Jリーグ中断の心身への影響

ここ数年、趣味の幅を減らして来た。

以前からサッカー・野球観戦はもちろん行っていたしサイクリング・飲み歩き・街歩きにも良く出かけていた。ドラマ・アニメも今より見ていたし漫画も面白いと物は片っ端から購入した。料理も凝った物を良く作った。逆にサッカーに関しては今より熱狂的では無く、行けたら行く程度だった。特に関東に住み始めてからは大分トリニータの試合も年間2~3試合程度しか行かなくなっていた。妻と結婚してからもお互いの趣味を尊重し、浅く広く趣味を楽しむ日々がしばらく続いた。

結婚して3年後の2016年夏に子供が産まれた。

夫婦共働き、協力して子育てをする日々が始まった。妻は翌年春から職場復帰しフルタイム勤務。互いの両親はどちらも大分県。気軽に助けは求められない。どちらかが必ず子供を見ていなければならない。やらなければならない家事も増えた。それと同時期に仕事も忙しくなり休日が減った。その頃から趣味に使う時間も減っていった。

まず最初に諦めたのは外に出る趣味。休日、目を離せない子供を妻一人に任せて丸一日外出するのは流石に気が引けた。僕は休みが不定期だが週末が休みの時はなるべく自分が子供を見た。親には子供から離れる時間が必要なのだ。離乳食・自分たちの食事なども休日に作り置きしていなければ平日苦しむのは自分たちだ。休日は平日の準備と妻の体力回復に当てられる。スポーツ観戦・サイクリング・飲み歩き等ははこの時期ほぼ行かなくなった。

外に行かなくなった分、自宅でアニメ等を見れるかと思ったがそうも行かなかった。子供を見る=見てるだけというわけではない。目が離せない。オムツが濡れてたり、お腹が空いたり、暑かったり寒かったり、様々な理由で子供は泣く。親は理由が泣いている理由がわからない(途中からある程度分かり始めたが)。手を変え品を変え、泣き止んで落ち着いたと思ったら泣く。一日がその繰り返しだった。昼寝をした時間に少しでも家事を進めて置かなければ何もできない。時間が無い。録画したアニメを全く消化しきれず削除する日々が続いた。

子供が1歳半になった頃からコミュニケーションが取れ始め、自分で食事を出来るようになりそれまでとは格段に手間が減った。それと同時に僕も妻もようやく自分の時間を持つ余裕が出来た。

2018年からようやくサッカー観戦に復帰した。DAZNで毎試合中継されると言うのも大きかった。中継でも毎試合見ることでチームへの愛着が以前より高まって行くのを感じた。また野球と違って試合時間が決まっているサッカーは試合後の予定が立てやすく、妻にある程度の帰宅時間を事前に伝えやすいと言うのもあった。

そして関東とはいえ普段行かない場所に行くワクワク感。

スタグルで飲むビール。

試合前の高揚感。

味方のゴールが決まった瞬間の頭が真っ白になる感覚。全てを忘れて叫べる自由。会社員でも父親でもない自分が出せる数少ない場所だった。感覚を思い出した。以前より立場が増えた分なのか、よりスタジアムに自由を感じた。

2018年シーズンで大分トリニータが三度J1へ昇格した事もあって、僕は大分トリニータに過去最高にハマった。大分トリニータの試合を見始めてから15年で初めてレプリカユニフォームを買い、その後3年連続で購入してしまっている。気が付いたらTwitterのフォロワーさんはトリニータサポ―ターばかりになり、去年からは実際にスタジアムでフォロワーさんに挨拶をして試合後にお酒を飲む機会まで貰った。大分トリニータの東京観戦会にも参加したし「やどかり」と言うJリーグサポータが集まる飲み会にも入れて貰い、他サポの知り合いも出来た。6年ぶりに昭和電工ドームに行き、初めて名古屋や清水にまで足を延ばした。遠征費やグッズを買う為に家で酒を飲む回数や外食が減った。気が付いたらサッカー中心に生活が回っていた。妻も趣味のライブ参加を再開し、忙しくも充実した毎日になっていた。

そんな日々がまた今年も始まったと思った矢先、新型コロナウイルスの影響によりJリーグは中断に追い込まれた。当初3月中旬からと言われていた再開時期は日に日に延びていき、今この文章を書いている3月25日現在ではJ1の再開は5月9日以降となったがこれもどうなるか分かったものではない。

中断が発表されてから僕は喪失感と拭えない疲労感でいっぱいになっている。ヤケクソで適当に始めたエアルヴァン杯は思わぬ反響があり、一時的に気が紛れたが同時に「サッカーを馬鹿にしている」などの否定的な感想もタイムラインに流れてきて何だか疲れてしまった。直後から実際に体調も崩してしまい復調するまで20日間程度かかった。一週間ほど発熱が続き、新型コロナ疑惑で会社からも出社停止命令が出た。

ようやく復調して来た今、本当に自分が大分トリニータに依存しているのだと感じている。サッカーを優先した結果、プロ野球の生観戦は2軍を年1回見るくらいに減ってしまっている。アニメは消化できない事が続いた為見る本数自体が減り、今期に関しては一本も見ていない。ドラマも見るのは以前から見ていた物の続編のみ。漫画や本も購入する冊数が減った。アルコールは基本的に休日前日しか飲まなくなっている。飲み会も月に1度行くか行かないか。サイクリングも自転車の整備が全く出来ていなくてほとんど乗っていない。一番問題なのは興味自体が薄れて来ていることで、漫画やアニメを眺めていても面白そうと思うものがかなり減ってきている。

家族で過ごす日々はとても大切で、今はそういう時なのだと頭では理解している。実際に家族と過ごす週末はそれなりに楽しい。それでも仕事でも家族でもない第三の居場所と言うのは確実に必要で、僕にとってはそれが大分トリニータの試合観戦だった。

第三の居場所を失ったまま仕事は修羅場に突入しかけている。帆が破れたヨットで荒波に立ち向かうような、ハンドルが壊れた自動車で峠に挑むようなそんな心境だ。

先はまだ、見えないな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?