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「ろくな大人になりません」と言われたあの日

ここ数日、風が強い。
今日など、もうまともに歩けないぐらいの強風。
きれいに耕されて、まだ何も植えられていない畑の砂埃がすごいことになっていて、うわもう勘弁!!と心の中で叫ぶ。

実家の前の土地は15年前ぐらいまでは空いていて、農家さんが固定資産税節約のために、形ばかりの農作業をしていた。草でも何でも何かしら生えている時はいいのだけど、季節の変わり目にきれいに手入れされた時などに強風が吹くと、砂埃が舞って舞って、とても窓を開けていられない。昼間から雨戸を閉めっぱなしにして過ごしていた。それでも砂が大量に部屋に上がって、拭き掃除をするのが大変だった。
その後、空き地は住宅地になり、家の真ん前にも家が建った。全室南に面した日当たり最高の我が家だったのに、冬は庭にほとんど日が入らない。それはそれはとても残念なのだが、風が吹くたびに窓を閉め切る面倒からは解放された。
あの砂埃を見てしまうと、今の方がいいなと思ってしまう。部屋には十分日光が入るしね。

「強風」で思い出したのが、娘たちがまだ幼稚園に通っていた時の話。
当時、海のそばの社宅に住んでいて、二人が通う幼稚園までは延々と続く神戸の坂を上らねばならなかった。
確かタモリの番組にも出たことのある、神戸の坂の中でも一、二を争う急坂だ。
ある日のこと、玄関を出て外に立った途端、ビューーーーーっという猛烈な風。
小さい二人は吹き飛ばされそう。
途端に泣き出した二人。
「怖いー怖いー」
「おうち帰るー」
二人そろってギャーギャー。
大人の私でも危険を感じるほどの強風だった。
幼稚園なんて義務教育でもないし、そんな無理をしてまで行かせることはない。
「休ませよう」と決めて、園に電話。
理由を聞かれたので、ばか正直に、「風が強くて危ないので。二人とも怖がっているし。」と言うと、「風が強いぐらいで休むようじゃ、ろくな大人になりません!」
ピシャッと言われた。

あなた、人様の子供に向かって何をいきなり。
知ったこっちゃないわ。
あなたに責任負わせたりしないわ。
好きにさせてよ!

・・とは言いませんでしたが、何を大袈裟な・・!

「とにかく、二人が嫌がるので休ませます」
ガチャン。

「ろくな大人にならない」と言われた二人ですが、あれから二十数年、社会の荒波にも負けず、逞しく生きておりますよ。
恐らく、その逞しさの一環に、母である私への信頼があるのではと密かに思っています。


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