司馬史観についての考え

国民作家として、数々の歴史小説の名作を世に出した作家の司馬遼太郎は大正一二年、大阪府に生まれました。幕末からペリー来航、明治新政府の蠢動、西欧列強に開国を脅され迫られ、必死に殖産興業、富国強兵を進めて、国際社会に伍していく新生国家・日本を動かした俊英たちの活躍を描いた作品は国民各層から強い支持を得ました。広汎な範囲を取材して得た情報から描かれた時代背景、人物像を見事な筆致で描きました。
 
しかし、疑問もあります。明治維新の描き方です。
明治新政府を担った、初代首相の伊藤博文をはじめとする、長州藩の5人の若者(長州ファイブ)があの時代に英国に留学できた、巨額の費用を誰が拠出したのか?長州藩ですか?留学費用は億単位だったそうです。「明治維新は薩長、土佐の愛国心のある血気盛んな若者が万難を排して断行した結果」だとする、司馬作品にも見られる、今の日本の歴史教育が「美談」で脚色されているのに違和感を覚えます。
 
歴史を見る時に重要で、意識すべきはFollow the money=カネの流れを追え!という鉄則です。明治維新の時に貧乏だった各藩の若者のスポンサーだったのは……

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