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卑怯な短歌

創作活動において、作品が人の目に触れるというのはとても大事だ。諸説あるが、ゴッホは生前に自身の絵が1枚しか売れなかったというのは有名な話だ。しかし彼は現代で世界中にファンを持つ。より多くの人の目に触れれば、評価のされ方も違ってくるぽよ。

そんなわけで、読み飛ばされることも多い僕の短歌も、サムネ詐欺をするユーチューバーのごとく「人の目につく」ことを真っ先に意識すればみんなぼちぼち見てくれるのではないか。そんな思いで詠んだ、情景を詠むより注目を受けることを優先した「卑怯な短歌」を紹介するぽん。

①おおおおおおおおおおおおおおおおお
御社が第一志望であります

上の句の「お」×17個に意味があんの?と聞かれれば、ある。冷静に考えて、「御社が第一志望」であるケースはあまりない。30社受けたら確実に29社は第二志望以下なわけだからだ。そこを就活生は、「御社が第一志望」とまで直球で言わなくとも、嘘を混ぜたり曖昧にしたり言葉巧みに志望度合いをはぐらかしていく。でもあらゆる会社に「御社が第一志望」だと伝えることの矛盾さ、馬鹿馬鹿しさを考えると、素直に口から出てこない。その気持ちを表したのが「お」×17個なのだ。あとは見た目のインパクト。

②この俺を2枚のマスクじゃ救えない
20000000000000000000000000000000000000000000000000000枚くらいください

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉が示すとおり、やり過ぎは足りないのと同レベルである。安倍さんがくれるマスク2枚は心許ないが、多過ぎても持て余すことこの上ないだろう。でも天文学的な量のマスクがあれば、人類だけでなく家畜や異星人にも不足なく一生マスクを供給できる。ちなみに、20000000000000000000000000000000000000000000000000000枚は「2恒河沙枚(にごうがしゃまい)」と読む。見た目のインパクト重視でわざと算用数字で書いた卑怯な歌だ。

③(可愛いね、LINE教えて。お隣の
可愛くない子も交換しとく?)

この歌が( )で覆われているのは、心の中のセリフだからである。このセリフはもう心の中で言ったことが今にも口から出ようとしてる。でも冷静に考えて、可愛い子と可愛くない子が並んでるからって面と向かってこんなこと言ってはいけない。思ってしまいはしたが、理性が発声を引き止めたからこその( )なのである。

④「運命の人デリバリー頼みます」
「第二種免許ないから無理です」

運命の相手がデリバリーでも頼めるようになったSFチックな世界線が上の句で詠まれているのと裏腹に、下の句では現実的な理由でデリバリーを断っている。二種免許なくても運命の人を持ってくることはできそうなものだが、この店はそうではないらしい。

⑤大半の人はこの句を読み飛ばす
割いた時間と労力返せ

目がいかずに読み飛ばされて初めてこの歌は成立する。だから読み飛ばしていいよ。


⑥「この部屋に決めてよかった」と言うのは
俺(21)とゴキブリ(不明)

下の句の読み方は「おれ・にじゅういちとごきぶり・ふめい」だ。「かっこ」も読んでしまったら収まらない。年齢もわからないルームメイト・ゴキブリとの奇妙な同棲生活が描かれているぴよ。


全く日の目を見ない僕の歌たちだが、ゴッホの例もあることだし、注目を浴びるのは死んでからのお楽しみにするぺぽ。


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