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冲方塾 創作講座26 物語

今回の講義は物語、すなわち「連想と再定義」となります。
連想とは何か、なぜ人は連想するのか。連想というのは、ある物事を見ると別の物事を想像し、相互に結びついたものであるという認識を持つことですね。
たとえば椅子がぽつんと置かれているといろんなものを連想するわけです。机はどこかなとか、誰の椅子かなとか、誰が座るのかなとか、片付けるの忘れたのかなとか、いろんなことを考えるわけです。
こうした連想というものはあらゆる物事を定義づける行為でもあります。
たとえば椅子を見ると座るもの、座るものを見ると、日本だと席順、社会的な地位を示すものとか、高い椅子を見ると経済的な豊かさとか、ボロボロのちっちゃいパイプ椅子を見ると小学校の頃を思い出すとか、いろんな連想をするわけです。
これら一つ一つが定義付けとなります。自分が生きている環境、自分が今いる環境を体系化し、意味があるもので埋め尽くす、いわば世界の地図作りです。全く連想が働かない、変なものが置いてあっても、人間はそれが何であるか認識できないわけです。
よくSFやファンタジーで使われるのが、突然変なものが現れて、これはなんだろうと疑問を抱かせてのち、なるほどと納得させる手法ですね。
ある日空から変なものが降ってきて、それがなんであるか、議論し合うとか。
あるいは、ある人物を描写するときに、素頓狂で意味のわからないことをし始める。そうするとこっちは連想が働かなくなるので、その人の意味もわからないし、行為の意図もわからない。どうしたらいいかもわからない。
つまり自分の心の中に地図があって、それに従ってしか認識や行動ができないということです。
地図はほとんどが、その人が属する社会と文化によって作られます。
具体的にそのような地図をみてみましょう。
まず一つ目、易経。森羅万象図です。
これは皆さん韓国の国旗で見たことがある方もいるかと思いますけれども。易というのは世界の心理みたいなもので、中心的な教義、ある種の哲学ですね。
昔の古代宗教に類するもので、この模様の意味は陽と陰。これは有名な図で、陰と陽が一体化している。
無から陰と陽が生まれた。陰と陽が組み合わさっていろいろなものが生まれた。という世界の成り立ちを示しています。

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