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荒木飛呂彦の漫画術

それはもう岸辺露伴が大好きで読んでしまった。

荒木飛呂彦という人はこんなに「理論的に漫画を描く人」なんだなあというのに驚いた。こんなに「分析」をして、「方法論を構築」して、結果を反省して、また方法論を再構築するということを愚直にやってきた方なのだなと。もっと天才肌な方かと思っていたというのが最初の感想だけれど、それは見当違いな感想だと思い立った。自分の方法論を確立してもいない人が少年ジャンプという日本で最も厳しい競争環境下で長期間に渡って勝ち続けられる訳がないのだ。「これまで独占してきたアイディアや方法論といった企業秘密が~」と書いてあるのを読んだ際にPeter Thielの successful businesses are based on secrets.を思い出した。企業でも個人でも変わらないな。

ヒット作を分析する「習慣」を守っているのが印象的だなあ。分析の視点自体をヒット作に恵まれない中で確立していっている点が非常に面白い。人気漫画の王道を研究して、理解を深めていくということをやっていたのだなあ。地図(=方法論)を確立してから、その後で、「走る」というのが王道。というより走ることに完全にコミットするのは方法論が確立してからなのだ。自分なりの道筋がない状態で走ることに完全にコミットしてもどこにも辿り着けない。

要は、「分析・マーケットリサーチ(編集者、名作漫画)→方法論の確立→試行錯誤→成功→方法論の再構築→さらなる成功」
という非常に真っ当な仕事の進め方をしている。
誰もが大天才と認めるであろう荒木飛呂彦をしてこうなのだ。
ただ「漫画を描く」という行為をするにあたって、分析・マーケットリサーチから開始しているのが特徴的で、描くこと自体もフレームワークに則って描いている。

漫画のテーマは売れるテーマではなく、自分の人生に深く関わっていることに設定するというのは、そのままキャリアのテーマに言い換えてもいいかもしれない。

「自分の方法論(=自分にしか有効でない方法論)をつくる」ということはもうすべての人達がやるべきことだよね。

「天才」が自分だけの方法論をつくってきた過程を披露してくれており大変楽しく読みました。

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