「持ち家OR賃貸」で貧富の差が都市部で開き続ける構図
今日の日経新聞の経済教室に、とても良い記事が載っていました。
最近、5年振りぐらいに電子版でなく紙版をお願いするようになって、チラシとかも面白いし、一覧性も高まって日経新聞購読を楽しんでおります。(ごめんなさい、以下のリンクが有料購読していない人は見えないと思いますが)
タイトルの通り、住宅政策が都市における人々の不平等に影響をしている、という内容ですが、私が今までもやもやっと思っていたものを、ズバリ解説しれくれていました。世代間の所得移転、空き家問題などもカバーしたとても視野の広い記事だと思いましたので紹介しておきます。要点は、
豊かな家族は「蓄積家族」としてどんどん富んでいく一方で
貧しい家族は「賃貸家族」としてどんどん貧しくなっていく、
ことが都市で起きている。そして住宅政策がそれを助長しているというものです。大きなポイントは4つです。
① 金融資産よりも不動産資産の方が、富の集中が上位層に顕著である事実(家計調査より)
② 住宅資産は、次世代に承継される世襲資産となっている(相続税で相当に有利であり、親から子への大規模な援助も認められているから)。
③ 戦後の住宅取得を推奨する政策(住宅ローン減税含む)は、そもそも住宅を取得できる中間以上の所得層のみに恩恵があり、それが格差を広げている。(余裕がある家はさらにタワマンなどの優良な住宅を資産目録に加えていける)。
④ 低所得者は、良質とは言えない住宅を買い資産価値が減っていくか(食いつぶし家族)、高コスト・低質な賃貸セクターに居続けて(日本は公営住宅が極めて少なく、公的賃貸補助なども弱い)、公的な恩恵が受けれず、資産形成ができない。地方から来た人の親の地元にある物件は、二足三文であり、実質的に資産として継承できない(むしろ空き家の管理でお金がかかる)。
うーん。その通りだと思いました。地方から東京に出てきた私の実感としてもドンピシャでした。
30年近く前ですが、地方から東京に出てきた時、「東京では持ち家の家庭は、一般の勤め人の親でも、1億とかの資産を普通に持っている」という事実に大変驚きました。もちろん、先祖なり両親なりが一所懸命働いて自分のものにした訳ですが、移民をしてきた地方出身の人からすると、なかなか埋め難い、非常に大きな貧富の格差があるんだと気づいたのです(そしてこれが結婚したりすると、その組み合わせにより、さらに広がっていくと思いました)。ちょっと言い過ぎかもしれませんが「東京に自分の家を手に入れないと、僕の子孫は一生貧しいままだ」と感じたことを覚えています。
同じようなことは外国で暮らしていた時も感じました。在住者と移民第一世代での大きな違いに住宅ローンへのアクセス、そして両親がいないので子育ての負担も大きいと感じました。東京よりも断然に住宅が高いNYやロンドンに住んだ時も、「この場所で自分の家を一つ持って賃貸できれば、世界どこ行ってもお金には困らないだろうな」と思ったものです。比べる相手は日本人ではありませんが、住宅資産を持つ家庭とそうでない家庭の貧富の差を強く意識したと思います。
持ち家か賃貸かは、人々や家族のライフスタイル次第なので、それ自体に善し悪しはありません。
ただ、住宅を通じた資産形成というツールをうまく使ったか否かで、家族の保有資産は大きく変わること、それが次世代まで影響をしていくのは紛れもない事実です(特に都会ですね。それぐらい都会は住宅費の負担が重いということ)。この格差は日本の東京ではまだ可愛いもので、アジアの主要都市では更に顕著です。
世界どこでも、優良な賃貸不動産は資産、不良な持ち家は負債です。同じく、不良な賃貸不動産は負債で、優良な持ち家は資産です。ただ、この目線は、持ち家を選択できたり、賃貸不動産を購入できる中所得以上の人達の話なんですよね。
ローンが借りられない、親から援助を受けられないなど、借家暮らししか選択できない都会での中所得層以下の人は、将来支払う家賃という見えない負債を負うという人生しか残されていません(住宅ローンは借りていないにも関わらず)。
そして、その負債は都会では大きな額となり、好き嫌いに関わらず一生資本家(大家)の養分になり続け、格差も世代間でも固定されていくのです。
記事で色々と考えさせられる事はありましたが、片親家庭、高齢者、外国人など社会的弱者の方達への住宅社会保障は、強化されていかなくてはならない分野だと改めて理解できました。資産家や高所得者への子供世代への住宅購入の補助や、高所得者への住宅ローン控除などにも見直しがいるのかもしれません。単なる格差是正を唱える政策は良くないと思いますが、格差固定の問題の解決は長期的に経済の活力になると思います。
いずれにしても、良記事でした。執筆者の方と日経新聞さんの良記事に感謝です!
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