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タイ人のお客様をおもてなしする際のヒント【旅館での食事編】


つい先日、NHKのニュース番組の中で、コロナ禍の現在、タイ・バンコク市内にある「旅館」が富裕層を中心としたタイ人から注目を浴びているという報道がありました。経営者の女性はタイ人、従業員もすべてタイ人。ただし、客室の調度品や提供する料理の器などはすべて日本から調達したもので、外観やサービスも含め、雰囲気はまさに日本の旅館そのもの。日本全国各地を旅し、その先々で受けたおもてなしに感銘を受けた経営者の女性が「日本風ではなく日本そのものにしたい。」との気持ちで始められたこの旅館は連日盛況で、数か月先まで予約でいっぱいとのこと。インタビューを受けたタイ人のゲストの方が「いつも行っていた日本に旅行できなくなったので、ここに来ました。」とコメントする姿に、タイ人のお客様が再び日本を楽しむことができる日々はそう遠くはないのではないかと想像させました。

宿泊施設、とくに旅館はお客様とサービスする側の距離が近く、コミュニケーションを必要とする場面が多いので、インバウンドのお客様にとっては日本のおもてなしを感じられる場所である反面、文化の違いに戸惑われることも多く、また、サービスを提供する側にとっては言葉や習慣が違うお客様を相手にお悩みが生じやすいのも事実ではないでしょうか。

訪日タイ人のお客様に同行するガイドの立場では、その双方の声を耳にする機会が多くあります。

以前、ある旅館を訪れた際に朝食を提供するスタッフの方からこんな相談を受けました。

「白いご飯とお粥、どちらをお召し上がりになりますか?」
それをタイ人のお客様にどう聞いたらよいか。英語でもなかなか通じづらく困っていると。

旅館での朝食は「白いご飯か、お粥か」どちらか選択できる、もしくは両方頂けるところがありますね。タイ人の中にもお粥が好きな方は多いです。そこで、簡単なタイ語(白いご飯は「カーオ・スワイ」、お粥は「カーオ・トム」と言います)と、発音のポイントも合わせてお伝えしたところ、次に同じ旅館を訪れた際に、そのスタッフの方から「通じるようになった!」との嬉しい声をいただきました。また、それをきっかけにお客様からタイ語を教えてもらえたり会話が生まれるようになった、とのことでした。

一方、旅館での夕食に関して、タイ人の旅行者からは

「白いご飯とお味噌汁が最後に出てきて食べられなかった。」

という声が多く聞かれます。
タイ語で「おかず」を意味する「ガップ・カーオ(直訳すると「ご飯のお供」)という言葉が示すように、タイ人の多くはお刺身や焼き物などを単独ではなく、白いご飯のお供に食べたい傾向があります。そのため、ガイドとして同行する際には、お客様に相談した上で旅館に事前に連絡を入れ、提供するタイミングの調整をお願いすることがあります。もちろん、土鍋で炊き上げる炊き込みご飯であったりして、作業的に難しくそれが叶わない場合もありますが、タイ人の性質を把握しておくことで、食事を提供する側は「せっかく白いご飯を出したのに食べていただけなかった。」というお悩みと、タイ人のお客様からは「白いご飯は先に出してほしかった。」という不満の解消につながります。

こんな風に、ほんの些細なことでも、現場でのコミュニケーションがスムーズになったり、タイ人のお客様の満足度が上がるヒントがあります。もちろん、ガイドの私自身、まだまだ気づいていない現場でのお悩みはたくさんあると思います。どうかそんなお悩みををお寄せ下さい。そして、アフターコロナに向けて一緒に対応を考えていければうれしいです。


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