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【デザイン、ブランディングの話】ベネフィットの導き方

コンセプトにおける、スペックとベネフィットについて書いた前回のつづきです。スペックとベネフィットの関係性を理解した上で、じゃあどうやってベネフィットは導き出せばいいのか、という話。


スペックからベネフィットを導き出す

前回の話は、スペックをもとにベネフィットが生まれるということで終わりました。ではどうやってスペックからベネフィットを導き出すのか。パソコンを例に考えてみましょう。

「高速処理のパソコン」

こんなスペックのパソコンがあったとしましょう。正直こんなパソコンは巷に溢れかえっています。ここからどんなベネフィットが見えてくるでしょう。

まずは、高速処理のパソコンを使っているとどんな「いいこと」があるのでしょうか。製品を届けたいターゲットが予め決まっているようであれば、ここでそのターゲットにとっての「いいこと」を考えればいいですし、まだターゲットを設定していないのであれば、一般的にどんないいことがあるのか、を考えればいいでしょう。

パソコンが高速処理できると、
・仕事が早く終わる
・ストレスなく仕事できる

こんないいことが見えてきます。これらはスペックから導き出されたベネフットです。仕事を早く終えたい人はこういうパソコンを買えばいいわけです。さらに、これらを突っ込んでブレイクダウンしていくとさらに別のベネフィットが見えてきます。例えば、「仕事が早く終わる」をさらに考えてみましょう

仕事が早く終わると
・一杯飲んで帰れる
・家族と夕飯を食べられる
・子どもと一緒にお風呂に入れる
・趣味の時間を持てる

などなど、もっとたくさん出てきそうです。これらも「高速処理」というスペックから紐解かれたベネフィットですね。さらに「子どもと一緒にお風呂に入れる」もっとブレイクダウンしましょう。ここではちょっと分解のときに添える言葉を変えています。

子どもと一緒にお風呂に入れる”人が増えると”
・女性の家事負担が減り、女性の社会進出が進む
・家庭内のコミュニケーションが豊かになり虐待やDVが解消される

など、こんなベネフィットが見えてきます。ここでは「○○な人が増えると」という言葉で分解を試みています。これについては後ほど説明します。

ひとつの「高速処理」というスペックから、たくさんのベネフィットを導くことができました。このようにスペックをブレイクダウンして考えていけば、その先にあるはずの見落とされがちなベネフィットを見つけることができるのです。

ベネフィットの深さ

スペックを起点にベネフィットをブレイクダウンする形でベネフィットを見つけてみました。こうして数段階に渡って考えていくと各段階でベネフィットの性質が違うことに気づくことができます。私はベネフィットを3つに分類してみました。

問題解決のベネフィット
先程の例では第1段階のブレイクダウンで

パソコンが高速処理できると、
・仕事が早く終わる
・ストレスなく仕事できる

といったベネフィットが見つけられました。これらのベネフィットはスペックから直接導いたベネフィットで、スペックが与える効果効能を色濃く反映したベネフィットです。この段階では、生活者が抱えている問題を解決するようなベネフィットになります。

ライフスタイルのベネフィット
問題解決のベネフィットをもう1段階ブレイクダウンするとこんなものが出てきました。

仕事が早く終わると
・一杯飲んで帰れる
・家族と夕飯を食べられる
・子どもと一緒にお風呂に入れる
・趣味の時間を持てる

これらのベネフィットはなにかの問題を解決したというよりは、ライフスタイルに変化が起きたといえます。ひとつの問題が解決して、それにより暮らしや考え方に変化がもたらされています。

社会変化のベネフィット
さらにもう1段階踏み込むとまた違ったベネフィットが見えてきます。私はこの段階では「こういう人が増えると」という切り口で考えています。

子どもと一緒にお風呂に入れる”人が増えると”
・女性の家事負担が減り、女性の社会進出が進む
・家庭内のコミュニケーションが豊かになり虐待やDVが解消される

もとのスペックだけを見ていたら、到底たどり着かないような大義あるベネフィットにたどり着きました。

このように、ベネフィットにも深さがあって、商品・サービスによって適した深さが異なります。「クリップを売って、世界の貧困問題を解決します」というコンセプトがあってもいいかとは思いますが、クリップには少し荷が重いような気もします。事業者の思いや製品の性質を踏まえて深さは設定されるべきですね。

みなさんも自分の商品サービスが、どんなベネフィットをもたらすことができるかを考えてみると、ステキなコンセプトが生まれてきますよ。


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