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冲方塾 創作講座24 人物描写

さて、これまで時間感覚と言うものに着目してお話ししてきました。
時間感覚、価値と言うものに対して倫理的に正しい「エシカル」という考え方がありますというお話を前回の講義でしました。
この倫理的に正しいと言うのは、一体どういうことか。これは「感情」なんですね。エシカルというのは、法律的に正しいとか経済的に正しいとかではないんです。感情的に正しいことを求めています。
たとえば動物の毛皮の不買運動。
動物の毛皮を使うことで別に罰せられるわけでもなければ、動物の毛皮を使うことでものすごい経済的な不利益を被るわけでもない。単純に感情的に嫌なわけです。
生きている動物の皮を今更はがなくたってほとんど同じものを、模造品が作れるのだから、生き物の皮をはぐ必要はないんじゃないかと。
プラスチックゴミの否定もそうです。プラスチックを捨てることは法律的に禁止されている側面もありますけれども、だから嫌だと言っているわけではない。むしろこのプラスチックゴミはいろんな意味で法律的に許容されたものであったわけですね。
逆に、清潔だし、加工できるし、腐らないしという点で、たとえばプラスチックの袋だったら大量に投棄しても問題ないと言われていた時期もあったわけです。
つまり法律的に間違っているわけでも、否定しているわけではないんですね。でも、もうだめでしょう、もうこれは不愉快でしょう、もう嫌でしょうという感情的な問題になるわけです。
人種とかLG BTとか身障者に対する差別も、多くは感情的な論点が重要となります。
というわけで、いよいよ描写の最も重要なポイント、「感情」に入ります。
五感の描写、時間感覚の描写、価値の描写をこれまで学んでこられました。
しかし、これらを描写するだけでは人間を描写したことにはなりません。
命題・反論・解決、これも皆さん学ばれました。
どんな解決も、万人が必ず納得するとは限らない。
なぜなら人間にとって極めて重要な要素、「感情」というものがあるからで、これが描写に本当の力を与えるわけです。
今回、広告文を皆さんいろいろご覧になったと思うんですけれども、必ずしも数字とか時間感覚だけを刺激していないものもあったと思います。
なぜそうなのか? それを今日はじっくりと学んでいきたいと思います。

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