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中原駿特別レポート  2022年10月17日

苦悩する英国年金基金


― 機関投資家クライシスが世界の債券相場を混乱させた日 ―


■追証地獄
英国の機関投資家が危機に陥った。マージンコールという名の追加証拠金―いわゆる追証(おいしょう)地獄である。そして、十分な追証が払えない基金は米国債など他の外国債の売却。これにより、世界の債券市場が大混乱に陥った。そう、問題は英国一国の問題ではなくなっていたのだ。むしろ、10月14日までの世界の債券市場大混乱と暴落は、この英国機関投資家の苦境によって引き起こされた―といっても過言ではなかっただろう。

しかし、本来安定的運用を旨とする年金運用で「証拠金」ましてや「追証」という言葉の響きに違和感を持つ相場参加者は少なくないのではないか。しかし、フィンテック―いわば、新しい投資手法を使った「LDI」という方法を採用した英国の基金は、実はこの手法でレバレッジ―いわゆるポジションを巨大化させ、その分負債も大きく膨らませていたのである。
 
■LDIとは
LDIは「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(債務連動型運用)」の略称である。この手法は「確定年金の支払いのキャッシュフロー」と「運用しているファンドのキャッシュフロー」を一致させるという戦略で、リーマンショック以降急速に広まった。

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