i)HはGの単位元eを含む
(ii)HはGの演算・によって閉じている(つまり、a,b∈H ⇒ a・b∈H)
(iii)各元a∈Hに対し、HはaのGにおける逆元a⁻¹を含む(つまりa∈H⇒a⁻¹∈H)
が成り立つ。

証明
まず、HがGの部分群ならば(i)~(iii)が成り立つことを示す。
(i) Hは演算・について群となるので群Hにおける単位元e' が存在する。
一方、任意のHの元はGの元でもあるため、Gの単位元eとHの元hを用いて
e・h=h, e'・h=hが成り立つ。すなわち、e・h=e'・h。
両辺の左からhの逆元をかけることで、e=e'を得る。
(ii) 群の定義(群論part1の定義1「集合Gにおいて演算G×G→G:(g,h)↦g・hが定義され」の部分)から成り立つ。
(iii) Hは演算・について群となるので、各元a∈Hに対して群Hにおける逆元bが存在する。また、aは群Gの元でもあるから群Gにおける逆元a⁻¹も存在。
逆元の定義から、a・b=e, a・a⁻¹=eが成り立つのでa・b=a・a⁻¹。この式の両辺の左側からbをかけるとb=a⁻¹を得る。

次に(i)~(iii)が成り立つならHがGの部分群であることを示す。
(i)から単位元の存在がわかり、(ii)から演算・がHにおいて群を定義するするのに適していることがわかり、(iii)から逆元の存在もわかる。また、Gは演算・についての群であるから、Gにおいて演算・は結合法則を満たしている。HはGの部分集合であるから特に演算・はHにおいても結合法則を満たす。以上からHは演算・について群となる。▢

命題2
定義3は次と同値
●群Gの部分集合Hについて、
(iv)Gの演算・に関して、a, b∈S⇒a・b⁻¹∈H
が成り立つ。

証明
過去に投稿したこの記事を見てください(手抜きじゃないです)


定義4(指数法則)
群Gの元aと1以上の自然数nに対し、
aⁿ=a・a・...・a(aを演算・でn回かけた)
a⁰=1
a⁻ⁿ=(a⁻¹)ⁿ
と定義する。

(指数部分の上付き文字はwikipedia「上付き文字」からコピペして使っているため、不自然にずれたりすることがあります)

命題3
aⁱ⁺ʲ=aʲ⁺ⁱ=aⁱ・aʲ , (aⁿ)⁻¹=a⁻ⁿ

(証明はとても簡単であるため省略)


定義5(生成された部分群)
群Gの部分集合Sについて、
〈S〉={x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏ | x₁, x₂, ..., xₙ∈S, i, j, ..., k=±1}を
Sで生成された部分群という。

(定義5は大変読みづらいと思います。申し訳ありません。noteの限界なんです)

命題4
(i)〈S〉はGの部分群である。
(ii) S⊂H を満たす任意の部分群 H は〈S〉⊂H を満たす。

証明
(i) x₁, x₂, ..., xₙ, y₁, y₂, ..., yₘ∈Sとi, j, ..., k, r, s, ..., t=±1に対し、
 (x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏ)・(y₁ʳ・y₂ˢ・...・yₘᵗ)⁻¹
=(x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏ)・(yₘ⁻ᵗ・...・y₂⁻ˢ・y₁⁻ʳ)
=x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏ・yₘ⁻ᵗ・...・y₂⁻ˢ・y₁⁻ʳ
これは〈S〉の元だとわかるから命題2より〈S〉はGの部分群。
2021/08/19:間違いを訂正しました(誤:y₁⁻ʳ・y₂⁻ˢ・...・yₘ⁻ᵗ、正:yₘ⁻ᵗ・...・y₂⁻ˢ・y₁⁻ʳ)

(ii) S⊂Hから〈S〉⊂〈H〉だとわかる。(実際〈S〉の元xを1つとると
x=x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏとなるx₁, x₂, ..., xₙ∈S, i, j, ..., k=±1が存在するが、
S⊂Hよりx₁, x₂, ..., xₙ∈Hとなり、x∈〈H〉)
また、Hは群であるから x₁, x₂, ..., xₙ∈H ⇒ x₁ⁱ・x₂ʲ・...・xₙᵏ∈Hが成り立つ。(命題1(ii)や命題2を繰り返し適用すればわかる)
よって〈H〉=Hなので〈S〉⊂H。▢

(読みづらいわ!というご意見が今後来ましたら、再編集するかもしれません)

Rem
S⊂Gが有限集合のとき、すなわちS={x₁, x₂, ..., xₘ}と表されるとき、
〈S〉を〈x₁, x₂, ..., xₘ〉と表す。

例4
整数全体の集合の足し算についての群ℤ={..., -2, -1, 0, 1, 2, ...}に関して、
{2}はℤの部分集合であり、{2}で生成された群〈2〉は
〈2〉={..., -4, -2, 0, 2, 4, ...}={2n | n∈ℤ}となる。


3次対称群S₃に関して、1,2,3を2,3,1に並び替える置換をσ、1,2,3を1,3,2に並び替える置換を τ とするとき、〈σ〉,〈τ〉,〈σ, τ〉をそれぞれ求めよ。
(解答を有料記事(100円)で投稿しました。ただし、ヒントは無料で閲覧可能です)


3.3.巡回群と(元の)位数

定義6(巡回群)
群Gと元a∈Gに関して〈a〉を巡回群という。

命題5
〈a〉={aᵏ | k∈ℤ}で表される。

証明
逆元の定義からa・a⁻¹=a⁻¹・aとなることを踏まえると、
〈a〉の任意の元は0以上の整数 i, j を用いて
a・a・...・a・a⁻¹・a⁻¹・...・a⁻¹
=aⁱ・a⁻ʲ=aⁱ⁻ʲとなり、i-jは整数のため題意を得る。▢

例5
有理数全体から0を除いた集合ℚは掛け算について群となる。このとき
〈2〉={2ᵏ | k∈ℤ}は位数が可算無限な巡回群となる。

Rem(少し重要)
例5のように、「巡回群」という名前にもかかわらず無限群であるものが存在する。

例6
3次対称群S₃に関して、1,2,3を3,1,2に並び替える置換をδとすると、
〈δ〉は例3で出てきたA₃となる。

Rem
例6のA₃にように、群の部分群でもあり巡回群でもあるものを巡回部分群という。


定義7(元の位数)
群Gの元aと単位元eに対して、aⁿ=eを満たす最小の自然数nをaの位数という。ただし、aⁿ=eを満たす自然数がない場合は、aの位数は∞またはaは無限位数であるという。

例7
例6に登場した3次の置換 δ の位数は3。
2021/08/19:間違いを訂正しました(誤:位数は2、正:位数は3)

命題6(群の位数と元の位数、タイトル回収のつもり)
群Gの元aの位数がnのとき、巡回群〈a〉の位数はnになる。

証明
aの位数がnのとき、自然数 i に対しaⁿ⁺ⁱ=aⁿ・aⁱ=e・aⁱ=aⁱだから〈a〉の位数はn以下であるとわかる。また、1≦ h<k ≦n-1を満たす自然数 h, k に対し、1≦ k-h ≦n-1となるため、元の位数の定義から aᵏ⁻ʰ ≠e。
よってaᵏ ≠ aʰ となるから e, a, a², ..., aⁿ⁻¹はそれぞれ異なるので〈a〉の位数はn以上だとわかった。したがって〈a〉の位数はn。▢


ここまで読み進めてきた方、お疲れ様です。僕だったら途中で挫折すると思うので、本気で尊敬します。では最後にRemarkを1つ。

Rem
かなり先の話ではあるが、実は位数が6の群は、位数6の巡回群に同型な群か3次対称群に同型な群しかない。(同型の定義はいつか与えます)すなわち、どんなに頑張って奇抜な位数6の群を見つけても、それは所詮、位数6の巡回群か3次対称群に同型である、ということである。


以上

part4を投稿しました。可換群や一般線形群の定義をしました。


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