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【投機の流儀 セレクション】「小池立つ」の羽音に怯える現政権

標題の文言は富士川の合戦で水鳥の羽音に驚いて遁走したという「平家物語」の話しからとっている。今、菅首相と与党は「小池立つ」の羽音に怯えている。攪乱要因になるからだ。小池女史(以下、小池と言う)が国政に参加し総裁になるチャンスは今回をおいて二度とない。
筋書きはこうだ。総裁選の前に菅が衆院解散・総選挙に踏み切って小池が都知事を辞める。そして無所属で東京9区から立候補する(東京9区は前経産大臣が略式起訴されて公民権停止にされているから出馬できない、空き地になっている)、ここに小池が目を付けるのは当然だ)。
そして小池が国政に参加することは「200%ない」と言っていたが、そんなことは露知らぬ顔で国会議員になる。すかさず二階の後押しで自民党に入党する、そして二階派候補として自民党総裁選に殴り込みをかける、という筋書きであろう。筆者でさえ読めるのだから小池はもちろん考えている。その証拠に退院したばかりの小池がこれ見よがしに自民党本部に二階氏を訪ねた。コロナ対策を話し合うという名目だったがその会談の中身に意味はない。問題は40分間という会談の長さだけに意味があった。二階と対立する3A(安倍・麻生・甘利)に「わたしは40分間二階さんと会ってきたわよ」と恫喝しているのだ。一方、二階は「小池カード」を握り小池は彼の力をバックに自民党総裁にのし上がる、持ちつ持たれつの関係となる。
男にすり寄ることの巧みさとその男を選択する「男を見る目」においては小池は天才的だ。筆者が何度も言うように、彼女がすり寄った男は全部が総理大臣になるかキングメーカーになるかのどちらかであった。彼女がすり寄った男は総理大臣になったし、あるいは小沢一郎・二階俊博のキングメーカーだ。
今、彼女ほど権力者の男にすり寄ることに巧みな者は誰もいない。小池は今風向きを見ている。

いつ終わるか判らないコロナ禍で人心は荒れ、政権与党に強い逆風が吹いている。菅が首相のままで総選挙に臨めば、与党が過半数を割ってしまう可能性は充分にある。そうなると小池の出番だ。無所属ではなく「都民ファーストの小池百合子」として総選挙に出馬し、選挙後に連立政権を組むというシナリオだ。小池の半生をスキャンダラスに描いた「女帝 小池百合子」(文藝春秋社)がベストセラーになった直後の都知事選で(前回よりは少し減ったが)360万票もとった。以前に、細川にすり寄った小池は、細川が議席数で優る社会党などを押しのけて首相になった成功体験が小池にはある。
9世紀前、源平の戦いの富士川の合戦で水鳥の羽音に驚いて遁走した平家軍のように、今、菅と自民党は小池の羽音に怯えている。小池と因縁浅からぬ小沢一郎も未だ健在だ。策士は健在でもあるし、策士を必要としない自らが策謀の天才である小池は69歳でも健在だ。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況

(1)先週末と五輪明け市況から観た、当面の市況
(2)機関投資家は弱気姿勢、「今月末2万7,915円」
(3)活況増場ではないが相対的に出遅れ感が強かった業種が物色対象となって相場を支えた面がある
(4)年初来初めて、「現物取引高・対・先物取引高」の比率が「1.0」となった
(5)菅内閣の支持率低下、危機ラインと言われる20%台に入ったが、新政権によってコロナ禍を奇貨として前に進む可能性もまた多いと思いたい
(6)経済実態と株価の「コロナ前」のレベル
(7)米英でコロナ感染拡大の恐れ→景気の先行きを警戒。それでもNYダウは3万5000ドルを終わり値で初めて突破=「需給に勝る材料はない」
(8)日経平均はソフトバンク1社によって大きく変わる
(9)海外勢が2週間ぶりに日本国債を買い越した
(10)日本国債が国内外から買われている
(11)「小池立つ」の羽音に怯える現政権
(12)少なからぬ読者の反感を買うかもしれないが言わせてもらうと・・・
(13)関連事項として、東京メトロを上場させて完全民営化を図る案とそれを揺さぶる小池劇場
第2部 中長期の見方
(1)五輪後の菅政権は、五輪開催を強行し閉幕後2~3か月内での解散総選挙に挑むが、コロナ次第で退陣論も噴出する
(2)米に70年型インフレの悪夢が再現?暗黒のニクソン政権時代との共通点
(3)景気が本格的に回復すれば超低金利の正当性を失うからFRBは金利を上げる、したがって株価は下がる、即ち壮年期相場の終焉である
(4)「コロナ相場の青春期相場」、あるいは「その壮年期相場」も、一旦終わったと見る方が無難であろう
(5)日本国の固有の意思決定のDNA
(6)米金融政策の方向転換
(7)過剰流動性相場の終焉は遠いとしても相場は早くもそれを嗅ぎつける
(8)二つの「ニクソン・ショック」
(9)戦い済まず日は暮れず
(10)東京五輪の強行開催は「国民生命と健康を守る」から言えば大変な失政だったということになる恐れがある


【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
ツイッター https://twitter.com/toukinoryugi

【著書】
『賢者の投資、愚者の投資』
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『投資で勝ち続ける賢者の習慣』
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『投機学入門 不滅の相場常勝哲学』(電子書籍)
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『会社員から大学教授に転身する方法』(電子書籍)
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その他、著書多数。以下よりご覧ください。
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