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寄付が社会的に必要な理由を整理する

続き記事です。前回の記事はこちら

さて、前回はテーマである「遺贈寄付」についての大枠を書きましたが、そもそも「寄付がどうして社会的に必要なのか」を考えてみましょう。短くまとめるとこうなります。

「民間が活動する市場の原理の限界と、政府が活動する公助の限界のため、社会課題の解決にはソーシャルビジネスが必要であり、その活動の原資が寄付であるから」

長いっすかね。すいません。このお題を考えていくには、社会課題とはなんなのか、そして社会課題を埋めるのは誰なのか?、が大切と思います。

社会課題とは何なのか。例えば、人口減少や高齢化、社会のIT化、災害対策、ウェルビーイング、不眠症、地方や都市の格差、片親家庭の負担などが、思いつきます。そして社会課題の難しさは、社会課題が時代とともにかなり頻繁に変わっていくことでしょう。

専業主婦家庭と共働き家庭の比率は、過去40年で完全に逆転しています。その変化の中で、待機児童という問題が2010年代に社会的に大問題となりました。一方で、その問題を受けて社会的認知が上がり、政府や自治体が動き出します。結果、保育園数などの予算が激増、今では待機児童問題は2020年前後に劇的に改善しました。

法律や制度が常に後追いになる、政府が社会課題の解決に動き出すのには時間がかかるのは仕方ないことです。そのような公助の限界を受け入れると、大切なこととは、我々の誰が今ある社会課題に気付くこと、そして声を上げること、そして民間の誰かがその解決に取り組んでいくこと、になってきます。

次に、社会課題を埋めるのは誰なのか?以下、有名なペストフの三角形です。

いろんな情報が入っていますが、非常によく現代社会をとらえていると思います。

上で書いたように政府が出来る事は常に後追いですし、営利目的の企業は儲からない社会課題に手を出しませんので、社会の真ん中部分には常に大きな穴が空いています。この真ん中の穴を埋める役割として、民間のボランティア活動、または民間の寄付を受けて組織的活動を行うNPOのような公益法人が大切になります。

時代背景からも整理しましょう。過去100年で、19世紀から20世紀には国民国家が肥大して(三角形の上部)、20世紀には企業が肥大しました(右下)。結果、この図でいうと右側寄りの「公式」の部分の力が強くなる時代が続きました。反対に、左下の「非公式」の世界がやせ細っていく、その中でも力の弱い家族や世帯が置き去りにされるという問題が、全世界で起こっているのが現在の状況と整理できます。

以下、寄付という行為がなぜ我々の社会に大切なのかの整理になります。

・社会課題は移り変わる。
・営利団体が取り組まないものがある(市場原理の限界)
・国が社会課題の手当てをするには時間がかかる(公助の限界)
・民間の誰かが課題に気付いて、声を上げて、非営利に活動しなければならない。
・その活動を組織的にやるための原資として、寄付が大切

つまり社会のバグやタイムラグを埋めるためには寄付が必要で、現代では世帯や家族についての社会課題が多く見られれている、と整理できます。

ボランティアは自分がやる行為、寄付はその活動を誰かに託す行為とも整理できるでしょう。それらを通じて社会の問題ができるだけ早く解決していく、そのような社会を望みたいものです。

寄付がある社会なのか、無い社会なのか。寄付が活発に行われる社会なのか、あまり活発でない社会なのか。人々の豊かさと幸せがゴールと考えると、寄付の大切さがわかってきます。

<どうやって遺贈寄付をするのか?>

さて、話を前回の記事の遺贈寄付に戻します。こんな素晴らしい遺贈寄付ですので、話を聞いて理解をすると「私もやってみたい」と思う方はとても多いようです。日本承継寄付協会の調べでは、約半数の方は、「やりたい」という意向を示されているようです。

ただ、遺贈寄付をやりたいと思った次のハードルは、誰に相談していいか分からない、寄付の仕方が分からないという問題です。自分から積極的に寄付をするという人も、日本ではあまり多くないですので、そもそもハードルが高い。

どうやって遺贈寄付をするのか?大きく分けて4つの方法があります!

①    遺言書によって寄付をする
②    相続した人が寄付をする(相続税を払って)
③    信託を設定して、そこから寄付をする
④    生命保険の受取人先を決めて寄付をする

ちょっとややこしい。。。まあでも①を基本に、何をやりたいかという意思を確定させて、あとは方法論として②~④まで考えていけば充分かなと思います。

また、法律的には特定遺贈と包括遺贈の二つの遺贈があります。特定遺贈は、特定の財産を特定して寄付をすること。包括遺贈は、指定せずに全体の何%などと指定する事。前者の方が行いやすく、後者だと行いにくい。

なお、不動産の場合は、そのまま寄付というのは難しく、売却して現金化してからが基本です。東京のマンションなどはそのまま受け入れているNPOさんもあるようですが、この辺りは今後の課題と思います。

<どうやって寄付先を選ぶのか?>

もう既に寄付先の当たりがある方は良いのですが、そうでない方は日本承継寄付協会が出している「えんギフト」という情報誌がとても頼りになります。


貧困支援、教育、国際協力、医療、環境保全、動物保護、災害支援、こどもまで、様々なプログラムが一覧できます。見ているだけで、これが世の中の社会課題なのだと理解が進みますね。アートオークションにいくと、これが今現在、人気があるアーティストの作品なんだ、と理解できるような感じです。

次回に続く

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