マガジンのカバー画像

1人読み用

16
朗読用、1人読み用の短編、詩、セリフなど。
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

雪花~せっか

冬はゆったり腰をかけ 寒さと眩(まばゆ)い白さで ぼくを包む 高い峰々は 雪と氷に閉ざされて 色のない世界に染まる うず高く積もった雪が ぼくの前に 立ちはだかる かきわけても かきわけても さらさらと崩れる粉雪は 息が上がるほど 肺にまで沁みて ぼくの心も凍らせていく 踏み出せば 沈み込む雪の柔らかさに そのまま倒れ込みたくなる キンと冷えた空気 枝についた樹氷は 長い尾を伸ばし 高く澄みきった空に踊る 白銀と氷の世界 熱くなった体の芯と 痛みを通り越して 感

拝啓、愛し子の君へ

拝啓、愛し子の君へ 寒気のきびしい日が続いていますが、お変わりありませんか。こちらでは昨夜から雪が降り続け、一面の銀世界に変わりました。 なーんてね。 ふふっ、堅苦しい挨拶は苦手なんだ。 雪が降ると思い出すよ。 天気予報で雪の予報が出ると君はいつもソワソワして、雪が積もったら何をしたいか、いっぱい話してくれた。 朝、雪が積もっているとお母さんの手を引っ張って大はしゃぎしていたね。顔も耳も手も真っ赤にして遊んでいた。わたしも君の投げた雪玉で真っ白にされたのを覚えているよ