行動データ分析とデータ活用ビジネスの近況

最近震災関連の投稿が多かったので、たまに仕事関連のことをかいておきたい。僕はさまざまな知見をリミックスしてあたらしい価値を生み出すのが僕の仕事だと考えています。
具体的には、これまでやってきたデジタルマーケティングに(とくに行動ベーズドマーケティング)にナッジ理論や行動経済学、行動遺伝学、社会物理学などを加味していくことをいまはじめている。

最近は、デジマ界隈では各プラットフォームごとに最適化がすすみ、全体最適に矛盾がおきていないかに疑義がでてきている。そこに各学問の知見を加えて修正してく。またユーザー獲得最適化のため、情弱なユーザーばかりとるマーケ手法が流行っている。脳のドーパミンを刺激し、お得情報にみせるが、その商材は決して効果が期待されないのに、そう期待させるマーケ手法だ。これで得をするのは実際は企業と広告代理店と配信したプラットフォームだけなのに。そんなマーケティングにすこしでもナッジ理論を加えたいとするのが僕の役割だ。ただし少しでもユーザーのことを考えている企業にしかお手伝いをしたくない。

これまで僕がかかわってきたデータビジネスは、オンライン上のデータを行動パターン化することだ。過去楽天に所属していたので行動マイクロターゲティングもおこなってきたが、それは膨大なファーストパーティデータを所有している企業のみ有効だ。昨今サードパーティデータの取り扱いや改正個人情報保護法、GDPRなど環境整備によってますますマイクロターゲティングをおこなうことが難しくなっていくだろう。その傾向のなかでいかに効果的なマーケティングをおこなっていくのか。それは上記に依存または抵触しない高精度の行動パターン分析のマーケティングだと思う。ゆえに2019年からこの手法にとりかかってきた。実際僕が創業社長をした楽天スクリームという会社は楽天のデータとスクリームテクノロジーのデータをマージさせ楽天経済圏のマイクロアクションデータと楽天経済圏外の行動パターンから効果的なセグメントやターゲティングを行うビジネスモデルだ。いまは退職したが、この手法に個人的な知見を加えたコンサルをおこなっている。

僕らが行っている行動パターン分析から相関性を見出すことができるので、その相関性の高い人をターゲットにして見込み客としてユーザー化していくのだ。
世にいう相関性とは
・アイスクリームが売れると溺死が増える
・図書館がある地域は治安がいい、夜はスナックが10件ほどあると治安がよく、バーが増えると治安が悪化する(NASAの光量分析などから)
・ホームランランキングTOPの選手と三振の数は相関性がある
など
楽天時代や楽天スクリーム時代で見出したものは、
・哺乳瓶2つ以上購入する人は保険に入りやすい
・プールの栓を購入する人は高級車を購入しやすい
などだ

世の中のオンラインユーザーで実際ウォールドガーデンを利用している時間は1日の利用時間の4割なのに、企業が広告を使う費用の6割はウォールドガーデンとなっている。それはウェオールドガーデンの各企業はとてつもないユーザーデータを保有しているからだ。
しかし、これではいつか最適化がすすみ、ターゲットに限度が見え始める。そこで相関性が強いユーザーを見つけ出し、あらたな顧客にしていくことが大切なのです。つまり効果的にターゲット層の増加を図るのです。

これが効果がいいのはもちろんだが、これを使わないと競合と同じターゲットを取り合うことになるため競争がはげしくなりサチっていく。
常にあらたな潜在層しかも興味関心が高いであろう人に競合より先にアプロ―としてナーチャリングしていくことが大事だからだ。

まあ、私事の仕事周辺の紹介はこの辺にして
少し前に雑誌東洋経済のデータ錬金術に取り上げられたデータが違反ビジネスのメモを記載しておきたい。

ソフトバンク 
2週間先までの来店客数がAIでわかる【サキミル】
精度が90%前後だというから驚きだ。人流データと気象データを掛け合わせている。ソフトバンクは携帯電話事業で集めた数千万台の携帯位置情報を匿名統計化し、日本の総人口と同規模に拡大して推計。日本気象協会の気象データを加え、精密な予測を実現するアルゴリズムを開発した。

JR東日本
【駅カルテ】Suicaから吸い上げた首都圏600駅の利用状況を匿名統計化し、月ごとのリポートを販売。定期券情報から利用者客の属性も推測。どの駅からきて、どの駅へ行くかという流れも地図上に落とし込んでいる。商圏を一目で把握。

NTTデータ
【BizXaasMap 人流分析】建物や道路ごとに時間帯別の人数推移をみられる。道路に至っては、徒歩なのか車両での移動なのかまでわかる。
ベースとなるのはNTTドコモの携帯電話8500万台の分の位置データと120分の外部スマホアプリのGPSを購入して組み合わせている。

【トレンドエクスプローラー】X社と契約して日本語の全投稿データを取得。これを分析して流行の予測に役立てるサービス。
一定の人数がポストしたワードを自動で登録。それらの投稿状況をシステムが常時監視し、食や美容、など30カテゴリーにわけ、ポスト量が伸びた旬な話題を抽出。流行の兆しをいち早く可視化。話題の背景や、投稿者の属性も示す。さらに生成AIによる企画の提案もあり、トレンド分析結果と顧客の特性を掛け合わせ、新商品のコンセプト案を練り上げてくれる

三井住友カード
【Custella】自社の約1300万かいいんが買い物した個人情報と決裁データが結び付き、匿名統計化を経て解析。
ビザなど2社と共同開発した決裁端末ステラで入手した他社カードのデータも活用。こちらは属性までわからない。

クッキー規制下での広告ビジネス
大手企業のデータ元にアプローチし広告ビジネスを支援している

2023年ANAホールディングスの傘下ANAXがデジタル広告配信サービス
【ANA Moment Ads】を開始、約4000万のマイレージクラブ会員の属性や航空便の予約日時、行き先といったデータをいかしANAのウェブサイト、アプリ、SNSなどへ広告配信できる。特徴は従来のデジタル広告は過去の行動履歴に依拠していきたが、ANAXの広告サービスは航空便の予約情報といった確度の高い未来の行動予定を用いる点だ。
ANAXは22年3月サイバーエージェントと業務提携を開始。デジタル広告の配信基盤などの技術を提供。サイバーエージェントはサッポロどらっぶストアーやヤマダ電機、三菱UFJ銀行、みすほ銀行など協業社数は30にのぼる。
サイバーエージェントは事業投資も負担し、それをレベニューシェアから回収するスキームをとっているため当事者意識の高さがコンサルとの違いかもしれないと。

博報堂はドン・キホーテを展開するPPIHとリテールメディアの合弁会社
ペーハーメディアを設立。PPIHの700店舗の店舗網と約1300万ユーザーの
majicaアプリkらのデータ、博報堂の生活者データや広告販売網など持ち寄る
これらの動きからわかるように、事業会社側のデータを使いやすくする意味でも合併はトレンドになりうる。私自身も過去楽天とスクリームのデータ統合および活用の観点からJVをつくったのでこの点よくわかるし、そのむずかしさもよくわかる。

一方で電通は、グーグルやLINEといったプラットフォームとデータ連携し、生活者の個人情報を特定しない形でデータ分析するデータクルーンルームというソリューションを推進している。

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